映画評「きみの色」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・山田尚子
ネタバレあり
山田尚子監督のアニメを観るのは3作目で、本作は前回(と言っても6年も前)観た「リズと青い鳥」の重なるところがある。
ミッション系の女子高で学ぶトツ子(声:鈴川紗由)は、人に色を見い出す特殊な感性を持っている。聖歌隊で活躍する同学年の作永きみ(声:高石あかり)に美しい青を感じて惹かれるが、間もなく彼女は学校に来なくなる。
書店でバイトをしていると噂に聞き、古本屋で再会を果たす。ちょっと付いた出まかせが基で音楽好きということになり、二人の話を聞いていた同世代の少年影平ルイ(声:木戸大聖)が二人に声を掛け、勢いでバンドを組むことになる。島で医者の家系である家族に黙って音楽を作っていた少年はやっと同好の士を見つけたのである。きみには学校を辞めたことを一人で育ててくれている祖母に言い出せないのを悩んでいる。トツ子は自分の色が分からないのが悩みと言えば悩みである。
そんな状態でも三人の曲作りは順調に進み、彼らの活動を知るシスター日吉子(声:新垣結衣)に勧められて、三人は学校の聖バレンタイン祭(文化祭)で演奏を披露することになる。これに自信をつけた彼らはそれぞれの悩みを解放していく。
というお話で、終盤に近い箇所で出て来る、21世紀の青春アニメらしく音楽的なシークエンスが良い。
きみとルイがそれぞれ肉親に真情を吐露するところを追いかけコーラスのように繋ぎ、それを主旋律とすれば、学校での失敗の為に帰省していたトツ子の両親との場面が謂わばカウンターメロディーとして対位法的に流れる。僕にとってはこのシークエンスがハイライトだ。
ミュージカル映画のように、トツ子が公演の後殻を破って幼少時代にやっていたバレエを踊ってみ、そこで自分の色である赤を見出す。
確かに彼女の色探しはアイデンティティ(自分)探しのものと何ら変わりはないが、求めるものが色であった為に、ルイが井上陽水の「白い船」のように旅立っていくところで放つテープの鮮やかな色彩がきちんと意味を成す。色が通奏低音であると意識して観ていると、テープの数々の色の奔出が感動的でさえあるのだ。
きみが使うギターはビートルズ・ファンにはお馴染みリッケンバッカー。彼らの演奏する音楽のジャンルはシンセ・ポップ。
テルミンがルイの得意楽器。1940年代から暫くホラー映画・怪奇映画で流行した。明日アップする1947年製作の映画でも使われている。
2024年日本映画 監督・山田尚子
ネタバレあり
山田尚子監督のアニメを観るのは3作目で、本作は前回(と言っても6年も前)観た「リズと青い鳥」の重なるところがある。
ミッション系の女子高で学ぶトツ子(声:鈴川紗由)は、人に色を見い出す特殊な感性を持っている。聖歌隊で活躍する同学年の作永きみ(声:高石あかり)に美しい青を感じて惹かれるが、間もなく彼女は学校に来なくなる。
書店でバイトをしていると噂に聞き、古本屋で再会を果たす。ちょっと付いた出まかせが基で音楽好きということになり、二人の話を聞いていた同世代の少年影平ルイ(声:木戸大聖)が二人に声を掛け、勢いでバンドを組むことになる。島で医者の家系である家族に黙って音楽を作っていた少年はやっと同好の士を見つけたのである。きみには学校を辞めたことを一人で育ててくれている祖母に言い出せないのを悩んでいる。トツ子は自分の色が分からないのが悩みと言えば悩みである。
そんな状態でも三人の曲作りは順調に進み、彼らの活動を知るシスター日吉子(声:新垣結衣)に勧められて、三人は学校の聖バレンタイン祭(文化祭)で演奏を披露することになる。これに自信をつけた彼らはそれぞれの悩みを解放していく。
というお話で、終盤に近い箇所で出て来る、21世紀の青春アニメらしく音楽的なシークエンスが良い。
きみとルイがそれぞれ肉親に真情を吐露するところを追いかけコーラスのように繋ぎ、それを主旋律とすれば、学校での失敗の為に帰省していたトツ子の両親との場面が謂わばカウンターメロディーとして対位法的に流れる。僕にとってはこのシークエンスがハイライトだ。
ミュージカル映画のように、トツ子が公演の後殻を破って幼少時代にやっていたバレエを踊ってみ、そこで自分の色である赤を見出す。
確かに彼女の色探しはアイデンティティ(自分)探しのものと何ら変わりはないが、求めるものが色であった為に、ルイが井上陽水の「白い船」のように旅立っていくところで放つテープの鮮やかな色彩がきちんと意味を成す。色が通奏低音であると意識して観ていると、テープの数々の色の奔出が感動的でさえあるのだ。
きみが使うギターはビートルズ・ファンにはお馴染みリッケンバッカー。彼らの演奏する音楽のジャンルはシンセ・ポップ。
テルミンがルイの得意楽器。1940年代から暫くホラー映画・怪奇映画で流行した。明日アップする1947年製作の映画でも使われている。
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