映画評「ディックス !! ザ・ミュージカル」

☆★(3点/10点満点中)
2023年アメリカ映画 監督ラリー・ジョーンズ
ネタバレあり

一部でA24初のミュージカルと沙汰されているが、 IMDb のデータによれば、厳密な意味での製作をしていず、ディストリビューター(配給会社)としての立場であるらしい。
 LGBTQに属するジョシュ・シャープとアーロン・ジャクスンが生み出したオフブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、自ら主演も兼ねている。

部品メーカーの二社が合併し、夫々でトップの営業成績を残していたシャープとジャクスンが競い合ううちに二人が離婚した両親に一人ずつ引き取られた双子であることを知り、お互いに成りすまして再婚させようと図る。

という前半はケストナーのお馴染みの児童小説「ふたりのロッテ」のお下劣版である。

ややこしいことに、父親ネイサン・レインが離婚後にゲイであることを自覚し、母親ミーガン・マラリーにも色々と問題があって、「ふたりのロッテ」のようにすんなりは行かない。
 しかも、共闘するうちに双子が互いに愛し合っていることに気付き、神様ボーウェン・ヤンに認められて結婚してしまう。

さすがにこれは行き過ぎて、ナンセンスにもならない。お笑いは常識に立脚するものという原則に届いていない。常識を外すのと常識以下というのは似て非なるものである。

近親相姦が法律で禁止されているのは、恐らくまだ国家なるものが成立する以前の血族社会時代にその組合せが異常な子供を生み出す確率の高いことが解り、もっと大きなコミュニティが生まれた時にそれが道徳となり、やがて法律へ進んだものと僕は考えている。
 そこに鑑みれば、同性の近親相姦は問題がないわけだが、数千年の間培われた近親相姦へのタブー意識を持つ現代人にこれができるとは思えない。

お下劣であっても深く考えれば色々な人間探求が可能かもしれない作品だが、これだけ見た目が悪いとおためごかしの印象を覚えそうだ。

今年のワースト、ほぼ決定です。

この記事へのコメント

2025年06月15日 16:50
3点、ということで、でも内容を読んで知ると、
大昔の吾妻ひでおの短編ナンセンスギャグマンガだったら、(せいぜい15ページくらいか)、描き方ではえーそんなのありかよーな笑いでまとめられたかもしれない。
しかし、オフ・ブロードウエイの舞台で、これはきつい感じが。やっぱりコメディ調なんでしょうけれども。

トランプ政権が、アメリカがやっていた途上国支援の一部を打ち切った理由の一つが、南米などでLGBTQへの理解増進のためのミュージカル上演にこんなに多額を費やしている! というのがあったのですが、もしかして、こういうのだったのでしょうか?(だったらトランプにも一理あるのでは)

LGBTQというのが、単なる性志向を表すのではなく、ある種の政治運動を言い表す名称だそうで、どうしてそうなるのか、みたいなのはあります。日本と違って、アメリカだとそうしないとほんとうに生きられなくなるのかもしれませんが。
オカピー
2025年06月15日 22:00
nesskoさん、こんにちは。

>だったらトランプにも一理あるのでは

僕も1割くらいはトランプのいら立ちが解るところがあります。
しかし、やることが極端すぎますね。
カリフォルニア州などもやり過ぎで、どうしても反動が大きくなります。
経済政策は失敗するのが目に見えていますので、余程軌道修正しない限り、共和党は次の政権を取れませんが、民主党が政権を取るとまた大きく舵を切ってしまい、その繰り返しとなり、アメリカはどんどん変な国になっていくかもしれませんね。

>アメリカだとそうしないとほんとうに生きられなくなるのかもしれませんが。

確かブラジルだと思いますが、法律でLGBTQが保護されているにもかかわらず、殺される人が相当いるようですね。
嫌いでも殺す必要はないと思いますが。
2025年06月17日 00:04
ミュージカル好きな私は、見てしまいましたヨ。
品位という面からすれば最低なもので、べつに許せなくはないですけど、笑えはしないし、面白くもない。こういうのを見た、という経験にはなります。
オカピー
2025年06月17日 21:56
ボーさん、こんにちは。

>笑えはしないし、面白くもない。

それが問題ですね。
僕は下ネタではまず笑えないんですけどね^^