映画評「春江水暖」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2019年中国映画 監督グー・シャオガン
ネタバレあり

先日観た「西湖畔に生きる」は、中国の若手監督グー・シャオガンにとって、本作と繋がるシリーズ第2弾ということになるらしい。しかし、出来栄えは段違いではなかろうか。

中国の海岸沿いの大都市杭州の富陽を舞台とした群像劇で、主な出演者は、監督の親族・姻族たちであるという。

4人の息子がそれぞれ旅立って暮らすうち、老母が認知症気味となり、施設への移住が沙汰されるうち、問題を抱える中、遂に一人が引取りを決意する。長男の娘グーシーが母親の反対を押し切って好きな教師と結婚する。

四季折々の美しい風景を取り込みながら色々とお話が進む中でもこの二つが一貫して進む物語と思われる。かつてのテオ・アンゲロプロスに似て悠揚迫らぬ展開ぶりと、ロングショットと移動撮影を多用した長回しのカメラに大いに見応えがある。
 どちらかと言えば似たタイプの悠々たる作り方をする中国の先輩監督にジャ・ジャンクーという俊才がいるが、彼は引き+固定カメラに拘泥するタイプにつき冷徹に見え、かつ、冗長感を覚えやすいのに対し、グー監督のようにカメラが適度に動くと暖かさを感じるので、単純に比較すればこちらのタイプのほうが胸を打たれやすい。

グーシーと恋人をめぐる一連のショットは見事な横移動撮影で、水泳と徒歩でどちらが早く目的の場所に着くか競争するシーンが良い。泳ぐ彼と並行してカメラが左から右に進み、少しだけ彼女がカメラに入った後再び彼だけになる。ここで映画を見慣れている人なら、やがて彼女が右側からフレーム・インしてくることを予想するわけで、その通りになって喜ぶのは僕だけであるまい。
 もう一つは山道で男女が歩いているのを俯瞰で捉え、男女の二人の声が聞こえるが、カメラが右側に移動すると山道はくねっていて話している男女は最初の男女ではなく右側からフレーム・インしてきた男女(グーシーと恋人)と判らせる辺りの感覚も抜群。大いに楽しませてもらいました。

お話は極めて日常的なお話に推移し、全体として長回しなので退屈を感じられるムキもあるだろうが、こういうのはそういうものと思って話を追わず距離を置いて観るうちに退屈感が消えることがある。なかなか難しい芸当と思いますがね。

【春江】と言えば、若くして(享年24歳、満22歳)で亡くなった父方の祖母の名前が春江(はるえ)でしたね。だから一歳の時に亡くなっているので父すら祖母を知らない。引き直し(亡き配偶者の姉妹・兄弟と直後に再婚することをこの辺りではこう言う)をした祖母の妹も同じくらいの年で他界し、婿であった祖父は家を出て東京で茨城出身の女性と再婚、やがて地元に戻り、毎年新年と彼岸に我が家を訪れた。その人の間に出来た長女や僕の姉の名前に江が付くのは祖父が最初の妻の名前を意識したのだろう。

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