映画評「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2024年アメリカ映画 監督グレッグ・バーランティ
ネタバレあり
近頃アメリカのドラマ映画が伝記・実話に頼ってばかりいるのが良い脚本家が育たない原因(あるいは育っていない結果)であると文句を言ったばかりだが、そんな中でフランク・シナトラの有名な歌を題名にした本作は実話を背景にしながら芯の部分を巧みなフィクションにした小傑作である。
今の平均レベルを考えると大傑作と言いたくもなるが、一応古い映画とのバランスをある程度取ってそういう言い方にしておきます。
嘘で広告業界を渡って来た美人スカーレット・ヨハンスンが、アメリカの威信をかけてアポロ11号の成功を期すニクスン大統領をバックアップするフィクサーたるウッディー・ハレルスンに正体を知っているぞと脅され、NASAの広告係として赴任する。彼女は、アポロ1号の失敗の罪悪感と戦い、捲土重来を図る発射ディレクターのチャニング・テイタムと対立しながらも、成功裏に宣伝活動で成果を残す。
二人の関係が変わる契機は、皮肉にも失敗に備えてハレルスンがフェイク放送をしろと命じたことから起こり、そうはさせたくないという点で一致を見た二人は、部下の若者二人を最大限に活用して、難関を乗り切ろうとする。
序盤のうちは戦前のスクリューボール・コメディーを思わせる台詞の応酬を打ち出し誠に快調に進む。おおっ、これは久しぶりの本格的なロマンティック・コメディーになりそうだわいと喜んでいるうちに、「カプリコン・1」というフェイク中継の映画と、スタンリー・キューブリックがアポロ11号着地場面をフェイクで作ったと主張するモキュメンタリー(フランス製)を大いに取り込んでいるのが判ってさらにゴキゲンになり、膝を打った。
因みに僕の言うロマンティック・コメディーには、前世紀終盤にロマ・コメの女王と言われたメグ・ライアン主演作のようなものはやや外れる。僕の定義ではそれらはラヴ・コメディーとなる。
僕の定義するロマ・コメは、恋愛は傍流であり、本流である他の要素を終始サポートしながら、最後に恋愛要素が本流を食ってしまうような映画を言う。例えば、オードリー・ヘプバーンの「シャレード」や「おしゃれ泥棒」である。とりわけ後者は典型と言って良い。
結果的にこの映画に関しては、6.6/10という相対的に低い平均点しか進呈しなかったIMDb投票者より、 4.1/5の【Yahoo!映画】諸君の印象に僕の評価は近い。恐らく理由に関しては多少違うでしょうがね。
僕の古い映画好きを別にしても、フェイクとリアルの戦いを描いた部分がなかなかサスペンスフルで楽しめる。
フェイクを一種の主題にしながら、この映画はリアル側を応援したくなる、陰謀論に与しない立場を観客に要求してしばしばドキドキさせながら、黒猫を繰り出してリアル側が精神論的にも結果としても正しかったとする力業を持ってくる辺り、それまでの緊張感の意味は何だったのだと肩透かしをくらわせつつ、実に巧みな作術という印象を僕に抱かせる。
わが【一年遅れのベスト10】では、アメリカの大衆映画がなかなか入って来ないが、実は入れたくてたまらない。出来栄えが伴わないので入れられないだけなのだ。本作はまず入って来ると思う。
エンドロールでは、シナトラの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を流す方が良かったように思いますが。
2024年アメリカ映画 監督グレッグ・バーランティ
ネタバレあり
近頃アメリカのドラマ映画が伝記・実話に頼ってばかりいるのが良い脚本家が育たない原因(あるいは育っていない結果)であると文句を言ったばかりだが、そんな中でフランク・シナトラの有名な歌を題名にした本作は実話を背景にしながら芯の部分を巧みなフィクションにした小傑作である。
今の平均レベルを考えると大傑作と言いたくもなるが、一応古い映画とのバランスをある程度取ってそういう言い方にしておきます。
嘘で広告業界を渡って来た美人スカーレット・ヨハンスンが、アメリカの威信をかけてアポロ11号の成功を期すニクスン大統領をバックアップするフィクサーたるウッディー・ハレルスンに正体を知っているぞと脅され、NASAの広告係として赴任する。彼女は、アポロ1号の失敗の罪悪感と戦い、捲土重来を図る発射ディレクターのチャニング・テイタムと対立しながらも、成功裏に宣伝活動で成果を残す。
二人の関係が変わる契機は、皮肉にも失敗に備えてハレルスンがフェイク放送をしろと命じたことから起こり、そうはさせたくないという点で一致を見た二人は、部下の若者二人を最大限に活用して、難関を乗り切ろうとする。
序盤のうちは戦前のスクリューボール・コメディーを思わせる台詞の応酬を打ち出し誠に快調に進む。おおっ、これは久しぶりの本格的なロマンティック・コメディーになりそうだわいと喜んでいるうちに、「カプリコン・1」というフェイク中継の映画と、スタンリー・キューブリックがアポロ11号着地場面をフェイクで作ったと主張するモキュメンタリー(フランス製)を大いに取り込んでいるのが判ってさらにゴキゲンになり、膝を打った。
因みに僕の言うロマンティック・コメディーには、前世紀終盤にロマ・コメの女王と言われたメグ・ライアン主演作のようなものはやや外れる。僕の定義ではそれらはラヴ・コメディーとなる。
僕の定義するロマ・コメは、恋愛は傍流であり、本流である他の要素を終始サポートしながら、最後に恋愛要素が本流を食ってしまうような映画を言う。例えば、オードリー・ヘプバーンの「シャレード」や「おしゃれ泥棒」である。とりわけ後者は典型と言って良い。
結果的にこの映画に関しては、6.6/10という相対的に低い平均点しか進呈しなかったIMDb投票者より、 4.1/5の【Yahoo!映画】諸君の印象に僕の評価は近い。恐らく理由に関しては多少違うでしょうがね。
僕の古い映画好きを別にしても、フェイクとリアルの戦いを描いた部分がなかなかサスペンスフルで楽しめる。
フェイクを一種の主題にしながら、この映画はリアル側を応援したくなる、陰謀論に与しない立場を観客に要求してしばしばドキドキさせながら、黒猫を繰り出してリアル側が精神論的にも結果としても正しかったとする力業を持ってくる辺り、それまでの緊張感の意味は何だったのだと肩透かしをくらわせつつ、実に巧みな作術という印象を僕に抱かせる。
わが【一年遅れのベスト10】では、アメリカの大衆映画がなかなか入って来ないが、実は入れたくてたまらない。出来栄えが伴わないので入れられないだけなのだ。本作はまず入って来ると思う。
エンドロールでは、シナトラの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を流す方が良かったように思いますが。
この記事へのコメント
御意!!!です
実に巧みな作術だと思いました。
でそう考えますと、
<エンドロールでは、シナトラの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を流す方が良かった
そういう意見もありますね〜
私はワザとそうしなかった(捻った)派です(笑)
><エンドロールでは、シナトラの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を流す方が良かった
>そういう意見もありますね〜
>私はワザとそうしなかった(捻った)派です(笑)
僕もヒネッているとは思いましたが、ハッピーなエンディングにシナトラ版がぴったりのような気がしまして^^