映画評「Ribbon」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年日本映画 監督のん
ネタバレあり
誰も本格的にコロナ禍下での人々の困惑を描こうとしないのに、 “新人監督”のんが自らを主演に立派な作品を作ったと思う。
2020年コロナで政府が右往左往し学校への登校自粛を要請したように、ある芸術大学が卒業制作展の中止と学生の登校禁止を決定する。学生は怒りと悲しみのぶつけようがない。
そんな一人が浅川いつか(のん)で、親友の平井(山下リオ)が絵を描き続けるのに対し、やる気が起こらずブラブラしている。遅起きをして出かける公園には怪しい若い男(渡辺大知)がいる。
心配をして母親(春木みさよ)が訪れる。娘の絵を勝手に捨てたことに関し娘を心配する母親に乞われて父親(菅原大吉)がやって来る。二人とは別に、妹まい(小野花梨)もやって来る。
やがて、公園の怪しい男が中学時代に彼女の絵を気に入ってくれ、彼女が芸術大学へ行く原因にもなった同級生・田中と判明する。
実は落ち込んでいた平井にけしかけられたいつかは彼女と共に夜の大学へ忍び込び、大きすぎて持ち出せない平井の絵を分解して持ち出す。田中の言葉に俄然元気づいていたいつかは一度は捨てた未完成の絵を完成させ、平井の絵も加工して、自分たちの為だけの卒業制作展を開くのだ。
固定カメラで神妙に始まるので純文学系かと思いきや、いつかの家族がコロナ禍の為に珍妙な格好で次々とやって来るところからコメディーに転じ、ヒロインが謎の男の正体を突き止めようと妙な行動を取るところまで続く。いや、その後もコメディーですな。
それではトーンが一定しないかと言えば、芸術人種の悲喜劇を底に据えたコロナ禍の戯画と解釈できるので、登場人物のぶれる気持ちのように常に小さく揺らぐのがこの映画のトーンなのだ。そしてコミカルな場面になってからカメラが少し揺れたり、ジャンプ・カットを駆使したり、なかなか勢いがあるタッチで才気を感じさせる。
何より女優としてののんはこういうテンションの高い人物を演じると実に素晴らしく、どの作品でも映画の一大魅力となる。
コロナ禍で最も被害を被ったのが芸術分野で、それを真正面から取り上げるのがテーマであるとすれば、通奏低音は“不審な人物”で、 これが見事に一貫しているのも気に入った。過剰な防御服を着用するヒロインの家族、公園の男、公園で男に対する妙な行動を取るヒロイン、そして大学に侵入する二人。
実に徹底したもので、これによってコロナ禍を真正面から扱いながら、コロナ禍の戯画としての性格がはっきりすることになった。
図書館に行ってもスーパーに行っても、未だに入る前後にアルコールで手を殺菌するのを欠かさない。しかし、5類に移行して段々利用する人が減り、今では1割いるかどうか。マスクを付ける人はまだ一定数いる。図書館で6割、スーパーでは8割くらいか。
2022年日本映画 監督のん
ネタバレあり
誰も本格的にコロナ禍下での人々の困惑を描こうとしないのに、 “新人監督”のんが自らを主演に立派な作品を作ったと思う。
2020年コロナで政府が右往左往し学校への登校自粛を要請したように、ある芸術大学が卒業制作展の中止と学生の登校禁止を決定する。学生は怒りと悲しみのぶつけようがない。
そんな一人が浅川いつか(のん)で、親友の平井(山下リオ)が絵を描き続けるのに対し、やる気が起こらずブラブラしている。遅起きをして出かける公園には怪しい若い男(渡辺大知)がいる。
心配をして母親(春木みさよ)が訪れる。娘の絵を勝手に捨てたことに関し娘を心配する母親に乞われて父親(菅原大吉)がやって来る。二人とは別に、妹まい(小野花梨)もやって来る。
やがて、公園の怪しい男が中学時代に彼女の絵を気に入ってくれ、彼女が芸術大学へ行く原因にもなった同級生・田中と判明する。
実は落ち込んでいた平井にけしかけられたいつかは彼女と共に夜の大学へ忍び込び、大きすぎて持ち出せない平井の絵を分解して持ち出す。田中の言葉に俄然元気づいていたいつかは一度は捨てた未完成の絵を完成させ、平井の絵も加工して、自分たちの為だけの卒業制作展を開くのだ。
固定カメラで神妙に始まるので純文学系かと思いきや、いつかの家族がコロナ禍の為に珍妙な格好で次々とやって来るところからコメディーに転じ、ヒロインが謎の男の正体を突き止めようと妙な行動を取るところまで続く。いや、その後もコメディーですな。
それではトーンが一定しないかと言えば、芸術人種の悲喜劇を底に据えたコロナ禍の戯画と解釈できるので、登場人物のぶれる気持ちのように常に小さく揺らぐのがこの映画のトーンなのだ。そしてコミカルな場面になってからカメラが少し揺れたり、ジャンプ・カットを駆使したり、なかなか勢いがあるタッチで才気を感じさせる。
何より女優としてののんはこういうテンションの高い人物を演じると実に素晴らしく、どの作品でも映画の一大魅力となる。
コロナ禍で最も被害を被ったのが芸術分野で、それを真正面から取り上げるのがテーマであるとすれば、通奏低音は“不審な人物”で、 これが見事に一貫しているのも気に入った。過剰な防御服を着用するヒロインの家族、公園の男、公園で男に対する妙な行動を取るヒロイン、そして大学に侵入する二人。
実に徹底したもので、これによってコロナ禍を真正面から扱いながら、コロナ禍の戯画としての性格がはっきりすることになった。
図書館に行ってもスーパーに行っても、未だに入る前後にアルコールで手を殺菌するのを欠かさない。しかし、5類に移行して段々利用する人が減り、今では1割いるかどうか。マスクを付ける人はまだ一定数いる。図書館で6割、スーパーでは8割くらいか。
この記事へのコメント