古典ときどき現代文学:読書録2025年秋号

 まだまだ暑いですが、さすがに10月ともなると一時に比べれば大分過ごしやすい。朝などは少し寒く、以前のように下着だけというわけには参りませんね。

 7月末にこの4年間病院で頻繁に会ってよく話をしてきた兄が亡くなりがっかり。それだけが原因ではないものの、この3か月は精神状態が悪く、読書に集中できず、為にうまくコメントがまとめられない作品が多くなった気がします。半分は言い訳ですが。因みに、まだ回復途上です。

 さて、このところの読書傾向でミステリーが相対的に多めです。アガサ・クリスティの古い作品は代表作でなくても良きかな。日本の評判作も読みました。スティーヴン・キングは何と初体験。
 ザミャーチンの作品はまあSFなのでしょう。ソ連は結構SF作家を輩出していますね。

 純文学では、海外の大御所が復活。このところ数作ずつ読んでいた、19世紀末から20世紀の女性作家も幾つか。芥川賞シリーズも継続中で、2006年まで来ました。日本の大御所はゼロ。

 大古典は漢籍の「蒙求(もうぎゅう)」。日本のものでは文楽/浄瑠璃の台本を久しぶりに読みました。有名なところはこれで全て読み終えたはずですので、もう出て来ないでしょう。

 文学以外では、文化関連が二作で、社会学が一つ(著者は友人の娘さん)。薄い本なら文学以外ももっと増やせますね。

 前口上はこのくらいにしましょう。それでは、リストをご笑覧ください。


***** 記 *****


ウィリアム・ゴドウィン
「ケイレブ・ウィリアムズ」
★★★作者は「フランケンシュタイン」を書いたメアリー・シェリーの父親である。18世紀末に書かれたミステリーの元祖のようなリベラル的啓蒙小説の趣きで、身分の違いだけで善悪が決められてしまう不条理が厳然とした現実であった時代を批判している。敵対する男を殺したであろう郷士に仕える若者ケイレブがその証拠を掴む為に火事の際に嗅ぎ回ったことを泥棒であると咎められ、獄に送り込まれ、逃げても何をしても結局その身分故に信じられることがない。ところが、極悪ではないその主人はどこかで苦しみを抱き続け窶れ果て、裁判で立派な発言をした青年に対し全ての罪を認める、というお話。構成には16世紀以来西欧の伝統となっていた悪漢小説の伝統も感じる。


夕木 春央
「方舟」
★★★★若者に人気のクローズド・サークルもので、謎の地下施設に10人が閉じ込められる発端は近年の邦画サスペンスでやたらに見せられたようなものにつき青臭く【可】。語り手をワトスンとするホームズたる従兄が連続殺人の犯人と動機を解明する大団円近くで【良】となり、その後の幕切れで【優】となる。この幕切れで(一種の叙述トリックも手伝って)度肝を抜かれる人が多いようで、いずれ映画化されそうな気がする。しかし、後味が悪く、好きな作品とは言い難い。10年後くらいにまた文春がまたミステリー・ベスト100を選出する時にはきっと入って来るだろう。


ケイト・ショパン
「目覚め」
★★★★僅か130年前にはこの程度で禁書扱いになったのだ。並みの人妻だが絵を描くことに生きがいを感じていたヒロインが、知り合った魅力的な男に触発され、自由の精神に目覚めてその青年に傾倒した末に行き詰まって海で溺死してしまう。不貞と自殺がキリスト教原理主義的に認められないこととは言え、当時の反応は余りに古い。確かにこの150年くらいとりわけ戦後80年の間に欧米は信じられないくらい、自由思想に傾いてきたことが理解できる。ここへ来て反動が出ているが、特に反動が極端化した国家は最終的にひどい目に遭うのが目に見えている。今はどの国もその点で我慢のしどころだ。

「デズィレの赤ちゃん」
★★★鮮やかな掌編小説。白人の夫との間に生んだ子供が浅黒い肌の色をしていたので、クォーターを疑われ、赤ん坊と共に入り江に消えてしまうのだが、その後妻の遺品を処分する時に彼は自分こそクォーターであったことを知らされる。断ち切るように、ハーフである彼の母親の夫への手紙で終わって彼の反応が解らないからこそ却って強い印象を残す。


