映画評「六人の噓つきな大学生」

☆☆★(5点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・佐藤祐市
ネタバレあり

日本の若者はクローズド・サークルものがお好きらしい。本来は本格ミステリー用語であるが、サスペンス系を含めてかなり読んだり観たりしている。今や古典となった綾辻行人「十角館の殺人」(小説は昨年、映像版は本年鑑賞)や今人気らしく先月読んだ夕木春央「方舟」などがあり、古典中の古典アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」は文春の東西ミステリー・ベスト100【西の部】1位となっている。

本作は、就活絡みのアウトラインを少しだけ読むとそういう展開になるとは予想しにくいが、途中までは殺人のない本格ミステリー、クローズド・サークルものである。作者は浅倉秋成という、武将みたいなペンネームの作家。

スピラリンクスなるIT企業の最終選考に残った6人の男女大学生がディスカッション形式の選考会に望む。そこから誰か一人を選ぶというわけではなく、ディスカッションの内容次第では全員の合格もありうる。
 ということで、東京の有名大学の学生6人即ち、浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉夕喜、西垣匠が仲良く作戦を立てるべくミーティングを重ねるが、その最中、企業から合格者は一人に変更の旨連絡が届く。
 かくして、会議室から出たものは失格と言う条件の下、6人の候補者が投票し合って合格者を決めるという趣旨で進行するうち、会議室の片隅に置かれた謎の袋が発見され、そこに6人に対する告発の手紙が入っていたことから、投票数は大きく揺れ動く。
 この結果入社した一人が、数年後、亡くなった関係者の妹・中田青柳から受け取った資料から真実を焙り出す。

辛うじて本格ミステリーの範囲に入る作品だから詳細は伏せておくが、殺人がないだけでなく、登場人物たちが “一面だけを見て人を判断してはいけない” という青春ドラマ的結論を以って終わるので後味は悪くない。悪くないという言い方にせざるを得ないのはそれまでの内容との較差(ジャンルが変わってしまったような印象)故に扱いの甘さが印象に残ってしまうからである。

着想としては、物理的なクローズド・サークルではないところの新味を買う。つまり、精神的なクローズド・サークルもので、合格したいという心理がサークルから出られない状況を作るというわけである。

僕は、言葉にうるさい人間だから、手紙の句点をどう理解するかという部分が面白かった。

実在する大学名を出して来るのが画期的。フィクションでもノンフィクションでも劇映画では実名を出さないのが日本人の国民性なのだ。この原作と映画で評価できるのはそこですな。

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