映画評「ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2023年イギリス=アメリカ合作映画 監督カリム・アイヌーズ
ネタバレあり

童話「青髭」のモデルと言われることもあるヘンリー8世は妻たちを次々と処刑などして失い、6番目の妻になったのが本作のヒロイン、キャサリン・パー(アリシア・ヴィカンダー)である。
 彼女は処刑された2番目の妻アン・ブーリンの遺児エリザベス(後のエリザベス1世=ジュニア・リーズ)や3番目の妻ジェーン・シーモアの遺児エドワードを可愛がり、二人から大変慕われている。大陸欧州で隆盛していた改革派支持の立場で、国教堅持の8世(ジュード・ロー)はこれが気に入らず、かつ、エドワードの叔父トーマス(サム・ライリー)との仲に嫉妬する。
 主教(サイモン・ラッセル・ビール)が権力把握の為にこれに乗じて、火刑に処された急進派の女性指導者アン・アスキュー(エリン・ドハーティ)との関係を突き止めようと自ら積極的に調査に乗り出り、恋人トーマスは命欲しさに裏切ってしまう。
 が、さすがの8世もキャサリンへの愛情に抗しきれず、処刑を認めずに死ぬ。

大体史実通りと思われるが、大胆な改変があり、殆ど死の直前とは言え、キャサリンに8世を絞殺させるのである。いや、驚きましたな。
 これには確固たる狙いがあって、フェミニズムを打ち出す為の作劇と思われるわけだが、ある意味国王と同等の権力を持つ横暴な主教や、処刑されなかったから良いものの保身の為に裏切りを働くトーマス・シーモア(史実では8世を失ったキャサリンと翌年に結婚)の扱いもその一環である。そして、キャサリン・パーの行動が(女性の)自由への道筋を付けたと、エリザベス1世に総括させている。

かなり調子の良い作りであるが、史劇として相当面白く観られたので余り気にしない。

しかし、史実では、折角危うく火刑を逃れたものの、キャサリンは娘を生む際に産褥熱で死んでしまうのである。

キャサリンのスペイン出身の侍女を黒人女優ミーナ・アンダラが演じているのが気になった。例によってDEIなのか、本当に黒人の侍女がいたのか曖昧。ストーリーの理解には支障ないが、白人役なのであればもうこの手は勘弁してもらいたい。★一つ減点する。

この映画のヘンリー8世はキャサリンに絞殺されるが、一昨日僕はアシナガバチに刺殺もとい2か所刺された。やれやれ。怖いのはアナフィラキシーショックだよねえ。生涯4度目となる。数年前2度目の受難の後、抗体ができているかどうかチェックしたところ問題なしとのことだった。

この記事へのコメント

モカ
2025年07月10日 22:01
エリザベス・パー  → キャサリン・パー

この時代メアリーは何人もいてややこしいですが、この映画のなかでエリザベスは1人だけのはずです。
そのうちの1人のメアリーがスペイン系なのでスペインの宮廷からアフリカ系の侍女を連れてきた設定かもしれませんね。 

ジュード・ロウのヘンリー8世ってどうですか? アップでみたら優しいお顔 ^^
オカピー
2025年07月10日 23:14
モカさん、こんにちは。

>エリザベス・パー  → キャサリン・パー

あははは。大失敗。
Wikipediaではキャサリン・パーで調べたのに、エリザベス1世に引きずられたのか、エリザベスになってしまいました。
全部エリザベスになっていましたねえ^^;

>そのうちの1人のメアリーがスペイン系なのでスペインの宮廷からアフリカ系の侍女を連れてきた設定かもしれませんね。

その可能性はありますね。
従って、これはこの映画の難点なのではなく、こういうことをし始めた連中のせいなのです。
画面に映っていることを疑ってかからないといけないのは悲劇ですよ。

>ジュード・ロウのヘンリー8世ってどうですか? アップでみたら優しいお顔 ^^

エンディング・ロールで名前を見るまで解りませんでした^^
モカ
2025年10月09日 14:12
こんにちは。

前回のコメントで “エリザベス → キャサリン”
と指摘しながら私、その後、“エミリー” って書いてますね! すいません、✖️つけておいて下さい。

今、「黒いイギリス人の歴史 忘れられた2000年」 という本を読んでいて、ヘンリー8世の時に実在したアフリカ系の男性の事が書かれていたので思い出した次第です。 
ヘンリー8世の妃には3人キャサリンがいて、一番最初の妃がスペインからヘンリーの兄アーサー王に輿入れしたキャサリン オブ アラゴンでアーサーの死後ヘンリー8世の妃になり、その時スペインから連れてきた随行員の中にアフリカ系の人がいたのは記録として残っているらしいです。名前や肖像が残っているのは男性ですが、女性が輿入れしてきたからには侍女にもいた可能性はありますね。
ただこの映画のキャサリンは6番目のキャサリンですけどね。

まだ半分くらいしか読み進めていませんが、この本面白いです! 
オカピー
2025年10月09日 20:32
モカさん、こんにちは。

>「黒いイギリス人の歴史 忘れられた2000年」 という本

へえ、こんな本がありますか。
図書館にありましたから、読んでみます^^

念の為に申しますと、
僕は、欧州に黒人あるいはその他の有色人種がいなかったなどと主張するつもりは毛頭ありません。

僕が史劇における有色人種について問題提起するのは、映画における純粋なDEI配役が観客に誤解を招く(例えば、エリザベス1世時代における黒人が演じた英国大使や、近世フランスにおける黒人が演じた憲兵、等々)からで、こんな映画を観ているうちに画面が信じられなくなってしまいました。史劇に有色人種が出て来る度にこんなことを考えるなんて、何と不幸なことじゃありませんか(笑)
史実通りに作っても僕のように拒否反応を示してしまう人間が出て来る。

20年前であれば、史劇にオーパーツのような黒人が出て来ても“勉強になるなあ”とか”興味深い”という感想になっているはずなんですがねえ。