映画評「若き見知らぬ者たち」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・内村拓也
ネタバレあり
ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲームU.S.A.」(オリジナルの「ファニーゲーム」は未鑑賞)ほどではないが、後味が余り良くない。
商業長編映画デビュー作という内山拓也なる監督は勿論初めて観る。2020年に作った「佐々木、イン、マイマイン」なる作品は119分あり、劇場でもちゃんと公開されているが、それでも商業長編映画にはならないのか。わからん。
梗概はある程度長さを求めると綿密にせざるを得ないタイプなので、逆の方向で書く。
青年・磯村勇斗は、同棲中(?)の看護婦岸井ゆきのと力を合わせて、脳の難病を持つ母親霧島れいかの面倒を見、自殺した元警官の父の借金を返す為に遺されたカラオケ・バーを切り回し、同居する格闘技世界チャンピオン戦を控える格闘家の弟・福山翔太を支える日々に疲弊しているが、友人染谷翔太の結婚パーティーに出かける前に寄ったカラオケ・バーで不良三人に絡まれ、暴力を振るわれた末に外に出される。
そこへ警官二人が現れるが、怪我人が前に自分たちに立てついた若者だった為に彼らは加害者を解放し、被害者を連行しようとするうちにその死に遭遇して慌て、もみ消しを図る。
その死に納得出来ぬものを感じるものの、弟が格闘技戦で奮闘するように、周囲も何とか前に進もうとする。
後味の悪さの理由について。不良三人もデタラメだが、滝藤賢一のベテラン警官がデタラメ千万なのである。前に立てついたことが面白くないというだけで加害者を逃して被害者の可能性の高い磯村だけを連行しようという態度は何事かと義憤にかられる。
しかし、義憤にかられる状態を維持させるような作劇にすれば映画的に良かったものを、本作は彼の相棒の若手・東龍之介にやりきれなさを感じさせ、滝藤にも撃たれる幻想を見させる。つまり彼らに罪の意識があることを示す。
平均的な人間なら当たり前の態度であるが、警官二人に反省させてしまっては理不尽さが半ば消失する。彼らも人間なのである、と観客に解らせようとするのは、本作に関しては間違った方向であろう。少なくとももはや若者ではなく、主人公の死の原因を作った張本人である滝藤にあの幻想を見させるのはまずい。
アヴァンタイトルの最後に主人公が拳銃自殺する幻想を見せるのと呼応させるという着想自体は悪くないが、後味の悪い映画は徹底して後味が悪くないとなまなかになってしまって逆効果だと思う。
昔「若き獅子たち」という戦争絡みの映画がありましたね。原作もアーウィン・ショーの有名作。西城秀樹にも同名の歌があるとか。
2024年日本映画 監督・内村拓也
ネタバレあり
ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲームU.S.A.」(オリジナルの「ファニーゲーム」は未鑑賞)ほどではないが、後味が余り良くない。
商業長編映画デビュー作という内山拓也なる監督は勿論初めて観る。2020年に作った「佐々木、イン、マイマイン」なる作品は119分あり、劇場でもちゃんと公開されているが、それでも商業長編映画にはならないのか。わからん。
梗概はある程度長さを求めると綿密にせざるを得ないタイプなので、逆の方向で書く。
青年・磯村勇斗は、同棲中(?)の看護婦岸井ゆきのと力を合わせて、脳の難病を持つ母親霧島れいかの面倒を見、自殺した元警官の父の借金を返す為に遺されたカラオケ・バーを切り回し、同居する格闘技世界チャンピオン戦を控える格闘家の弟・福山翔太を支える日々に疲弊しているが、友人染谷翔太の結婚パーティーに出かける前に寄ったカラオケ・バーで不良三人に絡まれ、暴力を振るわれた末に外に出される。
そこへ警官二人が現れるが、怪我人が前に自分たちに立てついた若者だった為に彼らは加害者を解放し、被害者を連行しようとするうちにその死に遭遇して慌て、もみ消しを図る。
その死に納得出来ぬものを感じるものの、弟が格闘技戦で奮闘するように、周囲も何とか前に進もうとする。
後味の悪さの理由について。不良三人もデタラメだが、滝藤賢一のベテラン警官がデタラメ千万なのである。前に立てついたことが面白くないというだけで加害者を逃して被害者の可能性の高い磯村だけを連行しようという態度は何事かと義憤にかられる。
しかし、義憤にかられる状態を維持させるような作劇にすれば映画的に良かったものを、本作は彼の相棒の若手・東龍之介にやりきれなさを感じさせ、滝藤にも撃たれる幻想を見させる。つまり彼らに罪の意識があることを示す。
平均的な人間なら当たり前の態度であるが、警官二人に反省させてしまっては理不尽さが半ば消失する。彼らも人間なのである、と観客に解らせようとするのは、本作に関しては間違った方向であろう。少なくとももはや若者ではなく、主人公の死の原因を作った張本人である滝藤にあの幻想を見させるのはまずい。
アヴァンタイトルの最後に主人公が拳銃自殺する幻想を見せるのと呼応させるという着想自体は悪くないが、後味の悪い映画は徹底して後味が悪くないとなまなかになってしまって逆効果だと思う。
昔「若き獅子たち」という戦争絡みの映画がありましたね。原作もアーウィン・ショーの有名作。西城秀樹にも同名の歌があるとか。
この記事へのコメント
すごい連想力ですね! さすがですっ!