エフゲニー・ザミャーチン
「われら」
★★★このところ任意に選んでいる作品に偶然にもディストピアを扱っているものが多い。ソ連初期に書かれた本作は当然ボリシェヴィキ体制への憂いを示したもので、当然彼の憂い=監視社会等=そのものを体現するかのように、終戦後に西側により発見され、現在のロシアよりぐっと開かれた社会となっていたソ連末期になって漸く発表された。ディストピア小説の中でSF度はかなり高い。


京極 夏彦
「絡新婦の理」
★★★★★ “理”は読めるが、“絡新婦(じょろうぐも)”は読めまへんな。 京極先生(ちとふざけて言っておるデス)には色々と勉強させて貰っています。別と思われた二系統の連続殺人が蜘蛛の巣のように経糸と緯糸を辿る形で結び付く本格ミステリー部分もなかなか面白いのだが、やはり女系社会と男系社会をめぐる京極堂の説明が非常に頗る甚だとても至極大変面白い。ここだけを独立して読んでも良いくらいで、吉本隆明「共同幻想論」と絡み合わせたくなる。伝奇的ムードが期待したほどなくその点は多少不満ではあるものの、いつも通り京極堂が出て来ると凄いことになる。日本人特に全体主義右派の連中は、リベラルが近年欧米から移入しようとしてきた性的少数者に対する寛容がかつて日本にあったこと、そして彼らが日本の伝統と思っている家父長主義的思想が実は欧米由来であることを知らない。リベラルが欧米に傾倒し過ぎていると論難する右派こそ、明治以来欧米に傾倒し過ぎているのだ。ベネディクトも「菊と刀」において明治政府が日本の伝統を尽く排除したと言っている。


浅川 哲也
「日本語の歴史」
★★★奈良時代から平安時代の音韻の変化が興味深く、母音で終わる日本語のような言語を開音節言語という部分が面白い。その他、最近の言語の問題点諸々への言及が面白い。“ちげーよ” が生まれた過程に関する推測は僕の推測(銭形平次などの江戸弁 “ぢげえねえ” からの ”ねえ” 脱落説)とは違うものの、 名詞⇒形容詞であるという解釈は同じ。 ご指摘通り音韻的に “違う” からは “ちげえ” は生まれない。


ジェイン・オースティン
「マンスフィールド・パーク」
★★★18世紀までの英国の小説は大体書簡体小説ばかりだったから、オースティンのような現在の小説と変わらないもの(自由間接話法)は結構珍しかった。昔のものを読む場合はその辺を承知しないと、適切な評価を下すことがなかなかできない。子沢山の家の少女ファニー・プライスが伯母の嫁ぎ先(マンスフィールド・パーク)に一時預かりになり、その家や交流相手に色々と翻弄される。というお話で、例によって心理の説明などが詳細過ぎて現在の小説よりは冗長に感じるが、恐らくこの手はゆっくり丁寧に読んだ方が面白く感じられるはずだ。映画より長たらしいTVシリーズが案外退屈しないことに通じると思う。


スティーヴン・キング
「キャリー」
★★★★キング初読み。サイコキネシスを扱った出世作で二度の劇場用映画も見ているが、映画化が原作を大きく変えていないことが理解できる。ただ、ミステリー的な構成になっているので、映画を観ていなければもっと面白く読めたような気がしますね。


伊藤 たかみ
「八月の路上に捨てる」
★★★第135回(2006年上期)芥川賞受賞作。同賞受賞作に水配送に従事する青年の話があったが、こちらは自動販売機の補充に従事する男女コンビのお話。女性は離婚女性で、青年は離婚届を出す直前という設定だ。夫婦とは男女関係とは何かを考えさせる力の抜けた中編で、好き嫌いは足し算はできず、掛け算のみができる、という一行は箴言と思う。

「貝からみる風景」
★★★上記作品をタイトルにした単行本に収録された短編。スーパーの“お客様の声”の同一人物の投書をめぐる小咄。投書は世にどうも存在しないお菓子が見当たらないという不満が少しずつ文面を変えて連続投稿されるのだが、既婚者である主人公はそれに興味を持って想像力をめぐらし、同じお菓子を巡る投書をしてみる。カジュアルな夫婦の姿も浮かび上がるが、人の考えを想像してみるというのは大事なことだ。軽味(かろみ)が心地よい小説と言うべし。


