映画評「ぼく モグラ キツネ 馬」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2022年イギリス=アメリカ合作映画 監督ピーター・ベイントン、チャーリー・マッケジー
ネタバレあり

Apple TV シリーズ第4弾。

チャールズ・マッケジーなる児童文学者による絵本のアニメ映画化。作者自ら共同脚色と共同監督に参加した34分の短編である。

雪の中で迷子になった少年が、モグラ、キツネ、馬と続け様に会い、 “家”を目指すが、 “家”なるものは形ではなく、互いへの信頼、児童文学的に言えば愛情・友情にあるのではないか、と気付く。

絵本を読む年齢の子供たちにはかなり難しい哲学的な観念であろうが、直線的に素直に作られていて非常に素晴らしい。

モグラが一時は自分を食べようとしたキツネを罠から解放し、川で溺れそうになったモグラをキツネが助ける。この間の邦画「アイミタガイ」に見た相身互いという観念を思い起こさせると共に、【優しさは強さ】というメッセージとなっている。
 また、自分で決めるということが最高の自由なのだ、というメッセージも印象深い。独裁的な国家ではそれもなかなかできないわけですからね。

かく色々なメッセージを放ちながらも映像作品として純度が高い。短編だからこそ成し得た高純度と言うべし。

モグラがいつもケーキのことを考えているところがユーモラスだったり、あるいは少年とモグラが乗る馬の周りをキツネが歩き回り、やがて俯瞰すると足跡がハート型になっていると判るそこはかとなさが良い。

キャラクターのタッチと背景のタッチが異なるのはスタジオジブリや四日前のトム・ムーア監督のアニメ「ウルフウォーカー」を持ち出すまでもなく、近年のアニメでは当たり前となっている。
 かかる作品ではキャラクターは漫画的で、背景は絵画的もしくはグラフィック的であることが多いわけだが、本作のキャラクターは「ウルフウォーカー」の一部表現同様、「かぐや姫の物語」のようにデッサン的に描かれ、大変興味深い。ちょっとした流行なのかもしれない。

そして、本作の背景は絵画的と分類される方だろう。それにしても、その美しさは幽玄という言葉では言い尽くせず、実物を見る如くはないと思う。絵を見るだけで感激しますぞ。

The Boy が “ぼく” になるのが日本風。

この記事へのコメント

かずき
2025年06月07日 13:07
オカピーさん、こんにちは。

この絵本原作アニメは、子供向けと決して侮れない、高純度な作品でしたね。
直線的な物語、34分という短編でありながら、奥深いメッセージも内包して、画面も非常に美しい。
結果的に、下手な映画では全く太刀打ちできない作品に仕上がっていました。
動物も愛らしく、ヨチヨチ歩きのモグラくんも可愛かったです。

絵本原作の動物が出る短編アニメということで、私が大好きな「霧の中のハリネズミ」というロシアの作品を思い出しました。
こちらも高純度かつ奥深い内容で超オススメです。
(ただし、現在配信しておらず、Blu-ray・DVDは全部プレミア化。YouTubeにアップされているものも画質が悪く、美しい画面を堪能できないのでオススメできません。)
もし機会があれば御覧頂きたいです。
オカピー
2025年06月07日 20:52
かずきさん、こんにちは。

>子供向けと決して侮れない

TVで勧善懲悪的時代劇が人気だった頃、父親がアニメを馬鹿にしていたので、心の中で(?)、時代劇の方が余程子供っぽいよ、と思っていましたよ。
まして、このように優れた作品とは比較するまでもない感じです。

>「霧の中のハリネズミ」というロシアの作品

画像を見ましたが、純度の高そうなムードを感じますねえ。