映画評「Cloud クラウド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・黒沢清
ネタバレあり

昨年末に黒沢清監督の新旧作3本を観たが、これもリメイク版「蛇の道」同様2024年の公開作らしい。2024年には「Chime」という作品も発表していて、何故か異様に活動的である。
 僕は形而上学的ホラーを作っていた時代の黒沢清が好きなので、「蛇の道」同様に廃工場を舞台にしていても、形而上学感覚が薄い、異様ムードのフィルム・ノワールに終始する感じが物足りない。

東京で転売屋としてそこそこ成功を収めているらしい菅田将暉が、結婚を考えていないでもないGF古川琴音と、山間部の掘り出し物件に引っ越し、事務所兼倉庫兼自宅にする。地元出身で高専時代の後輩・奥平大兼を助手にする。奥平が彼に騙された連中が復讐しそうな勢いであることに気付くが、菅田はパソコンに触れたことに怒って解雇する。
 かつて菅田を雇っていた事業主・荒川良々をリーダーとして集団ノイローゼ的になった一味が家に現れ、傍若無人の振舞いをした挙句に、廃工場に連れ込んで凄惨なリンチをし始めようとする。そこへ反社会的組織と関係があったらしい奥平が銃器を持って現れ、形勢が逆転する。

というお話で、この後ちょっとしたアウトロがあるのだが、それには触れないでおく。

職業紹介編の面白味と言っては語弊があるものの、その意味で僕には前半が楽しめた。
 菅田将暉の主人公が敵がそばにいるのに商品の無事を心配しているなど間が抜けている感じなのも単なる転売屋に留まる小悪党ぶりの表現で、彼の周囲にいる者全員が彼より悪党であるように感じられるところなどシュールな感じがなくもない。

黒沢清の映画に動機といった合理性を求めてはいけない。行動原理で解決できないところに彼の映画に怖さがあったわけで、寧ろ最近の作品群は中途半端なのが良くないのである。
 黒沢監督の新作に、 名状しがたい「CURE キュア」(1997年)のような怖さを期待することは、もはや出来ぬ望みなのであろうか。

集団ノイローゼと言えば、JICAをめぐる騒動やクルド人をめぐる川口市議会の提案なども完全にそれだね。全ての発端はトランプだと思う。トランプが民主主義の大国であったアメリカの大統領でなければこんな影響はなかったのだが。もはやアメリカ人の半分近くが自国が民主主義の国とは思っていないというデータがあるので、過去形にしてみました。

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