映画評「トム・ホーン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1980年アメリカ映画 監督ウィリアム・ウィアード
ネタバレあり

40年ほど前に観て以来久しぶりの再鑑賞。

スティーヴ・マックイーンの最後から2番目の作品で、本作撮影中の1979年に癌が判明して、翌年80年に逝去した。確かに走る場面のスピードのなさが寂しいが、ライフルを放つ姿はさすがに様になっている。

20世紀初め。15年ほど前にアパッチ族のジェロニモ捕縛に活躍した西部の英雄トム・ホーン(マックイーン)も中年になり、ワイオミング州にやって来る。牧場主コーブル(リチャード・ファーンズワース)が彼に気付いて、牧場主組合の為の牛泥棒排除に協力してくれないかと頼まれ、契約する。
 しかるに、ライフルで豪快に倒す彼の旧時代の荒々しいやり方を一部の牧場主は嫌い、彼の排除を考え出す。その直後に14歳の羊飼いの少年が彼と同じライフルで殺され、その見事な腕前とライフルの一致で彼の犯行とされ、結局有罪となって絞首刑となる。

ニューシネマ時代になった途端に、開拓時代の終わりに言及する西部劇が多くなった。ニューシネマが西部劇を減らしたわけではない一方、その為にリアリズム基調の西部劇が増え、それが70年代後半から西部劇が減っていく趨勢を作ったと思われる。

本作はそんな趨勢の中で、やはり開拓時代終焉そのものをテーマにしたと言って良い作品で、そのテーマを展開するために見た目以上に重要なのが、女性教師グレンドレン(リンダ・エヴァンズ)とのロマンスである。彼女は彼の古い人生観を最初に否定して別れていく。それを留置場から外を眺めながら回想するのだ。
 最初の回想の見せ方は上手くないと感じたが、間断的に3回見せるうちに馴染んでくる。

これがあるので、裁判の場面での彼の自暴自棄的な言動が説得力を持ってくるわけである。それでも脱獄を試みるのは新しい時代への最後の抵抗と古い自分の表出ということだろう。

マックイーンの西部劇だからもっと華麗な作品を期待したくなる向きには、いかにも地味であることが不満にならないでもないが、映画らしい映画が少ない現在観ると、地味ならで滋味を感じないではいられず、そこはかとなく感動させられるものがある。

Indian Reservation は半ば固有名詞だから、本作対訳字幕のように【先住民居留地】と機械的に非差別的用語に変換すると誤訳になる。【インディアン】は使用に留意すべき用語であって差別用語ではない(【先住民】と言われることを嫌うインディアンは多い)のだが、その辺の勘違いが日本の字幕制作者もしくはそう指示するTV局(放送禁止用語としている)なりにあるようだ。日本の「記者ハンドブック」では“使用可”となっている。TV局に関係ないプライムビデオの古い映画の字幕では【インディアン】が使われることがあり、ある意味これは正しい行き方だ。

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2025年06月04日 07:02
おはようございます。1980年。テレビ番組でこの作品が紹介されました。クラスメートが「マックィーンは、癌に蝕まれていてもう長くないそうだ。」と言っていたのを今でも思い出します。
それから随分年月が流れてこの作品を観ました。作品も共演者も地味ですが、それが却って良かったと思いました。トム・ホーンが処刑される直前。歩く時に聞こえる鎖の音が悲しかったです。
オカピー
2025年06月04日 12:08
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>歩く時に聞こえる鎖の音が悲しかったです。

無用なものになっていく西部開拓魂の泣き声ですよ。
蟷螂の斧
2025年07月03日 18:51
こんばんは。この作品で目を引く役者はスリム・ピケンズ。「ウィル・ペニー」「砂漠の流れ者」「ゲッタウェイ」「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」などに出ています。この人もあまり長生きではありませんでした(享年64)。

https://www.youtube.com/watch?v=Ls70QShBYVM

その後ドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)を裏切ると言う説もありますね(笑)。
オカピー
2025年07月04日 12:48
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>この作品で目を引く役者はスリム・ピケンズ

と言われても、既に僕にはピンと来ないわけですが。
シェリフ役だったようですね。マーシャル(連邦保安官)の悪はまだ頭の中に残っています。