青山 七重
「ひとり日和」
★★★★第136回(2006年下期)芥川賞受賞作。軽味と言えば、この作品にこそ強く感じる。東京に出て来たヒロイン千寿が、親類の大叔母吟子の家に寓居することになり、やがて出ていく。四季を通じて描出されるエッセイのようなムードで進む。ヒロインにちょっとした盗癖があるなど必ずしも明るい小説ではないが、軽味のおかげで爽快感すら覚えつつ読める。


モーリス・ルブラン
「カリオストロ伯爵夫人」(再)
★★★★★初めて読んだなら★5つは進呈しなかったであろうが、ロマンスとミステリーと大デュマに通ずる冒険とが絡み合って今でも面白いことは面白い。僕が11歳の時に学級図書で池田宣政(南洋一郎の別名義)訳で読んだ「七つの星の謎」のタイトル版にいたく耽溺・陶酔し、当時読んだルパン・シリーズのうちのベスト1だった。「怪盗紳士」「奇岩城」「水晶栓」「虎の牙」も僕好みだったが、とにかく知識がないことが少年の想像力を掻き立ててもう参ったの一言なのであった。南洋一郎は自由訳で創作も加えるのでマニアックなルパン・ファンには嫌う人も多いが、池田名義では原作にかなり忠実かつ小学校高学年に読みやすく編成されたシリーズだったので、初めてルパンに触れるのにはベストと考える。しかし、国会図書館以外ではなかなか見当たらない。現在読んでいる偕成社版は児童向けと言われているも、結構難しい単語が出て来るので、実際には高校生レベルだ。さすがに大人向けの創元社などのものよりは良い。出版順では後期に属するルパン・シリーズのまき直しの一編で、ルパンとしての最初の事件と目されるものだ。ルパン史上一番古い事件は第一短編集「怪盗紳士ルパン」に収められた6歳の時の窃盗「王妃の首飾り」だが、別カウントとするのが妥当。カリオストロ伯爵夫人を名乗る大悪女ジョゼフィーヌとルパン最初の妻クラリスという対照的な二人の美女の存在は僕好み。宮崎駿の「ルパン三世 カリオストロの城」がこの作品からの着想であることは言うまでもない。

「緑の目の令嬢」(再)
★★★★何と、これも「カリオストロの城」の元ネタと判明。少年時代に読んだがストーリーを全く失念していた。他方、僕の記憶の中で、ルパンの乳母ヴィクトワールとフランスの地方色が強く結び付いた作品があったが、それが本作であったと今回の再読で判明した。こちらのヒロインは犯罪者と思われたが誤解であったと気づき、その美貌に惹かれたルパンを喜ばせる。序盤二人の美女を見てどちらを追いかけようかと迷う序盤からルブランのストーリーテリングは巧みで、冒険小説好きには読む価値ありです。


ジェームズ・ボールドウィン
「山にのぼりて告げよ」
★★★タイトルはサイモンとガーファンクルがデビュー・アルバムで歌った頌歌(一種のゴスペル)から取られている。一人の黒人少年が教会で神への帰依を示すまでの一日の出来事の間に、自分の関わる重要な三人の物語が回想される。近代の聖書的神話という印象もある。かなり映画的な構成で、1953年に発表され、1985年に映画化されているが、本邦未公開で未見。


並木 宗輔
「一谷嫩軍記」
★文楽の台本でござる。抄録につき正確な評価不可。今の日本で全てが読める市販本はないらしい。以下「絵本太功記」まで同じ。一ノ谷の合戦における有名な平敦盛と熊谷直実の逸話に取材するが、史実ではない。ここでは、直実は自分の子供を殺して敦盛と称したのである。敦盛は後白河院のご落胤であったから、というお話だが、史実の敦盛はご落胤ではない。それほど遠くない先祖に天皇はいますがね。


竹本 三郎兵衛、豊竹 応律
「艶容女舞衣」
★“はですがたおんなまいぎぬ” と読む。 前半は当て字も甚だしく読めませんな。心中ものの裏話で、捨てられた妻はそれでも夫を思う。


