映画評「肉弾鬼中隊」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1934年アメリカ映画 監督ジョン・フォード
ネタバレあり

プライムビデオに、戦前ジョン・フォードが作り、僕が観ていない無名作品が幾つかあり、その一つである。その中では比較的有名な作品で、第一次大戦を背景にした極限状況もの。

メソポタミア(まだイラクは存在せず)の砂漠を偵察中に部隊長が敵(オスマントルコのアラブ兵)の銃弾に倒れる。代わりに指揮を執ることになったのが軍曹ヴィクター・マクラグレンで、死んだ隊長が無能だったため自分たちが何の為にどこにいるかも解らず苦戦する。
 オアシスを発見してイスラム寺院の廃墟でやりすごすが、馬を奪われるなどして、どこからともなく銃撃してくる敵勢により一人一人倒れ、発狂して自ら作った木の十字架を持って敵に向かう者(ボリス・カーロフ)も現われる。
 軍曹が敵の最後の者を漸く倒した直後に、味方の大隊が到着する。

幕切れで「蛍の光」がかかるのがいかにもフォードの趣味で、フォード作品では現在の日本人でもよく知る楽曲が聞かれるケースが多い。

一般の戦争映画と違い、敵が全く見えず、兵士も大体において一人一人倒れていく、サスペンス寄りの作品となっている。
 敵の怖さそのものより、中隊の連中が見えない敵を意識して自ら恐怖に絡められる様子を描くことに主眼を置いているらしく、そういう意味でのサスペンスである。
 連中は暫くのんびりとしている為、観客がハラハラドキドキという感じにはならず、最終的には生き残るマクラグレンの逞しさが浮かび上がるような仕立てだから、強烈なサスペンスを期待すると当てが外れるかもしれない。

必見とまでは言えないものの、70分余というコンパクトな作りなので嵌れば面白く見られるはずだ。

邦題が凄い。

この記事へのコメント

2025年05月13日 19:30
>70分余というコンパクトな作り

昔の映画のいいところですよね。
アマプラでは古い映画が見られるので、しばらくは白黒映画を追ってみようかと考えているところです。
淀川先生がおはなしされていた作品が見つかったりしますし。
オカピー
2025年05月13日 23:14
nesskoさん、こんにちは。

>アマプラでは古い映画が見られるので、しばらくは白黒映画を追ってみようかと考えているところです。

どんどんやるべきですね。

昔の映画は短いので僕のように毎日書く人には有難い一方、数年前に半強制的に会員になって以来、めぼしいものは大体観てしまっていまして。
つまらない近作を観るくらいなら、未公開の作品から秀作を見つけ出すという冒険も良いかも。