映画評「傲慢と善良」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・萩原健太郎
ネタバレあり
名前は知っているが読んだことのない辻村深月の、ミステリー要素のある恋愛小説の映画化。
文学好きなら容易に推察できるように、ジェーン・オースティンの「高慢(自負)と偏見」が下敷きになっているところがある。
マッチング・アプリで婚活を続けてきたビール製造自営業者の青年西澤架(藤ケ谷太輔)が、大人しそうな真実(奈緒)という事務職の女性と知り合い、結婚式場を予約する間柄となる。
ところが、彼女は寿退社の送別会の直後に行方をくらまし、架は彼女の言っていたストーカーに誘拐されたことまで考えて行方を捜すうちに、行方をくらました彼女の事情と真情とに近づき、そして自分の心情に気付いていく。
というお話で、前半は架を軸に進行、後半は次第に真実に比重が傾いていく。
彼女がボランティアとして働き始めた佐賀県唐津市七山なる農村(原作では仙台)で僅かに傷ついたみかんが廃棄されるのは勿体ないとみかんのビールはできないかというアイデアが浮上、彼女のアイデアを基に関係者の誰かが架に連絡する(というのも架君は村民の言葉の端から再会を果たすまで彼女がここで働いていることを知らない)。
ここから物語は「高慢と偏見」同様一気呵成に主人公二人にとって好転していく。
現在の文学であるから、オースティンの主人公と違って架は露骨には傲慢そうな男という設定になっていないが、相手に対して “ピンと来る” いった表現をする辺りに現代人の傲慢さが顔を出す。
真実にとっては相手が格上であるが為に嘘を付いたことを、彼の女友達に見透かされたことに嫌気がさし、かつ、彼が自分に100%心を傾けていないことに傷ついて、失踪するのである。
終盤は大昔の恋愛映画もびっくりという照れてしまうメロドラマティックすぎる見せ方であるが、それにズッコケるには及ばず。僕のような経験の少ない人間に測りがたい男女の隠微な心情を丁寧に描き続けているから、この作り物めいた終盤の作劇を素直に受け止めれば良いと思う。
隠微と言えば、ボランティアで彼女は西澤真美と名乗っている。彼女の本音がここに現れているだろう。反面、関係者はうっかり者にすぎる。西澤と名乗る女性のアイデアで西澤架という青年社長が現れれば、その関係性がまず沙汰されると思うのだが。
監督は「ブルーピリオド」の萩原健太郎で、撮影監督は日下誠に変わっているが相変わらず落ち着いた見せ方をしている。
奈緒と軽トラ。
2024年日本映画 監督・萩原健太郎
ネタバレあり
名前は知っているが読んだことのない辻村深月の、ミステリー要素のある恋愛小説の映画化。
文学好きなら容易に推察できるように、ジェーン・オースティンの「高慢(自負)と偏見」が下敷きになっているところがある。
マッチング・アプリで婚活を続けてきたビール製造自営業者の青年西澤架(藤ケ谷太輔)が、大人しそうな真実(奈緒)という事務職の女性と知り合い、結婚式場を予約する間柄となる。
ところが、彼女は寿退社の送別会の直後に行方をくらまし、架は彼女の言っていたストーカーに誘拐されたことまで考えて行方を捜すうちに、行方をくらました彼女の事情と真情とに近づき、そして自分の心情に気付いていく。
というお話で、前半は架を軸に進行、後半は次第に真実に比重が傾いていく。
彼女がボランティアとして働き始めた佐賀県唐津市七山なる農村(原作では仙台)で僅かに傷ついたみかんが廃棄されるのは勿体ないとみかんのビールはできないかというアイデアが浮上、彼女のアイデアを基に関係者の誰かが架に連絡する(というのも架君は村民の言葉の端から再会を果たすまで彼女がここで働いていることを知らない)。
ここから物語は「高慢と偏見」同様一気呵成に主人公二人にとって好転していく。
現在の文学であるから、オースティンの主人公と違って架は露骨には傲慢そうな男という設定になっていないが、相手に対して “ピンと来る” いった表現をする辺りに現代人の傲慢さが顔を出す。
真実にとっては相手が格上であるが為に嘘を付いたことを、彼の女友達に見透かされたことに嫌気がさし、かつ、彼が自分に100%心を傾けていないことに傷ついて、失踪するのである。
終盤は大昔の恋愛映画もびっくりという照れてしまうメロドラマティックすぎる見せ方であるが、それにズッコケるには及ばず。僕のような経験の少ない人間に測りがたい男女の隠微な心情を丁寧に描き続けているから、この作り物めいた終盤の作劇を素直に受け止めれば良いと思う。
隠微と言えば、ボランティアで彼女は西澤真美と名乗っている。彼女の本音がここに現れているだろう。反面、関係者はうっかり者にすぎる。西澤と名乗る女性のアイデアで西澤架という青年社長が現れれば、その関係性がまず沙汰されると思うのだが。
監督は「ブルーピリオド」の萩原健太郎で、撮影監督は日下誠に変わっているが相変わらず落ち着いた見せ方をしている。
奈緒と軽トラ。
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