菅 専助、若竹 笛躬
「摂州合邦辻」
★息子と継母に恋愛感情があり、その為に息子・俊徳丸は継母の細工でらい病を患う。ちょっとした日本版「オイディプス」であろうか。オイディプスを実母と交わったことを知って自らの目を抉り出して放浪するが、こちらは病気で失明した後継母と再会する。


近松 柳、近松 湖水軒、近松 千葉軒
「絵本太功記」
★文楽や歌舞伎の時代物では実名は出て来ないものの、本作の武智光秀はかなり本当の名前に近い。光秀を中心に据えた「太閤記」で、その心情を綴る。


ヘンリー・ジェイムズ
「メイジーの知ったこと」
★★★★十年ほど前に見た秀作映画「メイジーの瞳」の原作。今の欧米では当たり前になった離婚した夫婦の間で子供が行き来をする(但し半年交代)という報道を読んでジェイムズが思いついたらしい。本作の面白さは、離婚した父も母もそれぞれに再婚するが、その相手にも満足できずに新しい愛人をこしらえてまだ幼い娘メイジーに関心がないことにある。彼女に関心を持つのは再婚相手の男女で、映画ではこの二人を結び付けてメイジーに選ばせるという最も理想的なエンディングを持ってきた。小説はそこまでの結論を用意せず、どうなるともつかない終わり方をしている。ミーハー的には映画を買いますが。


トーマス・ハーディ
「遥か群衆を離れて」
★★★★大昔観た長尺の映画版は忘却の彼方。戦場が出てきたような記憶があったが、若い女地主のヒロインと正式に結婚する男が不良軍人というだけでした。初老の男と元小地主がそれぞれに彼女を思慕するも、ヒロインは一番してはいけない相手と結婚するのだ。待てば海路の日和ありといった内容だろうか。純文学ロマンス。僕の好きなタイプだが、少々長い。


連城 三紀彦
「戻り川心中」
★★★★★5編の長めの短編を収めた短編集として評価する。いずれも大正時代から昭和初期を時代背景として描かれた人情絡みのミステリーで、この小説群の重さに通ずるのは松本清張の「天城越え」だろうか。そこにはお金儲けや異性の独占といった強欲とは違う人間存在自体が引き起こす事件の数々がある。「藤の香」は代書屋を通して花街の女性の悲劇性が浮かび上がる。「桔梗の宿」も花街絡みの悲劇。本作で唯一本物の探偵(刑事)が事件の真相に近づく。「桐の柩」ではチンピラが親分を殺す。この事件の犯人は語り手であるが、彼に親分殺しを頼む兄貴の心理が謎の対象なのだ。着想に唸った。「白蓮の寺」は母親の子を思う気持ちにじーんとさせられる。この小説が書かれた時代の本格推理によく扱われたトリックを使った秀作。「戻り川心中」は太宰治よろしく心中未遂を繰り返す歌人をテーマに伝記小説を書いていた作家が探偵役として何故女性たちが死ななければならなかったのか謎を解く。着想も切なさも抜群。歌人がナルシストなどと言っているうちはまだまだ人間観が甘い。


川野 由起
「オーバードーズ」
★★★★我が親友の娘さんの著書である。先日電話を掛けた時に嬉しそうに“娘が本を出した”と言っていたので、名前から探し当てた。新聞で連載した記事をまとめたものとの由。何年か前アメリカにおけるオーヴァードーズを扱った映画を幾つか観たが、いつの間にか日本でもそれに近い状態になっていたのだ。映画では親が子供の状況を改善しようと奔走するケースが多かったが、実際には親が子供たちをオーヴァードーズに向かわせることが多そうだ。家庭環境に恵まれぬ証言者の声には思わず涙が出てきた。男性が違法薬物、女性が合法薬品の大量摂取という違いがあるという箇所にも納得。


アガサ・クリスティー
「青列車の秘密」
★★★★江戸川乱歩がクリスティーは初期の高い水準を戦後も維持していると感心していた記憶があるが、やはり戦前の作品が楽しい。ポワロもの。青い列車の中で富豪元令嬢(但し夫は破産状態)が殺され、その直前に彼女と会食をした成金美人に絡んでくる三人の男性のうちの誰かが犯人らしい、というミステリー。余り世評は良くないものの、シンプルなシチュエーション故に線の太いお話になっているのが100年前のミステリーらしくてよろし。


