映画評「岸辺露伴、ルーヴルへ行く」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・渡辺一貴
ネタバレあり
岸辺露伴という、明治大正期に重要な働きをした文学者・幸田露伴から取ったのが明らかな名前が面白くて観ることにした。
NHKでこの主人公を主役にしたドラマがあったらしいが、知らない。過去形ではなく進行形らしく、映画版の新作もあるらしい。「ジョジョの奇妙な冒険」なるベストセラー・コミックのスピンオフとのこと。
原作者の荒木飛呂彦には借用癖があるようで、このダーク・ファンタジー・ミステリーにも辰巳隆之介(安藤政信)なる人物が出て来るし、それ以上に主人公の超能力者の漫画家露伴(高橋一生)の編集者の名前が泉京花であるのだから、笑わせてくれる。
Wikipediaに当たるうちに、彼は音楽好きらしく、「ジョジョ」シリーズで色々なアーティスト名や曲名を借用していることに気付いたが、主人公の相手の人物の記憶を本にする能力がヘブンズ・ドアと名付けられているのは、ボブ・ディラン/エリック・クラプトン「天国への扉」Knocking on the Heaven's Doorからだろう。
かく面白がれるパロディー趣味のある作品は嫌いではない。
日本画の染料で新作を書くことを考えている露伴は、江戸時代に書かれたこれ以上なく黒い染料で書かれた邪悪とされる絵を訪ね、それが眠っているらしいルーヴル美術館へ、編集者・京花(飯豊まりえ)を伴って、赴く。
この絵を模倣したと思われる真っ黒の絵画を描いたモーリス・ルグラン(勿論モーリス・ルブランのパロディー。映画音楽でお馴染みミシェル・ルグランも含まれているかもしれない)の絵をオークションで取得した主人公は、ルーヴルで彼が事故で死んだことを知り、日本人キュレーター辰巳を伴って、その絵画が収められているらしい地下倉庫に入っていく。
そこでは邪悪な絵によって関係者全員の過去や先祖の罪が暴き出され、亡くなる者も現れる。しかし、何故かのんきな京花だけはそういう目に遭わない。先祖を含めて後ろめたい過去が一切ないのかも知れず、露伴だけでなく観客をも笑わせる。
かくして日本画染料での挑戦は一旦棚に上げると共に、かつて祖母の宅地で出会いルーヴルを訪れる原因を作った謎の女性・奈々瀬(木村文乃)の正体をも突き止める。
彼女は露伴の先祖に当たる人物で、彼女の夫である絵の作者仁左衛門の悪霊同様に、霊体であるはずの彼女にはヘブンズ・ドアは機能しないのではないか?
現在に甦る奈々瀬は「モナ・リザ」を想起させる洋装をしている。演じる木村文乃にもモナ・リザっぽい雰囲気があると思ったが、如何?
難しい理屈より、主人公たちが遭遇する謎とそれに対峙する冒険模様をひたすら素直に楽しめば良い作品だ。
現在を舞台にしているはずなのに大正時代辺りの時代ムードとダーク・ファンタジーの気分を帯び、鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」を想起する瞬間もあるが、さすがにあの二作のような名状しがたい妖しさを感じるところまでは行かない。
菊地成孔と新音楽制作工房なる集団による音楽が、場面に応じて多様であり、非常に良い。本作で一番の収穫である。
TVあるいはコミック絡みのミステリー作品としては品位が高い部類と思う。
ルーヴルであるならば、ヘブンズ・ドアはヘヴンであるべきでしょうがね。
2023年日本映画 監督・渡辺一貴
ネタバレあり
岸辺露伴という、明治大正期に重要な働きをした文学者・幸田露伴から取ったのが明らかな名前が面白くて観ることにした。
NHKでこの主人公を主役にしたドラマがあったらしいが、知らない。過去形ではなく進行形らしく、映画版の新作もあるらしい。「ジョジョの奇妙な冒険」なるベストセラー・コミックのスピンオフとのこと。
原作者の荒木飛呂彦には借用癖があるようで、このダーク・ファンタジー・ミステリーにも辰巳隆之介(安藤政信)なる人物が出て来るし、それ以上に主人公の超能力者の漫画家露伴(高橋一生)の編集者の名前が泉京花であるのだから、笑わせてくれる。
Wikipediaに当たるうちに、彼は音楽好きらしく、「ジョジョ」シリーズで色々なアーティスト名や曲名を借用していることに気付いたが、主人公の相手の人物の記憶を本にする能力がヘブンズ・ドアと名付けられているのは、ボブ・ディラン/エリック・クラプトン「天国への扉」Knocking on the Heaven's Doorからだろう。
かく面白がれるパロディー趣味のある作品は嫌いではない。
日本画の染料で新作を書くことを考えている露伴は、江戸時代に書かれたこれ以上なく黒い染料で書かれた邪悪とされる絵を訪ね、それが眠っているらしいルーヴル美術館へ、編集者・京花(飯豊まりえ)を伴って、赴く。
この絵を模倣したと思われる真っ黒の絵画を描いたモーリス・ルグラン(勿論モーリス・ルブランのパロディー。映画音楽でお馴染みミシェル・ルグランも含まれているかもしれない)の絵をオークションで取得した主人公は、ルーヴルで彼が事故で死んだことを知り、日本人キュレーター辰巳を伴って、その絵画が収められているらしい地下倉庫に入っていく。
そこでは邪悪な絵によって関係者全員の過去や先祖の罪が暴き出され、亡くなる者も現れる。しかし、何故かのんきな京花だけはそういう目に遭わない。先祖を含めて後ろめたい過去が一切ないのかも知れず、露伴だけでなく観客をも笑わせる。
かくして日本画染料での挑戦は一旦棚に上げると共に、かつて祖母の宅地で出会いルーヴルを訪れる原因を作った謎の女性・奈々瀬(木村文乃)の正体をも突き止める。
彼女は露伴の先祖に当たる人物で、彼女の夫である絵の作者仁左衛門の悪霊同様に、霊体であるはずの彼女にはヘブンズ・ドアは機能しないのではないか?
現在に甦る奈々瀬は「モナ・リザ」を想起させる洋装をしている。演じる木村文乃にもモナ・リザっぽい雰囲気があると思ったが、如何?
難しい理屈より、主人公たちが遭遇する謎とそれに対峙する冒険模様をひたすら素直に楽しめば良い作品だ。
現在を舞台にしているはずなのに大正時代辺りの時代ムードとダーク・ファンタジーの気分を帯び、鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」を想起する瞬間もあるが、さすがにあの二作のような名状しがたい妖しさを感じるところまでは行かない。
菊地成孔と新音楽制作工房なる集団による音楽が、場面に応じて多様であり、非常に良い。本作で一番の収穫である。
TVあるいはコミック絡みのミステリー作品としては品位が高い部類と思う。
ルーヴルであるならば、ヘブンズ・ドアはヘヴンであるべきでしょうがね。
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