映画評「子連れ狼 死に風に向う乳母車」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1972年日本映画 監督・三隈研次
ネタバレあり

シリーズ第3作。監督は三度三隈研次。彼の場合はお話より画面だが、前半は華美を極めた前作と比べて地味目である。前半拝一刀(若山富三郎)の活躍が最小限だからだ。
 この前半で僕をニヤッとさせたのは、大五郎(富川晶宏)と娼家に売られる百姓娘お松(加藤小夜子)の頭部でマッチカットし、場面転換するところだ。
 三隈監督は、僕の印象に残る範囲で、人物の大写しを画面の端に置く縦の構図(ワイド・スクリーンの場合横の構図と言えないこともない)、超ロングショット、そしてマッチカットの多用を特徴とする。この映画でも全部出て来る。

拝一刀が武士道に悩む渡り徒士・孫村官兵衛(加藤剛)に出会う。悩む余り死に急ぐ彼と刀を交えず一旦離れる。お松を救った一刀は、彼女を受け入れるはずだった娼家?の伝法女・木颪の酉蔵(浜木綿子)の一味による拷問を声も上げずに堪える。
 それが気に入り子連れ狼であるとも知っている彼女は、父親の元家老・三浦帯刀(浜村純)と一緒に頭を下げ、天領代官・猿渡玄蕃(山形勲)を仕留めてくれと殺しを依頼する。並行して猿渡も仕事を依頼しようとするが、あっさりと断られたことを以って事情を察知、物凄い数の兵を動員する。

このシークエンスはマカロニ・ウェスタン以外の何物でもない。譬えではなく、荒れ地を舞台に本当に短銃や大砲の数々が出て来て、一刀も乳母車に仕込んだマシンガン(仕立て)でそれに対抗するのである。前半の地味さとは極めて対照的に何でもありの感がある。恐れ入りました。

最後は孫村再登場で、ここでお得意の超ロングショット。死生と武士道の関係を絡める問答があってしかつめらしくなるが、ここの短いアクションも一通り楽しめる。

三隈研次を知るのに良い映画かもしれない。

火縄銃伝来から100年程度の江戸時代初期という設定を考えると、連発のマシンガン仕立てはオーパーツ。

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