李 瀚
「蒙求」
★★★唐時代に成立した列伝集。着想的に「プルターク英雄伝」に似て、同種の性格や功績などを巡って二人の人物を並べて語る。但し、扱う人数が600人近くに及び、一人一人の分量は非常に少ない。昔の日本では「蛍の光、窓の雪」や漱石などに繋がる故事を原典ではなくこの書物から知る人が多かったらしい。面白かったのは晋の恵帝の発言。ルソーの貴族女性(マリー・アントワネットとよく誤解される)の【パン代わりのケーキ】発言と同工異曲なのだ。


中尾 佐助
「栽培植物と農耕の起源」
★★★★文化人類学の著作。日本は照葉樹林文化として始まり、やがてサバンナ由来の雑穀文化が入り、そして水稲などが定着した。日本についてのみ乱暴にまとめればこんな感じだが、稲作がアフリカにあることを日本人が意外に思うのは稲作=東洋という固定観念に縛られているからにほかならない。多年性植物が栽培植物にならないのも当たり前と思いつつ、改めて説明されれば面白い。一年生植物は便利である一方、安定して繁殖しないからこそ人間が栽培する必要があったということになる。精神的調子が悪い時に読んだので、うまくまとめられず、悪しからず。


ヘルマン・ヘッセ
「荒野の狼」
★★ヘッセは若い時好きな作家だったから、題名だけはよく知っていたものの、この作品を今まで読まなかったのはある意味読書勘が働いた結果のような気がする。自殺願望のある主人公はヘッセの厭世的な心情を投影した人物造形で、僕が現在抱いている世界観・人間観に近いものがあって共鳴できる部分が多い反面、作品としては相当とっちらかってい、後半は事実上の幻想小説になる。


ゾラ・ニール・ハーストン
「彼らの目は神を見ていた」
★★★1/4白人の血が混じっていて肌の色が明るく髪も白人のように長いヒロインの、言わば恋愛遍歴。その過程で、女性であること、混血であることが生む様々な人々からの差別が浮かび上がってくるが、彼女はある意味鈍感力を発揮して屈せず、たくましく自己実現を果たしていく。フェミニズム小説とも、男性黒人作家の批判的なものとも違う、軽妙さが印象深い。それが故に真に評価されたのは彼女の救貧院での死から大分経ってからのことらしい。マジック・リアリズムのムードがあるかも。

この記事へのコメント

モカ
2025年10月01日 16:52
こんにちは。

 ☆「方舟」
>若者に人気のクローズド・サークルもので、
>発端は近年の邦画サスペンスでやたらに見せられたようなものにつき青臭く

 邦画には疎いのでわかりませんが、確かによくありそうですね。

しかし、ここまで荒唐無稽な設定にすると旧約聖書のノアさんもびっくりなので、これはもう寓話として読む方向にいってしまいますね。あの大きな岩の出現も天の岩戸みたいで面白かったです。
確かに後味はよろしくはありませんが、忘れられない結末でした。それは多分読んだこちらに考えさせる重たい宿題を投げられているからかもしれませんね。

☆「山にのぼりて告げよ」
  さらっと歌っているPPMバージョンも良いですが、The Staple Singers がクリスマスソング集の中で歌っているのがソウルフルでお気に入りです。

☆ 中尾佐助
 一緒に読みましょう、などと誘っておいてまだ読んでいません。申し訳ないです!
最近ミステリー沼にはまってしまいまして…
最近人から聞いて知ったのですが、中尾先生はうちから車で10分程の所にお住まいだったようで、今もお孫さんが住んでおられるようです。大きな敷地の外からしか見たことがありませんが ←(当たり前やけど) 結構樹木が多そうで、もののけ姫にも影響を与えた照葉樹林文化論を唱えた先生の家っぽい感じがしました。

