映画評「アンジェントルメン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年イギリス=アメリカ=トルコ合作映画 監督ガイ・リッチー
ネタバレあり

一言で表現すれば、 007“ゼロ”かMⅠ6“ゼロ”といったところ。 英国の特殊作戦執行部(SOE)のメンバーとしてMと「007」シリーズの作者イアン・フレミング(元英海軍諜報部指揮官)が登場するのである。

チャーチルはSOEを使って、英国に甚大な被害をもたらしアメリカの欧州戦線参戦を阻んでいるナチス・ドイツのUボート補給路を断つという作戦を実行に移す。
 選ばれるのは、この手の映画の定石通り、服役中とか元服役囚といった失うものの少ない傭兵ということになる。先日の邦画「十一人の賊軍」もそうだった。
 リーダーシップのあるヘンリー・ガヴィル、ノルマン系らしく矢を射るのがやたらに上手いアラン・リッチソンなど5名。
 これだけでは目的達成が難しいので、並行して、SOEの正式職員である美人スパイのエイサ・ゴンザレスとバブス・オルサンモクンの二人組が、ナチス・ドイツが関連するパーティーに潜入して工作しまくる。

この7人は無双状態につきサスペンスが殆どない為、序盤の展開上の面白味が後半になってどんどん失速する。例によって、実在する人物とは民族的に全く異なるヒスパニック美人エルサ・ゴンザレスが外観的にも役柄的にも魅力的なので、その割に楽しめる一編とはなっている。

最近の映画は必要がなくても巻き戻し形式にしたがるが、 監督が巻き戻し形式以外で楽しめる映画を作ったためしのないガイ・リッチーなので余計に “またやっているな” という印象を覚えるのが良くない。そういうアヴァンタイトル型の作り方のほうが大衆に受けやすいのは理解しますが、シネフィルは馬鹿の一つ憶えは嫌いでござる。

ナチス主催のパーティーなのに有色人種のお客が目立つのも気になる。ナチスが嫌ったのはユダヤ人だけではないというのに。
 映画は見た目が全てであるから、演劇では許される配役上の人種を超えたDEIは認めにくい。何度も言ってきたように、当時の事情を知らない子供たちや歴史に疎い人々が誤解するではないか。(世間とは逆で)主役ならまだ良いが、詳細を把握しようのない有色人種のエキストラが有色人種の本来いない場所にいると、完全に歴史修正主義に見えてしまう。全体主義右派の歴史修正主義と結果的に同じことになる。

日本にもナチス・シンパのような人がいる。しかし、ヒトラーは「わが闘争」において一部褒めつつも”日本はアーリア人がいなければ一日で滅びる”と述べている。共感できるところなど全くありはしないのだ。

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