映画評「野生の島のロズ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年アメリカ映画 監督クリス・サンダーズ
ネタバレあり
アメリカ製の秀作アニメ。ピーター・ブラウンの児童文学のアニメ化である。
嵐の影響で落下したアシスト・ロボットのロッザム7134(声:ルピタ・ニョンゴ)が動物王国の無人島で起動し、本来の業務である助けを求める者を探すうち、一つだけ生き残った雁の卵を発見すると、それを狙って現れたキツネのフィンク=チャッカリ(声:ペドロ・パスカル)の意見に従い、雛が空を飛べ独り立ちするまで支援することにする。ブライトビル=キラリ(声:キット・コナー)と名付けられた雛は、ロズと自称し始めたロッザムに助けられ、やがて飛び立っていく。
任務終了と共に社に戻るつもりでいたロズは結局名残りがあって島に滞在を続け、やがて吹雪で遭難しかけている動物たちを救出し、穴の中を弱肉強食のない世界に変え、全ての動物たちが満足する。
やがて、キラリたちが戻って来ると共に現れた回収ロボットに従おうとしたロズは翻意し、どうしても回収しようとするロボット一味を動物たちと共に撃退する。
島が平和になったのを確認すると、ロズは一旦本社に戻ることを決意する。今や外部の制御を超える“心”を持ったロズなりの考えがあるのだ。
アメリカ的に合理的すぎて興覚めする部分が全くないわけではないものの、ぐっと来て涙腺を刺激されるところも少なくない。
高度に哲学的であった「A・I」では愚かな人間に憧れるアンドロイドが哀れになったのに対し、児童ものである本作ではロボットが人間的になるところに素直を感動してしまう。孤独を感じるところなど人間的感情を持ったロボット故に人間の孤独以上に身に染みるではないか。
スタジオジブリの影響などもあるようで、暫く時間を措いて目覚めたロズが草にまみれているところは、明らかに「天空の城ラピュタ」(1986年)の苔むした園丁ロボットを意識している。トランプら極右の嫌いな多様性の世界がここでは現出している。
食物連鎖のある生物の世界では現実には不可能である。しかるに、近年の脳科学の研究によれば、人間の脳は本来利他的であると自らも幸せに感じるようになっているようなので、人間社会に限れば容易に実現するのが本当らしい。
アメリカは大統領の権力が強すぎる。それを大統領が指名したメンバーが多数を占める最高裁の決定の結果、さらに強まった。恐らくアメリカという大国におけるトランプの存在が小国ミャンマーのクーデターを現実のものにし、参政党をしてあのような意見を堂々と言えるようにせしめた、と思う。しかし、日本は二大政党ではないので、現在のスタンスでは政権を取るようにはなれない。ワクチンとそれによる集団免疫によって弱毒化することと引き換えに感染力は高めたコロナ・ウィルスのように、マイルドになる必要はあるだろう。
2024年アメリカ映画 監督クリス・サンダーズ
ネタバレあり
アメリカ製の秀作アニメ。ピーター・ブラウンの児童文学のアニメ化である。
嵐の影響で落下したアシスト・ロボットのロッザム7134(声:ルピタ・ニョンゴ)が動物王国の無人島で起動し、本来の業務である助けを求める者を探すうち、一つだけ生き残った雁の卵を発見すると、それを狙って現れたキツネのフィンク=チャッカリ(声:ペドロ・パスカル)の意見に従い、雛が空を飛べ独り立ちするまで支援することにする。ブライトビル=キラリ(声:キット・コナー)と名付けられた雛は、ロズと自称し始めたロッザムに助けられ、やがて飛び立っていく。
任務終了と共に社に戻るつもりでいたロズは結局名残りがあって島に滞在を続け、やがて吹雪で遭難しかけている動物たちを救出し、穴の中を弱肉強食のない世界に変え、全ての動物たちが満足する。
やがて、キラリたちが戻って来ると共に現れた回収ロボットに従おうとしたロズは翻意し、どうしても回収しようとするロボット一味を動物たちと共に撃退する。
島が平和になったのを確認すると、ロズは一旦本社に戻ることを決意する。今や外部の制御を超える“心”を持ったロズなりの考えがあるのだ。
アメリカ的に合理的すぎて興覚めする部分が全くないわけではないものの、ぐっと来て涙腺を刺激されるところも少なくない。
高度に哲学的であった「A・I」では愚かな人間に憧れるアンドロイドが哀れになったのに対し、児童ものである本作ではロボットが人間的になるところに素直を感動してしまう。孤独を感じるところなど人間的感情を持ったロボット故に人間の孤独以上に身に染みるではないか。
スタジオジブリの影響などもあるようで、暫く時間を措いて目覚めたロズが草にまみれているところは、明らかに「天空の城ラピュタ」(1986年)の苔むした園丁ロボットを意識している。トランプら極右の嫌いな多様性の世界がここでは現出している。
食物連鎖のある生物の世界では現実には不可能である。しかるに、近年の脳科学の研究によれば、人間の脳は本来利他的であると自らも幸せに感じるようになっているようなので、人間社会に限れば容易に実現するのが本当らしい。
アメリカは大統領の権力が強すぎる。それを大統領が指名したメンバーが多数を占める最高裁の決定の結果、さらに強まった。恐らくアメリカという大国におけるトランプの存在が小国ミャンマーのクーデターを現実のものにし、参政党をしてあのような意見を堂々と言えるようにせしめた、と思う。しかし、日本は二大政党ではないので、現在のスタンスでは政権を取るようにはなれない。ワクチンとそれによる集団免疫によって弱毒化することと引き換えに感染力は高めたコロナ・ウィルスのように、マイルドになる必要はあるだろう。
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