60s kidsは「荒野の狼」と言えばステッペンウルフの “ Born To Be Wild “ で決まりです。 ^^


>この3か月は精神状態が悪く

生きていると色々な事がありますね。私もここ3年くらい心に重いものを抱えて生きております。まぁ良いことも悪いことも引っくるめた人生かな、と達観する様に日々前向きにヘラヘラ笑って生きていこうと思っています。泣いても笑てももうあとちょっとや!って感じです。 


かずき
2025年10月01日 16:55
オカピーさん、こんにちは。
お兄様の件、心よりお悔やみ申し上げます。
オカピーさんの心が少しでも回復に向かうようお祈りしてます。

「絡新婦の理」はやはり星5つ!
抜群に面白く、寝る間も惜しんで読み耽った数少ない小説です。
シリーズ最厚(笑)のページ数でありながら、京極堂が動き出してからは本当に凄くて、蜘蛛の糸に絡め取られるように一気に読みました。
最後のページから、また最初のページに戻って読んだ、あの時の思い出は忘れられません。

現在、百鬼夜行シリーズの長編は10作品ありますが、私が読んだのは、次の連作「塗仏の宴 宴の支度」「塗仏の宴 宴の始末」までなんです。
読んだのは随分前なのでうろ覚えなのもありますが、この作品、完成度の高かった初期五作に比べると、だいぶ格が落ちるように感じてしまったんですよね。
それ以降のシリーズは読んでないのですが、もしオカピーさんが読まれたなら、是非感想をお聞きしたいです。

最近ミステリーをよく読んでおられるオカピーさんに、新しいお勧め作品を考えてたのですが、西澤保彦「七回死んだ男」なんてどうでしょう?
私にとって、SF✕ミステリーと言えばこの作品です。
そちらを読んで気に入ったなら「人格転移の殺人」もお勧めします。
2025年10月01日 17:57
スティーブン・キング『キャリー』は、新聞記事を挿入したりして、いま流行りのモキュメンタリー風に仕立ててありましたね。

モキュメンタリーといえば、コロナ禍に話題になった、ダニエル・デフォー『ペスト』も、モキュメンタリーでした。ネット上のレヴューは、ドキュメンタリーと誤解したまま読んだ方が感想を書いているのがありましたが、それくらいモキュメンタリーとしてよくできていたということでしょうか。
オカピー
2025年10月01日 21:50
モカさん、こんにちは。

> ☆「方舟」
>>発端は近年の邦画サスペンスでやたらに見せられたようなものにつき青臭
>邦画には疎いのでわかりませんが、確かによくありそうですね。

本当に多いんですよ。
今年も何本か観ました。

>それは多分読んだこちらに考えさせる重たい宿題を投げられているからかもしれませんね。

僕は単純に“後味わりい”で終わりましたね。
着想には脱帽でした。

>☆「山にのぼりて告げよ」
>さらっと歌っているPPMバージョンも良いですが、The Staple Singers がクリスマスソング集の中で歌っているのがソウルフルでお気に入りです。

同じ歌でも随分違いますよねえ。
僕は専らS&Gの爽やかなコーラス版の印象が強い。

>☆中尾佐助
>照葉樹林文化論を唱えた先生の家っぽい感じがしました。

良いですね。

我が家から車で10分くらい移動したところに、新島襄が作ったキリスト教会をベースにした新島学園なる学校があります。

>60s kidsは「荒野の狼」と言えばステッペンウルフの “ Born To Be Wild “ で決まりです。 ^^

まあそうですけどね。いつ聴いても格好良い。

>まぁ良いことも悪いことも引っくるめた人生かな、と達観する様に日々前向きにヘラヘラ笑って生きていこうと思っています。

僕もそうできるよう努めていますが、神経質に生まれついていまして。
反面、人と話す時は一方的にべらべら話します。先週も、石川県からの友人が駅に着くまで2時間あるというので、銀行の若いお姉ちゃん相手に1時間半あれやこれや(70%は仕事と全く関係ない話を)喋るという、カス・ハラもどきをしてきました^^;
客観視すると、最近の僕は一種の異常心理下にありますよ。
オカピー
2025年10月01日 22:11
かずきさん、こんにちは。

>お兄様の件、心よりお悔やみ申し上げます。

有難うございます。
皮肉にも、脳梗塞に倒れ、また血液の病気のために輸血を毎週することになった結果、以前より話す機会と時間が増えたんですよ。
僕の訳の分からない理屈っぽい話が兄の慰めになったとしたら良いと思います。

>「絡新婦の理」はやはり星5つ!

