映画評「ポール・マッカートニー&ウィングス ワン・ハンド・クラッピング」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年/1974年イギリス映画 監督デーヴィッド・リッチフィールド
ネタバレあり
銀行の営業人種を捉まえて音楽の話をすることが多く、一種のカス・ハラをしていると反省しきりの今日この頃。
3年くらい前に音楽の話をした時、20代の若い女性営業人らしく“ジャニーズは聴かないんですか?”と問われたことがある。当然聴くわけがないが、その理由はと言えば、音楽は音だけで聴くものと思っているからである。映像なしに集団のダンスを眼目としているかのようなグループ・アイドルを聞いても面白くなかろう。
僕は、アイドルは歌が下手といった観念的な考えを持たない代わりに歌詞に余り興味がないので、自分で曲を作るとか、楽器を弾くとかしない人は原則的に聴く対象にしていないというだけ。ジャズ歌手やソウル歌手のように、声や歌唱が文字通り楽器レベルにまで達している人は別だが。
何でこんな話から始めたかと言えば、本作のようにライヴを収めた音楽ドキュメンタリーの評価は、事実上音楽の評価となってしまうわけで、画面があってもなくても殆ど差がないからである。
が、本作は少し映画(元来1974年にTV放送用に作られたものの結局放映されたなかったコンテンツ=スタジオ・ライヴ=で、昨年劇場でも公開されソフトも発売された)的なお楽しみはある。
まず現在のポール・マッカートニーが昔を振り返る入れ子構造になってい、さらにスタジオ・ライブにポールやリンダ・マッカートニー、最初から最後までウィングズのメンバーとしてポールを支え続けたデニー・レインのコメントがそのライヴの場面に加えられてもいる多重性があるので、かつて映画館まで観に行った「ロックショウ」(1980年)のような、それこそ映画としてコメントのしようのない単純な収録ものとは違う。
その代わり演奏が完全には聞けないナンバーが少なくなく、それは本作に収められた14曲にプラス12曲の2枚組CDで聴いてくれということだ。
個人的に面白かったのは、ビートルズ時代で言えば「ホエン・アイム・シックスティフォー」「ハニー・パイ」などミュージックホール音楽と言われるタイプの楽曲についてで、当時プロデュースしたペギー・リーへの言及などかなり興味深いものがある。
まともな形では発表されていない「スーイサイド」(ファースト・ソロ・アルバム『マッカートニー』でごく一部だけ聞ける)を通して聴くといかにもフランク・シナトラ(かトニー・ベネット)が歌うような曲だと思わされ妙に感心させられた。実際この曲はシナトラに提供されたがタイトル故に断られたとの由。
ポール・マッカートニーのファンなら必見。ミュージック・ホール音楽への言及は重要なので、ビートルズのファンも見ておいたほうが良いだろう。
ポールはまだまだ元気。あの高齢でコンサートで2時間歌う。感心することしきりだ。
2024年/1974年イギリス映画 監督デーヴィッド・リッチフィールド
ネタバレあり
銀行の営業人種を捉まえて音楽の話をすることが多く、一種のカス・ハラをしていると反省しきりの今日この頃。
3年くらい前に音楽の話をした時、20代の若い女性営業人らしく“ジャニーズは聴かないんですか?”と問われたことがある。当然聴くわけがないが、その理由はと言えば、音楽は音だけで聴くものと思っているからである。映像なしに集団のダンスを眼目としているかのようなグループ・アイドルを聞いても面白くなかろう。
僕は、アイドルは歌が下手といった観念的な考えを持たない代わりに歌詞に余り興味がないので、自分で曲を作るとか、楽器を弾くとかしない人は原則的に聴く対象にしていないというだけ。ジャズ歌手やソウル歌手のように、声や歌唱が文字通り楽器レベルにまで達している人は別だが。
何でこんな話から始めたかと言えば、本作のようにライヴを収めた音楽ドキュメンタリーの評価は、事実上音楽の評価となってしまうわけで、画面があってもなくても殆ど差がないからである。
が、本作は少し映画(元来1974年にTV放送用に作られたものの結局放映されたなかったコンテンツ=スタジオ・ライヴ=で、昨年劇場でも公開されソフトも発売された)的なお楽しみはある。
まず現在のポール・マッカートニーが昔を振り返る入れ子構造になってい、さらにスタジオ・ライブにポールやリンダ・マッカートニー、最初から最後までウィングズのメンバーとしてポールを支え続けたデニー・レインのコメントがそのライヴの場面に加えられてもいる多重性があるので、かつて映画館まで観に行った「ロックショウ」(1980年)のような、それこそ映画としてコメントのしようのない単純な収録ものとは違う。
その代わり演奏が完全には聞けないナンバーが少なくなく、それは本作に収められた14曲にプラス12曲の2枚組CDで聴いてくれということだ。
個人的に面白かったのは、ビートルズ時代で言えば「ホエン・アイム・シックスティフォー」「ハニー・パイ」などミュージックホール音楽と言われるタイプの楽曲についてで、当時プロデュースしたペギー・リーへの言及などかなり興味深いものがある。
まともな形では発表されていない「スーイサイド」(ファースト・ソロ・アルバム『マッカートニー』でごく一部だけ聞ける)を通して聴くといかにもフランク・シナトラ(かトニー・ベネット)が歌うような曲だと思わされ妙に感心させられた。実際この曲はシナトラに提供されたがタイトル故に断られたとの由。
ポール・マッカートニーのファンなら必見。ミュージック・ホール音楽への言及は重要なので、ビートルズのファンも見ておいたほうが良いだろう。
ポールはまだまだ元気。あの高齢でコンサートで2時間歌う。感心することしきりだ。
この記事へのコメント
>あの高齢でコンサートで2時間歌う。感心することしきりだ。
去年の12月のロンドン公演に行った友人によると、3時間!飲まず食わずでステージに立ちっぱなしでめちゃくちゃ元気やったよ〜との事です。
流石に歌いっぱなしじゃなくてピアノを弾いたりとか色々していたそうです。
高齢者の活力の源の一つですな。
>3時間!
さらに凄い。
いずれにしても、2時間歌うという表現もあながち外れてもいないわけですね^^
ロンドンまで行かれる方のパワーにも感心します。
僕など、30年以上もあっていない旧友(高校時代からの映画友達)に会いに東京に行くのもなかなか実行できません。今年になって2回彼と長電話できたのは、僕にとっては大分進歩なのですよ。
ブログ・フレンドを別にすると、彼ほど映画に詳しい人はいないので、話した後は充実した気持ちになります。今度電話する時はミーティング・スケジュールの打ち合わせと行きたいものです。
彼女たちにとってロンドンは懐かしい場所であって遠い場所ではないようです。
一人は、前にもお話ししたかもしれませんがビートルズの日本公演にも行った筋金入りのファンで英国留学の経験もあり、もう一人は夫君が某有名企業の英国駐在員でロンドンで数年暮らした経験があって、海外はあっちこっち行ってるのでフットワークが軽いのでしょうね。羨ましい限りです。
ポールって亡くなった奥様リンダさんの影響でヴィーガンだとか?
そのあたりも元気の秘訣でしょうかね。 知らんけど…
真似はできませんわ。
>ポールって亡くなった奥様リンダさんの影響でヴィーガンだとか?
どうもそうらしいです。
少なくとも魚肉は欲しいなあ。