映画評「十一人の賊軍」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・白石和彌
ネタバレあり

十一人と言っても賊軍がサッカー(蹴球)をするわけではないが、花火玉は幾つも出て来る。
 東映出身で「仁義なき戦い」シリーズでよく知られる脚本家・笠原和夫の映像化されなかったアイデアを池上純哉が脚本としてまとめ、白石和彌が映像に移した時代劇。一言で言えば囚人を傭兵として使う「特攻大作戦」(1967年)の明治維新・戊辰戦争版であるが、身内すら騙す権謀術数もあって遥かに複雑怪奇である。

越後の新発田藩が、官軍に付こうとする若い藩主に逆らって家老(阿部サダヲ)が、賊軍とされる同盟軍の為に砦で官軍を防ぐ決死隊を結成、剣術の使い手兵史郎(仲野太賀)を陣頭指揮者として藩士数名、そして砦を守った暁には無罪放免にすることを条件に十人の死罪人を加え、いざ出陣。
 そのメンバーは、駕籠かきの政(山田孝之)、彼を兄のように慕う発達障害者ノロ(佐久本宝)、火付け女なつ(鞘師里保)、密航者おろしや(岡山天音)等等。10人がそれぞれ得意な部門に活躍するというのはこの手の抗争劇に限らず集団ものの定石であるが、上に記した4人はストーリー展開上重要な役目を負っているので、具体的に紹介した。
 例えば、ノロは花火師の家の出身で、石油を発見し花火玉を水に強い爆弾に変える。おろしやは西洋技術の知識があり、橋を破壊するアイデアを出すも藩士に却下される。その理由が家老の真の目的に関係していることが判明する。駕籠かきは主人公で、とにかく傍観者を決め込み時には裏切り行為さえ働くが、ノロに一々守ってもらった恩義を感じ、最後に大活躍する。なつは彼の遺品を愛妻に届ける。

封建時代の理不尽を色々と感じる一方、最後の字幕を見ると、悪役の家老も視点を変えれば新発田の藩民を守ることに貢献したことになる。つまり、一面的に見ることを拒否している作劇と言って良いと思う。

60年前の東映集団抗争時代劇ではメンバーの大半が早々に呆気なく死んでしまうのに対し、こちらは一人一人丁寧に(?)死んでいき、ドラマ面でも見応えあり。おかげで155分もの長尺になっているのは良し悪しではある。

一部を除き戦い・闘いには素人の面子たちが果たしてこのように活躍できるかという大きな疑問がないわけではないものの、アクションの捉え方がダイナミックで一通り楽しめる。

阿部サダヲの家老、仲野太賀の藩士など、今までのイメージに縛られると違和感を覚える配役。それは鑑賞者によって意見が分かれるところであろうが、僕はちょっと軽いと思う。アクション・スターにアクションをさせないのは肩透かしという面白味となることがあるが、喜劇俳優をシリアス役に使うのはなかなかしんどい。上手く行った例は「飢餓海峡」の伴淳三郎だろうか。

白石監督らしくバイオレンス描写は激しく、人体損壊が苦手な人にはお勧めしにくい。

賊軍は、官軍に対するそれと、犯罪者の軍という意味の掛詞ではないか。

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