最初の2作を映画化するなら、これもやってほしかったですね。

>百鬼夜行シリーズの長編は10作品ありますが
>だいぶ格が落ちるように感じてしまった

5作でも徐々に若者向けになって来た感じはありました。文体自体は初期のほうが良いと思います。

>西澤保彦「七回死んだ男」

面白そうですね。図書館にもありました。
007は本当に二度死なずに、二度生きるのです(笑)。
猫は9回生きますが、この諺を使ったミステリーもありそうな気がしますね。
オカピー
2025年10月01日 22:19
nesskoさん、こんにちは。

>スティーブン・キング『キャリー』は、新聞記事を挿入したりして

こういうスタイルだったとは全く知らず、結構ビックリしました。

>ダニエル・デフォー『ペスト』も、モキュメンタリーでした。

未読ですが、その事実は知っています。
「100分de名著」でやっていたかな?
mirage
2025年10月03日 10:29
訳者あとがきにもある通り、「自負と偏見」や「エマ」などの作品よりも生真面目な作品ですね。
生真面目というよりも地味といった方が相応しいかもしれません。
それは主人公のファニーが決して出しゃばろうとしない内気で臆病な少女だから。
そして、ファニーの良き保護者となる従兄のエドマンドも堅実な性格だから。あまりにそつがない2人なので、2人と親しくなるクロフォード兄妹の方が、欠点だらけでも遥かに人間的に感じられる読者も多いのではないかと思いますし、ノリス伯母の徹底した意地悪ぶりの方がリアリティがあるかもしれません。
私が一番気に入ったのは、厳格ながらも愛情深いサー・トーマスでした。
しかし、あまりに周囲に注目されず、言わば格下扱いされ続けることが、ファニーの物事を公平に客観的に見る目を育てていくんですね。
彼女が嫌いな男から求婚され、周囲の誰1人としてそれが幸せな結婚と信じて疑わないところが見せ場でしょうね。
孤立しながらも、恩知らずと思われることを恐れながらも、意思を通そうとする彼女がとても健気でね。
後々、ファニーのその意思が正しかったことが判明する場面などは、溜飲が下がります。
翻訳がやや固いこともあり、序盤はやや冗長に感じられてしまったのですが、話が流れに乗ってくると非常に面白いですね。
ただ、この本を読むまで知らなかったのですが、たとえばサー・トーマスの長男は「ミスター・バートラム」、長女は「ミス・バートラム」と呼ばれ、次男のエドマンドは「ミスター・エドマンド・バートラム」、次女のジュリアは「ミス・ジュリア・バートラム」と名前付きで呼ばれるのですね。
その辺りを知らないと読んでいて多少混乱するので、もう少し親切な説明があっても良かったのではないかと思います。
mirage
2025年10月03日 10:34
こんにちは、オカピーさん。

先ほどコメントしたのは、ジェイン・オースティンの「マンスフィールド・パーク」についてでした。
コメントの対象作品名が洩れていましたので、補足させていただきました。
mirage
2025年10月03日 10:48
こんにちは、オカピーさん。

モーリス・ルブランの「カリオストロ伯爵夫人」について、コメント致します。

この作品は、20歳の頃のアルセーヌ・ルパンの物語で、いわばルパンの最初の大仕事の物語ですね。
しかし「怪盗紳士ルパン」の中に収められた「アンベール夫人の金庫」では、「将来の栄光を約束されたこの名前は、アンベール氏を助けた恩人のために作り出されたものだった」とあり、ルパンが自分で考えた名前のように書かれていますし、「王妃の首飾り」では、子供時代のルパンがラウール・ダンドレジーという名前で登場しています。
しかし、この作品では、亡き父から譲り受けた本名であるように書かれています。ダンドレジーの名前は、母の結婚前の名前ですね。

恋多きルパンの面影は、この作品からも見ることができます。
ルパンは清純な男爵令嬢クラリスに惹かれながらも、妖艶な美女カリオストロ夫人にも心を奪われるという惚れっぽさは、いかにもルパンらしいところですね。

