映画評「ビッグ・トレイル」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1930年アメリカ映画 監督ラオール・ウォルシュ
ネタバレあり

37年後の「大西部への道」に似た時代背景を持つトーキー初期の西部劇で、ジョン・ウェインの初主演作である。
 「大西部への道」同様1840年頃にミズーリを出発してオレゴンを目指した幌馬車隊をめぐる極めて本格的な開拓模様が見られて見ごたえ十分。

ウェインがこの幌馬車隊に加わる理由は、この隊の中に同輩を殺した犯人タイロン・パワー・シニアがいたからである。
 隊に妙齢美人マーガリート・ミッチェルがいて、ギャンブラーのイアン・キースと恋の鞘当てを演ずるが、パワー・シニアが一緒にカリフォルニアを目指すことにしたこの男を殺す。
 一連の流れからウェインが犯人にされかかるも、銃を修理中などの理由でとりあえず無罪放免。その後パワー・シニアの腰巾着により殺されそうになった彼は隊を離れ、先に逃走した二人を雪道に追い、倒す。
 春になり無事に戻って来たウェインを見てマーガリートが駆け寄る。

監督はラオール・ウォルシュだが、フルショット寄りのミディアム・ショットが3カット、バスト・ショットが2か所(あるいは幕切れで二人が抱擁する1か所か)しかない。引きの画面で構成されているので突き放した感じが生まれ、かくして人間ドラマは薄味になり、開拓そのものが主題となった叙事詩という印象が強められている。意図的なのか否かは何とも言えない。

それでも、幕切れのロマンス成就の場面は、主人公の旧友を交えて進めるお話の流れも、ロング・ショット(引き)で撮り続けて一か所だけ短いバスト・ショットを入れたカメラも、素晴らしい。
 トーキー初期ということもあってのロング重視なのかもしれないが、それでも男女の再会をこうロングで撮り続けるのは珍しい。

色々出入りはあるものの、インディアン来襲や幌馬車隊が川を渡る場面のスペクタクル場面がやはり見どころと言うべきで、寄りを使わないのでさほど動的ではないが、突き放したスペクタクルぶりが却って迫力を生んでいる気がする。余り物語性を求めなければ相当楽しめる西部劇と思う。

ウェインは後年を思うとまだ先輩ゲイリー・クーパー程度の細身の体格だが、主演を張れるスター性が感じられるものの、この作品ではアピールできなかったらしい。もっとアップを多く使えば、本作でも成功したのではないか。

ロング・ショットを長回しと思っている人がいましたな。

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