映画評「夏目アラタの結婚」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・堤幸彦
ネタバレあり

乃木坂太郎なる漫画家のコミックを堤幸彦が映画化したミステリー・サスペンスである。

かつてアルフレッド・ヒッチコックが好んで使った空撮から始まるのを見て、堤幸彦みたいだと思っていたらご本人様でした。監督もキャストも知らずタイトルだけで見たわけだが、この辺は映画を長く観てきただけのことがあろうか。
 昔、親戚の家へ行った時にTVで洋画がかかっていたので、“イタリア映画でしょう”と言ったところ、新聞で調べてくれたら正にその通りで、“よく解るねえ”と言われた。1970年代までのイタリア映画は変なズームが多いなど特徴的だから大体解ります。
 石川県に住む友人夫婦のアパートに行った時もたまたま出てきた映画を数秒見て “エリック・ロメールではないか?” と言ったら大正解で、夫婦が住むアパートの名前●●を取って“●●の奇跡”と呼ばれることになった。

閑話休題。

連続バラバラ殺人の犯人と思われる妙齢女性・真珠(黒島結菜)が逮捕される。被害者の一人である中年男性の頭部を探してほしいと、児童相談所の青年夏目アラタ(柳楽優弥)が息子の少年に頼まれ、真珠に面会に行く。勢いで結婚することになり、彼と被告の弁護士・宮前(中川大志)が、事実上の探偵として事件と彼女自身の謎を解決していくことになる。

良くも悪くも、前半は事件の残忍性やヒロインのエキセントリックぶりが韓国映画のような狂気の混じったどす黒いハードな印象を醸成するが、ヒロイン真珠の過去の真実に近付くに連れて人間ドラマに変わっていく。
 前半の韓国映画的なムードを必ずしも好ましいと思うわけではないものの、後半は肩透かしと感じるくらい清涼感が勝つ映画になってしまう。もう少し清濁併せた程度に収めたほうが後を引く感じになったと思う。

彼女の人生は「市子」のヒロインに重なるが、最後までどす黒い「市子」のほうが映画としてパワーがあって手応えがある。

何度も言っているように、猟奇=残忍ではない。looking for something bizarre の意味だ。少なくとも二つ以上の連続性のないことには猟奇的事件などとは言えない。最近連続して耳にした中で気になった言葉の過ちは、【いさぎよい】に対する【いさぎいい】だ。漢字で書くと【潔い】だからこの言葉の後半の “よい” を勝手に変えることはできないが、この “よい” が “良い” と混同されているのですな。この言葉の成立には不明のところが多いものの、古代に “いさ” と “清い” が合体してできた言葉と言われている。いずれにしても、 “良い” は全く関係ない。

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