映画評「悪い夏」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2025年日本映画 監督・城定秀夫
ネタバレあり

城定秀夫監督は多作で結構目にするが、意外と幅広いジャンルを扱っている印象だ。

市役所生活福祉課に所属する真面目な公務員・北村匠海が、がちがちの先輩・伊藤万理華と一緒に、同僚・毎熊克哉の不正を確認する為に、生活保護を受けているシングルマザー河合優実を訪ねる。毎熊が彼女の弱みに付け込み肉体関係を迫り受給額の一部をピンハネしているという不正疑惑である。彼は単なる付き添いだが、彼女の娘の相手をするうちに娘だけはケアしたくなる。
 並行してこの不正を知った、彼女が以前勤めていたフーゾク店の経営者窪田正孝が、店の常連で不正受給者のピストン竹原と組んで、毎熊を脅しにかけ、ホームレスを生活保護受給者に認定させ、貧困ビジネスで大儲けしようと考えるが、この件で優実が市役所職員の訪問を受けたことを聞いて一旦は諦める。しかし、彼の情婦・箭内夢菜が優実と北村の関係を知って、今度は北村を罠に嵌めようと優実を脅す。
 かくして北村はホームレスを無条件に認定する一方、本当に困っている木南晴夏の母子を邪険に扱って追い込んでしまう。
 この事態に北村自身も追い込まれ、優実ともども死のうとしているところへ、貧困ビジネス側が訪れ、そこへ彼らをやっつけようと毎熊が訪れ、さらに実は不倫相手の毎熊をストーカー的に追いかけていた万理華が現れ、ナイフ・包丁が画面を賑やかす大修羅場を展開する。

基本的には、社会派に見えなくもない、ホラー映画寄りの重いサスペンスとして観て楽しめば良い作品だが、このシークエンスだけはブラック・コメディーとして理解するしかない。こんな偶然もそうそうないことだから観ているうちにもそう感じられ、雨が降り壮絶なのに誰も死なないという結果を見せられると後味としてもそういう印象が強くなる。
 追い込まれて自殺を図った木南晴夏が無事生還したらしいのは素直に良い後味を醸成する。作者は人を死なせるのが好きではないのだろう。

以上のように、トーンが一定しない憾みがあるものの、アングルが面白いと言える作品。個人の映画観から採点はほどほどに留めたが、実質的にはそれ以上の面白味を感じられる可能性がある。

悪党は悪党らしい結末を得、北村は退職して掃除夫となるが、ロングショットで帰宅する様子を見る(ドアを開けて “ただいま” と言う)と優実母子と幸福な家庭を築けたようである。めでたしめでたし。

生活保護を受ける資格のある人は素直に申し込むべし。不正は駄目だが、受給する資格の十分ある人をすらなるべく拒絶しようとした一部地方自治体のようなことはあってはならない。あるいは、貧乏でも自分は頑張ってるぞと受給者を批判する一般人もダメである。そういう輩や外国人差別者が日本に3%しかいない外国人が受給者全体の30%を占めるというデマを広めるのだ。これはそもそも厚労省のデータ開示にも責任の一端があり、生活保護受給者全体の数字を月単位、外国人受給者数を年単位にして表記したことが発端である。つまり、30%を10~12で割ったのが正しいデータ。外国人の人口そして受給者に占める割合はどちらも約3%となり、ひどく全うである。

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