映画評「さよならドビュッシー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・利重剛
ネタバレあり

2010年【このミステリーがすごい!】大賞を受賞した中山七里によるミステリーを、利重剛が映像に移したミステリー。
 しかし、この映画版はミステリー4割、音楽根性もの6割といったところで、余り本格的なものを期待するといけない。
 原作ものは何かと批判されるが、内容の比較は良くても原作と比べて評価を定めるのは不毛である。但し、人口に膾炙し、イメージが固定されている古典はその限りではない。

NPO活動をしていた両親を失ったピアニスト志望片桐ルシア(高校時代・相楽樹)は、従姉妹遥(高校時代・橋本愛)の父香月哲也(柳憂怜)と悦子(相築あきこ)の夫婦に引き取られる。同じ年頃で外見がそっくりでピアニスト志望という共通点がある従姉妹同士は実業家の祖父(ミッキー・カーティス)の離れにいる時火事に巻き込まれ、遥以外の二人が焼死してしまう。
 辛うじて生き残った遥は最新皮膚移植手術により蘇生、何とか日常生活ができるようになるが、ルシアに誓ったピアニストの夢は遠く離れてしまう。
 ここで出て来るのがそれなりに有名なピアニストの岬洋介(清塚信也)で、彼の援助の下、指の動きは少しずつ回復していくが、それと共に遥を狙った不審な事件が起こる。さらに、悦子が道路に面した階段から落ちて意識不明に陥る。

ミステリーとして重要なのは、24億円余りと豪邸を残した祖父のややこしい遺言の存在で、恐らくこれが絡んで遥や悦子の事件が起きた、と法学部出身で司法試験にもトップで合格した探偵役・岬は推理し、家族であっても事件については伏せるように遥に命じる。

ただ、遥をめぐる事件は警察が解決し、その後岬探偵が遥個人の謎に接近していく。
 が、映画版は遥に謎を自ら説明させてミステリー色を薄め、コンクールでの懸命の遥の演奏の感動に注力している感じで、この手が好きなとりわけ女性陣は紅涙を絞る可能性が高い。彼女の謎は岬もある程度気付いていたらしいのだが、ここは(原作は読んでいないがアウトラインで判断する限り)脚色での説明は苦しいところと原作より良くなっているかもしれないところがあり、功罪相半ばといったところ。

画面は総じてTV的だが、場面による被写界深度や複数人物のいるショットでの人物の焦点の合わし方などに工夫が見られるのはよろし。

稲垣吾郎の従兄みたいな風貌の清塚信也を、こんな俳優いたかいなと思いながら見ていたが、2か月ほど前にNHK-Eでビートルズとクラシックの関係を紹介する番組でピアニストとして進行役をしていたことを思い出した。映画初主演と聞いたが、その割にはちゃんと演技していましたな。クラシック音楽家を題名に用いた岬洋介シリーズはなかなか面白そうです。いつか読んでみよう。

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