映画評「紅夢」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1991年中国=香港合作映画 監督チャン・イーモウ
ネタバレあり

チャン・イーモウ監督=コン・リー主演コンビの第3作。この三作は、いずれも中華民国時代に素封家に嫁がされた娘たちの悲劇である。

設定的にはこれまでとは少し違い、今度の素封家はイスラム風に妻を何人も抱える豪商で、ヒロイン頌蓮=スンリェン=(コン・リー)は第4夫人という扱い。娘の性格も感情を抑えることなく直情的で気が強い。
 そんな彼女が、第4夫人の地位も望めかけて失敗した召使(コン・リン)と確執を持ちながら、第2夫人(ツァオ・ツイファン)と親しくなる。ところが、見かけとは裏腹にこの第2夫人は腹黒く、ヒロインの召使をけしかける一方、歌手上がりの第3夫人(ホー・ツァイフェイ)を不倫の末の死に追い込む。
 スンリェンは第3夫人の院の燈篭を付け、そのレコードを流す。それに気付かない人殺し集団の使用人たちは亡霊が出たと腰を抜かす。
 翌年屋敷には何もなかったように第5夫人が迎えられる。しかし、中庭では気のふれたヒロインが歩き回っている。

タイトルは中国四大名書の一つ「紅楼夢」に似ているが、4人の妻たちの心理戦という意味では四大奇書の一つ「金瓶梅」を思い出させたりする。
 が、この映画の目的は、女性たちの心理合戦を見せることではないと思う。旧作二本同様に、父権主義的な慣習に対する批判的な態度を感じないではいられない。
 その意味では、スンリェンが結果的に殺してしまう召使も、他の夫人たちも、この因循な文化の犠牲者たちであり、最後にヒロインがつける鮮やかな赤い燈篭はそんな女性たち全てに対する鎮魂の為ような気さえしてくる。

映画の真の主人公は誰か、否、何かと言えば、随時燈篭がきらめく小王国の宮殿のような屋敷そのものである。時に俯瞰で幾棟も連結された屋敷の全貌が捉えられ、あるいは中庭も俯瞰・平行・仰角と自在に適切に捉えられる。
 屋敷の配置を示すショットが一々素晴らしいので、敢えて心理に深過ぎる形では踏み込まないこの寓話を彩る人の出入りに感心するばかりである。それ自体が断然美しい。
 そして見事な色彩設計。水墨画のような灰色系の色彩に浮かび上がる赤い燈篭の美しさよ!

中国復帰前の香港との合作なので、繁体字でクレジットが作られている。昨日の「菊豆」は日本との合作なので、やはり繁体字であった。

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