映画評「ラストマイル」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・塚原あゆ子
ネタバレあり

やけに脇役に豪華な俳優を配しているなあと思ったら、監督の塚原あゆ子と脚本の野木亜希子が組んだTVドラマのキャストが(同じ世界線で)出ているということでありました。

アマゾンを思わせる世界的な大手ショッピング・サイト日本支社の西武蔵野ロジスティクス・センター(LC)のセンター長として美人・満島ひかりが赴任して程なく、配達物が爆破するという事故もしくは事件が勃発、さらに同様のケースが続発し、警察に乗り込まれる。
 会社の方針を考えると警察の求める発送停止は考えられず、部下のチームマネージャー岡田将生と共に事態を憂慮するが、発想を転換して、警察をチェック係と考え直し、チェックが終わるや否や発送することができる方法を案出する。
 警察は爆破方法を特定、犯人は会社関係者の中にいると踏むが、調べ上げていくうちに浮上した2代前のマネージャー中村倫也の追跡ができない。これを不審に思うも、やがて発見された彼は5年前の社内での墜落事故により植物状態である。自殺未遂の疑いもあり、警察は彼と関係のあった女性の犯行ではないかと推測する。
 岡田は画像と様子の似ている美人上司を疑うが、彼女が否定するまでもなく、彼女は犯人の仕掛けた爆弾の入ったパッケージに手をかけてしまう。

というミステリー・サスペンスで、前半はなかなか良い。
 このジャンル(サスペンスというジャンル映画)は邦画が弱いところだったのだが、資金の乏しい邦画でもCGの活用によって近年は大分工夫が凝らされ、面白いものが出るようになってきた。
 本作もその中に入れて良いと思うが、中盤から社会派ぶりを見せ始めるので、少々嫌な予感を覚えると、やがて正に配送業者を含めた商業版「モダン・タイムス」(1936年)の趣きになる。映画は常にジャンルに誠実であれという我が映画観からすると、がっかりさせられないでもないわけである。
 TV局絡みは「相棒」シリーズの映画版を見ても社会派の要素を見せたがる。そうしたメッセージ提示自体は意義のあることだが、映画の価値とイコールではないので、それに頼りすぎてジャンルの純度を下げるのもどうかというのが僕の立場だ。

しかも、どうにも宙に浮いているシングル・マザー(安藤玉恵)一家の場面が、 終盤の火野正平・宇野祥平の “しょうへい” 親子コンビ (配達の末端) の活躍を見せる為にあると判って却って興覚めさせられる。
 僕は登場人物の直接的な関係者かと推測しながら見ていて一向に結びつかないので首を傾げていたのだが、終了寸前にそういうことでしたかとやっと納得できた次第。

TV視聴者層にはこれくらい作り物めかないとダメなんでしょう。ミステリー度も高く、僕のように純度などという理屈を持たない方には十分楽しめる内容と思う。

火野正平にとって恐らく最後の映画出演作である。元気そうに見えるが。合掌。

西武蔵野LCとなったのは我が群馬県にあるGメッセ群馬。コロナのワクチン接種で3度行きました。

この記事へのコメント

2025年09月06日 07:58
社会派エンタメサスペンスとして、おもしろく見ました。
アマゾンみたいなところの内部が見られるだけで、わくわくしました。
でも、犯行をもっとちゃんと見せてもよかったのでは、と。ホームレスがこの劇でも(言い方はわるいですが)便利に使われていて、東野圭吾原作のミステリーにもそういうのがあったなあ、と思ったり。
オカピー
2025年09月06日 21:44
nesskoさん、こんにちは。

>アマゾンみたいなところの内部が見られる

どこまで実際に準するのか不明ですが、こういうの(企業の内部や仕事の内容)を紹介してくれるのも映画の有難みですね。