映画評「越境者たち」
☆☆★(5点/10点満点中)
2022年フランス映画 監督ギヨーム・レヌッソン
ネタバレあり
75年前ピエトロ・ジェルミが「越境者」という映画を作った。敗戦国イタリアでは食えなくなった元炭鉱夫一家がフランスへ向けて不法のアルプス越えを敢行する様子を描く作品だ。
かの作品を再鑑賞した時に思ったのは、戦後の復興期にはこのようなことを行うイタリア人もいたわけで、現在イタリアに向けてやって来る北アフリカの人々に対してイタリア当局はもっと寛容になれないかということだ。絶対数は比較にならないだろうが、だからと言って一方的に厳しくすれば良いというものでもないと思う。かの映画のフランス当局者は気付かないふりをしてくれた。
妻を自らの事故で失ったフランスの中年男ドニ・メノーシュが、幼い娘を友人に預けてアルプスの山小屋に行こうとする。途中で夫と生き別れた同世代と思しきアフガニスタン女性ザール・アミール=エブラヒミと出会い、仕方なく助けるうち、三人の移民排斥主義男女の執拗な攻撃に晒され、逆に彼女から助けられるようにもなる。
雪山を越えることの設定にリアルさがないといった評価が目立つが、僕にとって問題はそこではなく、解りやすすぎる型通りの構図だ。
妻を失った男が夫を生き別れた妻と出会えば必然的に疑似夫婦になる。主人公が妻の喪失に呆然としている状態だから生じるのは精神的疑似夫婦関係だ。彼を助けた車に乗っていて当局に遭遇した時に同世代である妻の身分証明書がヒロインを救う。些か都合が良すぎる感じもするが、「越境者」の当局と違って官憲はオーヴァールックしたというわけではないだろう。
情けは他人(ひと)の為ならずという側面もあって、後半は立場が入れ替わって、彼は専ら助けられる人になる。人情に弱い僕にはじーんとしてしまうところがないではないものの、全体的に型通りで曲がないという感じが強い。
翻って、ヒロインが主人公に黙っ移民保護施設を立ち去り、夫がいるかもしれないパリに旅立つのは現実的な設定に感じられて良い。
日本当局は、疑う余地が全くない人しか難民と認めない。そんな人がそうそういるはずもない。50%くらいの可能性でも認めるべきだ。難民を認めないから防衛意識が働いて同じ民族が固まって川口市のような状態が生まれる。ただ、これからやって来る人々はイスラム教徒が多いであろうということが、僕にも懸念材料だ。【郷に入っては郷に従え】というスタイルができにくいイスラム教の考えは日本の文化維持にとって大問題と思う。
2022年フランス映画 監督ギヨーム・レヌッソン
ネタバレあり
75年前ピエトロ・ジェルミが「越境者」という映画を作った。敗戦国イタリアでは食えなくなった元炭鉱夫一家がフランスへ向けて不法のアルプス越えを敢行する様子を描く作品だ。
かの作品を再鑑賞した時に思ったのは、戦後の復興期にはこのようなことを行うイタリア人もいたわけで、現在イタリアに向けてやって来る北アフリカの人々に対してイタリア当局はもっと寛容になれないかということだ。絶対数は比較にならないだろうが、だからと言って一方的に厳しくすれば良いというものでもないと思う。かの映画のフランス当局者は気付かないふりをしてくれた。
妻を自らの事故で失ったフランスの中年男ドニ・メノーシュが、幼い娘を友人に預けてアルプスの山小屋に行こうとする。途中で夫と生き別れた同世代と思しきアフガニスタン女性ザール・アミール=エブラヒミと出会い、仕方なく助けるうち、三人の移民排斥主義男女の執拗な攻撃に晒され、逆に彼女から助けられるようにもなる。
雪山を越えることの設定にリアルさがないといった評価が目立つが、僕にとって問題はそこではなく、解りやすすぎる型通りの構図だ。
妻を失った男が夫を生き別れた妻と出会えば必然的に疑似夫婦になる。主人公が妻の喪失に呆然としている状態だから生じるのは精神的疑似夫婦関係だ。彼を助けた車に乗っていて当局に遭遇した時に同世代である妻の身分証明書がヒロインを救う。些か都合が良すぎる感じもするが、「越境者」の当局と違って官憲はオーヴァールックしたというわけではないだろう。
情けは他人(ひと)の為ならずという側面もあって、後半は立場が入れ替わって、彼は専ら助けられる人になる。人情に弱い僕にはじーんとしてしまうところがないではないものの、全体的に型通りで曲がないという感じが強い。
翻って、ヒロインが主人公に黙っ移民保護施設を立ち去り、夫がいるかもしれないパリに旅立つのは現実的な設定に感じられて良い。
日本当局は、疑う余地が全くない人しか難民と認めない。そんな人がそうそういるはずもない。50%くらいの可能性でも認めるべきだ。難民を認めないから防衛意識が働いて同じ民族が固まって川口市のような状態が生まれる。ただ、これからやって来る人々はイスラム教徒が多いであろうということが、僕にも懸念材料だ。【郷に入っては郷に従え】というスタイルができにくいイスラム教の考えは日本の文化維持にとって大問題と思う。
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