映画評「子連れ狼 冥府魔道」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・三隈研次
ネタバレあり

シリーズ第5作は、三隈研次が監督に復帰しているが、撮影監督が名コンビの牧浦地志ではなく、森田富士郎に変わった。牧浦と違ってシャープな印象が薄い代わりに、マカロニ・ウェスタン風のズームがないのは好ましい。ロングショットを駆使する牧浦の絵の方が三隈監督の趣味と合っているように思われ、三隈らしい絵を求めると余り楽しめない。
 三隈監督の映画としては珍しくお話を優先的に楽しむ作品のように感じられ、その楽しみは最初から出て来る。

拝一刀(若山富三郎)が「黒田節(武士)」で有名な筑前の黒田藩藩士より刺客の依頼を受けるのだが、彼の実力を確認するという名目で4人もの藩士が別々に斬りかかり、その最期に刺客依頼の理由を小出しに語るというミステリー趣味が楽しいではないか。
 隠居した藩主(加藤嘉)が偏愛の余り、正室の生んだ嫡子ではなく側室に生ませた姫を藩主にしたことを記し、藩が信頼して預けた密書を、実は公儀探索方黒鍬衆の総頭領であった慈恵和尚(大滝秀治)により江戸へ運ばれることを妨害する為に和尚を殺すのである。
 ところが、並行して藩のくノ一不知火(安田道代)が現れ、真の目的はこの密書を道具に現藩主(姫)らを殺害することであると告げ、この親娘を殺すべく再度一刀に刺客を依頼するのである。

藩を護る為に和尚を殺し、正嫡子を幽閉した前藩主らを亡き者にするという武士道ぶりも仁義として見るべきものがあるが、ジャンル映画的に二段構えの刺客の依頼があたかもスパイ映画の時代劇版のような感覚で楽しめ、舟の下に潜って底を切り抜き和尚を水中に落とす辺りはジェームズ・ボンド的活躍と言うべし。

佐藤友美扮する女掏摸のお葉の事件に大五郎(富川晶宏)が巻き込まれ、その刺客精神が披露されるシークエンスもある。ややお話が横にずれている印象があるものの、武士道と絡み合うところがあるので意味がないわけではない。

拝一刀は江戸時代のジェームズ・ボンドでした。

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