映画評「ブルーピリオド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・萩原健太郎
ネタバレあり

山口つばさなる女性漫画家による同名コミックの映画化。監督の萩原健太郎は初めて。

高校2年生の男子生徒・八虎(やとら=眞栄田郷敦)は不良っぽいが成績優秀、余り裕福ではない家計上の理由で、国公立大学を目指しているある日、日本画の好きな友人龍二=仇名をゆかちゃんという女装男子=(高橋文哉)が親しい武蔵野美術大学志願の先輩森まる(桜田ひより)の絵に惹かれて美術に目覚め、朝の渋谷を捉えた青っぽい絵画が校内で評判を呼んだことを自信に、堅実な一般大学への進学を期待する母親真理恵(石田ひかり)に逆らってまで、美術予備校に通い始め、女性講師大葉(江口のりこ)の主人公にとって適切なアドヴァイス、あるいは天才・世田介(板垣李光人)に色々と刺激を受け、才能を伸ばしていく。

というお話で、開巻後1時間くらい経ったところでいよいよ受験場面が始まる。

芸大絡みの映画はたまに見られるが、受験の様子をここまでつぶさに見せた映画は初めてである。
 原作者が芸大卒業生ということが大いに機能したわけで、一日6時間の一次試験、三日計18時間の二次試験という受験の仕組みが紹介されるのが、芸術関係の学校には縁もゆかりもない凡人にも一応面白味になる。
 日本映画(とりわけフィクション)には珍しく実際に存在する大学が実名で出て来るので、芸大を目指す人は、これからの受験に参考になるかもしれない。

画面は最近の中間映画(純文学映画と大衆映画の間。中間小説と言う文芸用語からの借用です)らしく固定カメラで落ち着きがあって良い。朝の渋谷を捉えたワン・ショットは僕も青っぽいと感じたので、映画言語的にもちゃんとしているという印象がある。

しかし、主人公の内面モノローグが説明的にすぎて多少うるさい気はする。芸術に対する思いは誰であっても抽象的なので説明的にならざるを得ないと思うが、上述したような映画言語の駆使でもう少し行間を読ませる手法に舵を取れたのではないか。

お話の方では、芸術関係の大学は自力だけではなかなか難しいと思われるので、主人公が予備校に行ったこと自体には何の疑問もないが、年間数十万円はかかる予備校にすんなり行けたように見えるのはちょいと疑問である。国公立大学を2年余分に行った感じになる程度だろうか。

我が家も豊かではなかったので、結局塾にも予備校にも行かずに東京の国立大学に入った。国公立大学の授業料は昭和40年代末から物凄い上昇率で、僕より4年先に入った学生は1年にたった36000円(月給の三分の一くらい?)払うだけだった。僕の親が払ったのは月給分くらいだっただろう。今の国立大学生は僕らの時代より4倍くらい払っていて、私大との差は当時より遥かに少ない(僕らの時代、私大文系は国立の3.5~4倍くらいだった)。

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