映画評「特捜部Q 吊るされた少女」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年デンマーク=ドイツ=エストニア=スウェーデン合作映画 監督
ネタバレあり

シリーズ第6作(現在の最新作)。WOWOWの放映が日本での初出になる(当たる)らしい。

7年前に交通事故とされた(が実際には迷宮事件の)少女死亡事件を追い続けて遂に干された官憲が衆人環視の状況下でピストル自殺する。
 彼の旧友でもある特捜部Qの刑事カール(ウルリク・トムセン)は、名前まで出されて後には引けなくなり、再捜査に乗り出す。木の上で死体となって発見された少女アルベルテが市民大学の美術を受講していたこと、また、カルト教団に関与していたことから、美術の講師の線とカルト教団の線が浮かび上がる。
 死んだ旧友の家を訪れると、不在の筈の息子が麻薬のオーヴァードーズで死にかけている。彼の前妻に当たると、何とその息子はカールの息子と知らされ、実に複雑な心境に陥るが、益々事件解決に力が入る。

誰が犯人かというよりは事件の実相を明らかにすることを目的とする本シリーズらしく、少女と息子の事件は互いに関連し合うと同時に、それぞれが別々に動いた結果であることが判って来る。

僕の印象では、第5作からぐっと改善はされている。個人的にウルリク・トムセンのカールに対する違和感がだいぶ減った。カメラがふらふらせず神の視線を感じさせる落ち着いたものになっているのがとりわけ良い。

前作同様相棒アサド(ザキ・ユーセフ)の活躍が少ない代わりに、女性の助手ローセ(ソフィー・トルプ)が変な風に大活躍する。変な風に大活躍というのは出番が多くカルト教団に潜入するまでは良いが、<木乃伊取りが木乃伊になる>の伝で、寧ろカールたちの足を引っ張る形になっているからで、お話の為のお話という感を強くして余り感心しない。

前作でカールと知り合った施設の美人モナが結婚直前の恋人となっているのは、シリーズものらしくて良い。

このシリーズは宗教が多かれ少なかれ絡んでくるが、本シリーズに限らずこのところ北欧映画にカルトが多く出て来るのは、北欧のイメージにとって大いにマイナスと言うべし。

題名の“少女”に疑問を呈する人がいるが、それは少女が中学生くらいまでを指すと決め込んでいるからである。そんな現在でも、言葉の定義上は、二十歳未満かつ未婚なら少女であろうし、もっと昔の観念を大事にしている僕などは二十代までの未婚女性であれば時に少女という単語を選ぶことがある。

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