映画評「エターナルメモリー」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2023年チリ=アメリカ合作映画 監督マイテ・アルベルディ
ネタバレあり

認知症を患った老母とその面倒を見る老父を様子を捉えた我が邦のドキュメンタリー「ボケますから、よろしくお願いします。~お帰りお母さん~」が心に沁みた。余りに感情的になって採点できなかった作品で、辛すぎて二度観ることができないと思う。

このチリ映画は、ボケるのが70代の夫アウグストで、面倒を見るのが妻パウリナと立場の違いはあれど、その寄り添う関係性は同じ。

かの作品と違う点は二つあって、あちらは監督が二人の娘(信友直子)でありこちらが第三者であること、あちらが無名の人々であったのに対しこちらはチリでは有名人であるということ。
 アウグストとは、「サンチャゴに雨が降る」や「愛と精霊の家」で描かれた、クーデターで成立したビノチェト軍事政権に対決姿勢を示したジャーナリストのアウグスト・ゴンゴラ。パウリナは IMDb でのフィルモグラフィーを見ても60本はあるチリの国民的女優で政権崩壊後に文化大臣にもなったというパウリナ・ウルティナ。
 彼には息子と娘がいるが、年が17歳ほど年下のパウリナとの子供ではないらしい。

夫婦の関係は二十余年に及ぶが、正式に結婚したのは数年前と紹介される。
 パウリナにとって、彼がどんなに迷惑を掛けようが構わないが、半日も自分が認識できない時にはしょげざるを得なかったであろう。それを知ったゴンゴラが自分のせいでもないのに反省し、二度と起こらないようにするという言葉を吐くところが胸に迫る。 そして “死ぬまで忘れない” と誓い合う。 これが題名の由来である。

しかし、うっかり者の僕は84分の60分を過ぎる辺りまで劇映画と信じて観ていた。
 思うに、これはなかなか凄いことで、(劇映画がドキュメンタリーに喩えられるのとは逆で)本来は誉め言葉にならないかもしれないが、大いに賞賛したい。ちょっとした叙景やカットの組み合わせがドキュメンタリーのフォーマットに雁字搦めになっていないということである。監督が劇映画っぽいドキュメンタリー「83歳のやさしいスパイ」を作ったマイテ・アルベルディと知れば、頷けるものがある。

母方・父方を問わず、血族に癌で死んだ人もいなければ認知症になった人もいない。この二つの病気に関してはならない自信があるけれど、先週コロナに罹患したらしい。今のところちょっとした違和感だけだけど。

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