映画評「暁の偵察」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1930年アメリカ映画 監督ハワード・ホークス
ネタバレあり
「西部戦線異状なし」(1930年)を持ち出すまでもなく、トーキー初期から(厳密にはサイレント末期から)アメリカは素晴らしい戦争映画を作り出していた。ハワード・ホークスのトーキー第一作たるこの作品もその数に入れなければならない。
戦前の映画も相当観ているが、何と初鑑賞ですよ。プライムビデオのパブリック・ドメイン枠映画の画質は相変わらず良くないが、それでも画面上の凄味は充分解って楽しい時間を過ごさせてもらった。
西部戦線の英国飛行隊基地。司令官ニール・ハミルトンは部下たちを送り出して多く死なせてしまったことに忸怩たる思いを抱いているが、配下の少尉リチャード・バーセルメスがそれを心からは理解してくれないことに苛立つ。結局成果を上げられないことを以って彼は左遷させられ、バーセルメスがハミルトンの苦悩を引き継ぐことになる。
今度は飛行隊で一番優秀なダグラス・フェアバンクス・ジュニアが、赴任したばかりの弟を死なせたことによりバーセルメスを同じように責めると共に、自ら単独作戦の任務を負うことを宣言する。が、親友でもあるバーセルメスは彼を酒に付き合わせて泥酔させ、その隙に自ら出撃していくのである。
友情と責任はこう描くべし。近年の青春映画の声高な友情のいかに甘っとろいかということがよく分かるというものだ。
バーセルメスが孤軍奮闘するシークエンスが素晴らしい。
大体において、本作の空中戦のスクリーンプロセスが合成感を殆ど覚えさせず極めて上質で、加えて別の飛行機が横切っていくショットなどディテイルも抜群に秀逸である。車のスクリーンプロセスが少々甘いのとは極めて対照的だ。
また、彼の落とした爆弾により建物が破壊され破片が飛行機に近づいてくる真俯瞰ショットには度肝を抜かれる。ここを筆頭に当時の映画屋の技術に驚くばかりで、ドイツ軍兵士のいるやぐらが二回ほど爆破されるショットの美術にも感心させられる。
CGなら遥かに上等に見せることができるが、所詮は絵であって、映画屋の思いにワクワクさせられることはない。
ホークスを語る時に案外出て来ない作品。しかし、もっと語られて良い秀作だ。
1930年アメリカ映画 監督ハワード・ホークス
ネタバレあり
「西部戦線異状なし」(1930年)を持ち出すまでもなく、トーキー初期から(厳密にはサイレント末期から)アメリカは素晴らしい戦争映画を作り出していた。ハワード・ホークスのトーキー第一作たるこの作品もその数に入れなければならない。
戦前の映画も相当観ているが、何と初鑑賞ですよ。プライムビデオのパブリック・ドメイン枠映画の画質は相変わらず良くないが、それでも画面上の凄味は充分解って楽しい時間を過ごさせてもらった。
西部戦線の英国飛行隊基地。司令官ニール・ハミルトンは部下たちを送り出して多く死なせてしまったことに忸怩たる思いを抱いているが、配下の少尉リチャード・バーセルメスがそれを心からは理解してくれないことに苛立つ。結局成果を上げられないことを以って彼は左遷させられ、バーセルメスがハミルトンの苦悩を引き継ぐことになる。
今度は飛行隊で一番優秀なダグラス・フェアバンクス・ジュニアが、赴任したばかりの弟を死なせたことによりバーセルメスを同じように責めると共に、自ら単独作戦の任務を負うことを宣言する。が、親友でもあるバーセルメスは彼を酒に付き合わせて泥酔させ、その隙に自ら出撃していくのである。
友情と責任はこう描くべし。近年の青春映画の声高な友情のいかに甘っとろいかということがよく分かるというものだ。
バーセルメスが孤軍奮闘するシークエンスが素晴らしい。
大体において、本作の空中戦のスクリーンプロセスが合成感を殆ど覚えさせず極めて上質で、加えて別の飛行機が横切っていくショットなどディテイルも抜群に秀逸である。車のスクリーンプロセスが少々甘いのとは極めて対照的だ。
また、彼の落とした爆弾により建物が破壊され破片が飛行機に近づいてくる真俯瞰ショットには度肝を抜かれる。ここを筆頭に当時の映画屋の技術に驚くばかりで、ドイツ軍兵士のいるやぐらが二回ほど爆破されるショットの美術にも感心させられる。
CGなら遥かに上等に見せることができるが、所詮は絵であって、映画屋の思いにワクワクさせられることはない。
ホークスを語る時に案外出て来ない作品。しかし、もっと語られて良い秀作だ。
この記事へのコメント
>ホークスは私にとってはマリリンのミュージカルコメディ「紳士は金髪がお好き」から入ったといえる監督
なるほど。
僕は多分「リオ・ブラボー」から入ってその後も西部劇が続き、寧ろ男性映画の監督とイメージを持っていますが、一時はコメディを多く撮っていて、確かに幅広い作品をカヴァーしますね。
尊敬すべき大監督。50年代にヌーヴェル・ヴァーグの連中が持ち上げた監督の一人ですが、この大監督に関しては却って失礼かもしれないと思ったりもします。