映画評「嗤う蟲」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・城定秀夫
ネタバレあり
閉鎖的な村をテーマにしたホラー映画やスリラーは割合多く、最近ではアメリカ映画「ゲット・アウト」がある。本作も「ゲット・アウト」も、村が余所者を歓迎する理由に良からぬ考えがあることが次第に判明していく、という共通点がある。
農村での暮らしに憧れを持っていた青年若葉竜也が、姓の違うイラストレーターの妻深川麻衣を連れて、辺鄙な農村にやって来る。村長に当たる田口トモロヲを始め、村人は妙に親切だが、彼女が妊娠すると “ありがっさん” と言われて感謝されるなど妙な言動が目立つ。極端な村社会で、そこに存在する人間は全て村の所有物といった扱いなのだ。
翌年、二人は村が大麻を密造・密売していることに気付くが、飲酒運転で村人を轢き殺したことになった若葉はその弱みに付け込まれて仕事を手伝わざるを得ず、細君が駐在・中山功太に調査を依頼しても彼も弱みを握られているので、何もできない。
彼女は妥協したふりをして監禁を解かれ、村人全員が神式行事に参加している間に、麻薬を使った大作戦を敢行する。
というお話で、日本が選択的夫婦別姓を実現したリベラルな社会になっているのに対し、彼らが入り込んだのは保守という以上に村人が村から出ることすら許さない管理社会で、その様相は狂気に満ちていると言うしかない。
多分に社会が極端に全体主義化すればこうなると見本を示したような内容で、中盤以降はその理不尽ぶりにゾっとさせらえること請け合いである。
村も国家も住民が共通した幻想を抱くことで成立するという立場になりつつある僕としては、こういう不気味なコミュニティーはなるほど幻想によって成り立っていると認識し、震撼せざるを得ない。
「ゲット・アウト」がアメリカ社会の現実をよく知っていた方が楽しめる作劇であったのに対し、こちらは村の秘密が次第に明らかになりサスペンスが強まっていくという作り方がぐっとシンプルで明解。その解りやすさが幼稚な印象に繋がりかねないところも内包するが、サスペンスにおける純度が高いところが気に入った。幕切れで気を持たせないのも良い。
中国の白話小説を読むと【細君の〇〇氏】といった表現が出て来る。夫婦が別姓になると小説などで理解しにくくなるが、現実面ではプラスが多い。しかも選択制で、別姓を選ぶのは2割くらいと予想されている。姓を別にすることで家族が弱体化するというのは、父権主義者の幻想にすぎまい。日本は鎌倉時代まで氏族を表す姓はあったが家族を表す苗字がなかった。明治になり庶民も苗字を持てるようになった後、強制的夫婦同姓になったのは僅か130年前だ。
2024年日本映画 監督・城定秀夫
ネタバレあり
閉鎖的な村をテーマにしたホラー映画やスリラーは割合多く、最近ではアメリカ映画「ゲット・アウト」がある。本作も「ゲット・アウト」も、村が余所者を歓迎する理由に良からぬ考えがあることが次第に判明していく、という共通点がある。
農村での暮らしに憧れを持っていた青年若葉竜也が、姓の違うイラストレーターの妻深川麻衣を連れて、辺鄙な農村にやって来る。村長に当たる田口トモロヲを始め、村人は妙に親切だが、彼女が妊娠すると “ありがっさん” と言われて感謝されるなど妙な言動が目立つ。極端な村社会で、そこに存在する人間は全て村の所有物といった扱いなのだ。
翌年、二人は村が大麻を密造・密売していることに気付くが、飲酒運転で村人を轢き殺したことになった若葉はその弱みに付け込まれて仕事を手伝わざるを得ず、細君が駐在・中山功太に調査を依頼しても彼も弱みを握られているので、何もできない。
彼女は妥協したふりをして監禁を解かれ、村人全員が神式行事に参加している間に、麻薬を使った大作戦を敢行する。
というお話で、日本が選択的夫婦別姓を実現したリベラルな社会になっているのに対し、彼らが入り込んだのは保守という以上に村人が村から出ることすら許さない管理社会で、その様相は狂気に満ちていると言うしかない。
多分に社会が極端に全体主義化すればこうなると見本を示したような内容で、中盤以降はその理不尽ぶりにゾっとさせらえること請け合いである。
村も国家も住民が共通した幻想を抱くことで成立するという立場になりつつある僕としては、こういう不気味なコミュニティーはなるほど幻想によって成り立っていると認識し、震撼せざるを得ない。
「ゲット・アウト」がアメリカ社会の現実をよく知っていた方が楽しめる作劇であったのに対し、こちらは村の秘密が次第に明らかになりサスペンスが強まっていくという作り方がぐっとシンプルで明解。その解りやすさが幼稚な印象に繋がりかねないところも内包するが、サスペンスにおける純度が高いところが気に入った。幕切れで気を持たせないのも良い。
中国の白話小説を読むと【細君の〇〇氏】といった表現が出て来る。夫婦が別姓になると小説などで理解しにくくなるが、現実面ではプラスが多い。しかも選択制で、別姓を選ぶのは2割くらいと予想されている。姓を別にすることで家族が弱体化するというのは、父権主義者の幻想にすぎまい。日本は鎌倉時代まで氏族を表す姓はあったが家族を表す苗字がなかった。明治になり庶民も苗字を持てるようになった後、強制的夫婦同姓になったのは僅か130年前だ。
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