しかし、クラリスを一度は泣かせつつも、後半で危機に陥ったクラリスを何とか救い出そうとするところもまた、ルパンらしいところ。
まだまだ若いだけに、百戦錬磨といった感のあるカリオストロ夫人にまんまとしてやられる場面もあるのですが、その詰めの甘い部分も含めて魅力的ですね。

肝心のカリオストロ伯爵夫人が、今ひとつ魅力的に感じられず、伯爵夫人のルパンに対する思いにも、今ひとつ信憑性を感じられなかったのが少し残念でしたが、何十年何百年経っても年を取らないカリオストロ夫人の謎、そして、隠された宝物の謎が、好敵手同士のスポーツの試合のような競争に絡んで描かれていて、とても面白かったですね。
mirage
2025年10月03日 11:08
こんにちは、オカピーさん。

私の大好きな作家・連城三紀彦さんの「戻り川心中」について、コメント致します。

「戻り川心中」は、放蕩の歌人の死の真相を妖しく描いた耽美的な作品ですね。
「世の中は行きつ戻りつ戻り川水の流れに抗ふあたはず」に見られる戻り川への執着、「汽笛の音は早遠かりき幾度もふり返りては踏む死出への影」と、情死行の中で待ち焦がれた人は誰だったのか?

男の強烈な執着心と道連れにされる女の悲哀を描き上げた、著者の描写力に改めて陶酔させられます。
殺人や心中といった事件には、体内の深く暗い場所に沈む得体の知れない何かが必ず、少なからず絡んでいるに違いないと思います。

著者の作品は、得体の知れない何かの雰囲気をゾクゾクするほど耽美的に描いていて、実に凄いですね。
この作品は、連城マジックが冴えわたる、史上屈指の美しい本格ミステリだと思います。

愛人と心中に失敗した挙げ句に自死した、天才歌人・苑田岳葉の幾重もの秘密を描き出していて、真相が暴露された結果、物語の光景が美しく哀しく反転するのも特徴ですね。

それでいて、流麗な文章は、トリックの人工性を覆い隠し、むしろ、その裏側に潜んだ、哀しい思いや報われぬ愛情を際立たせていると思います。
モカ
2025年10月03日 12:43
こんにちは。

>新島襄が作ったキリスト教会をベースにした新島学園なる学校があります。

新島襄のルーツは群馬県だったのですね。内村鑑三のルーツが群馬県とは知っていたのに… 新島先生の事は忘れてました。
 そう言えば「良心の全身に充満したる」何たらかんたらと彫った石碑の拓本をとったことを思い出しました。
心掛けが悪いので未だに良心はスカスカなままですが… (>_<)

アガサクリスティを読むとホッとしますね。ジェインオースティンもクリスティも人間観察力があってそれを少しの皮肉を込めながらもユーモラスに表現してくれますね。大英帝国の余裕というか底力? 
オカピー
2025年10月03日 22:07
mirageさん、こんにちは。

>サー・トーマスの長男は「ミスター・バートラム」

南アフリカからの顧客を迎えた時、彼にMr. XXと言ったら、“Mr.XXは父のことだ”と言われましたのを思い出します。それに似た感覚でしょうね。


>「カリオストロ伯爵夫人」
>亡き父から譲り受けた本名であるように書かれています。ダンドレジーの名前は、母の結婚前の名前ですね。

そうですね。
とにかく、少年時代の僕にとって、これほど面白い話はなかったです。

>「戻り川心中」
>流麗な文章は、トリックの人工性を覆い隠し、むしろ、その裏側に潜んだ、哀しい思いや報われぬ愛情を際立たせていると思います。

僕の限られた文才ではこの作品の素晴らしさは表現できません。それが一番の誉め言葉でしょうか。
オカピー
2025年10月03日 22:13
モカさん、こんにちは。

>新島襄のルーツは群馬県だったのですね。

そうなんです。
内村鑑三もいて、明治時代、群馬県はキリスト教布教のベースの土地だったんですねえ。
その割に周囲にキリスト教徒が少ないじゃん、と子供時代の僕は思ったものですが、実は我が集落にも結構いたようです。新興宗教のように目立つ行為をしないので分からなかったようです。