20代の頃に結構読みましたが去年くらいまですっかり忘れていました。
去年何かで名前を目にして「Rich man ,Poor man」を読みたいと思っていたので すが、思った事を忘れてしまっていました。
思い出させて下さってありがとうございます!
さっきドアーズを聴いていたので”People are strange” “ Unknown Soldier”
を連想しましたよ。 (スペル間違えてるかも)
あ、もちろんこの映画も未見です。邦画は滅多に観ませんので…
>アーウィン・ショー
>去年何かで名前を目にして「Rich man ,Poor man」を読みたいと思っていたのですが、思った事を忘れてしまっていました。
こちらの図書館にもありました。
大学時代に英語のテキストが短編集The Girls in Their Summer Dressesで、この時にショーが「若き獅子たち」の原作者であったことを知りました。
この短編集は、和訳はないものと思っていましたが、ありましたよ。
>さっきドアーズを聴いていたので”People are strange” “ Unknown Soldier”
を連想しましたよ。 (スペル間違えてるかも)
現在【オカピーの採点表】(最近は木曜日がアップ日)でドアーズを特集していて、先週の木曜日にデビュー作を挙げ、3日後にPeople Are Strangeも入っている第2作をアップする予定です。その為僕も今日このアルバムを3回聞きましたよ^^
音楽に関しては素人も素人なので、好き嫌いレベルの話に推移していますが、是非お寄り戴けると嬉しいですねえ<(_ _)>
https://hokapi.seesaa.net/article/515525770.html
> The Girls in Their Summer Dresses
「夏服を着た女達」ですね。
80年代、常盤新平訳でアーウィンショーブームがありましたね。
アーウィンショーなら英語の難易度はともかくとして内容的には読みやすそうですね。
ちなみに私の時はまずヘミングウェイの「老人海」で、これはハードボイルドの面々が影響されたというだけあって即物的で男っぽい簡潔な文体で教科書としては読みやすくありがたい本でした。
あとはバーナードマラマッドの短編集はひたすら暗い印象しかなく「ワインズバーグオハイオ」に至ってはタイトルだけが記憶に残っていて、多分中身を読み取れなかった感じですね。単位を落とさなかったのが不思議です。
ではドアーズのドアを開けてきます ^ ^
>80年代、常盤新平訳でアーウィンショーブームがありましたね。
それで教授も選んだのかもしれませんね。
和訳があるのは避けたいという心情もあるような気もしますが。
>アーウィンショーなら英語の難易度はともかくとして内容的には読みやすそうですね。
余り記憶がないです。まだどこかにあるはずが、あったら少し読んでみましょう。
>私の時はまずヘミングウェイの「老人海」
>即物的で男っぽい簡潔な文体で教科書としては読みやすくありがたい本
その通りと思います。
僕の方は、スタインベックの中編「真珠」もやりました。
割合読みやすいほうと思いますが、講師(高校の先生の出張だったらしい)は邦訳について色々批判していたのをよく憶えています。
>バーナードマラマッドの短編集はひたすら暗い印象しかなく
>「ワインズバーグオハイオ」に至っては
「ワインズバーグ、オハイオ」はシャーウッド・アンダーソンですよ^^
マラマッドは名前をよく聞くも、読んだことはないと思います。
今度読んでみよう。
>ではドアーズのドアを開けてきます ^ ^
上手い!
マラマッドは「レンブラントの帽子」がお勧めです。飄々とした味があって面白かったですが、短編集は暗かったなぁ… ユダヤ系でロッド・スタイガーの「質屋」みたいな感じでしょうか。
「ワインズバーグ、オハイオ」は実はリベンジしようと本は買ってあるのですが只今積読中です。 積読歴2年くらいにはなるのでこれを機会に読まないといけませんね。
>「老人と海」でした。 老人会か! ^^
そう言えば、去る三月に長らく会ってなかった元同僚(後輩二人)と食事会を設けましたが、その時【老人会】なる名称を使ったような気も・・・
>マラマッドは「レンブラントの帽子」がお勧めです。
図書館にありましたから、いずれ借りてみましょう。
>「ワインズバーグ、オハイオ」は実はリベンジしようと本は買ってあるのですが只今積読中です。
上では、マラマッドと別枠で記述されていたわけですね。
失礼しました<(_ _)>