映画評「惑星ソラリス」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1972年ソ連映画 監督アンドレイ・タルコフスキー
ネタバレあり

日本には1977年に製作より5年遅れて入って来てかなり評判だったので観たかったのだが、田舎には来なかった。実際に観たのは80年代だったろうか? いずれにしても30年以上は観ていないのは確か。
 2004年にハリウッド映画としては頑張ったリメイクをTV鑑賞し、数年前にスタニスワフ・レムの原作小説を読んだ。小説は面白かったが、レムはこのアンドレイ・タルコフスキー版を甚だ気に入らなかったと書かれていた。しかし、僕らは原作者でも原作マニアでもないので、映画としてどんなもんじゃいという観点から評価すれば良い。

科学者クリス・ケルヴィン(ドナータス・バニオニス)が、ソラリスという惑星の軌道中にある宇宙ステーションで研究している科学者3人が妙なことになった為、派遣される。
 彼らとうまくかみ合わないうちに、10年前に服毒自殺した亡妻ハリー(ナタリヤ・ボンダルチュク)が現れる。事前の情報から、彼女がソラリスのプラズマ状の海が彼の想念を読み取って実体化していることをすぐに理解するが、復元されたハリーと交流を持つうち、地球での夫婦生活終盤と違って、実に愛情深い関係を構築する。それでも思い切ってカプセルで彼女を宇宙空間に放り出しても、彼が彼女を思っている限り半永久的に復元され、やがて作り物の彼女も本人そのものと変わらない想念を持つようになる。
 やがて反消滅なる現象で彼女は消え去るが、この海で彼は昔のままの姿の家に暮らす父親を発見する。

布石部分が長すぎて退屈するのは必定ながら、哲学SFとして相当面白く観られる。人間の存在に関する哲学であり、あるいは想念で複製物を生み出している本人こそ複製ではないかといった道教的なイメージも湧かないではないが、タルコフスキーらしく水を大量に配した画面のうちに、妻や父母に対する主人公の思いが結晶化する様子を見るのは感動的である。哲学的な部分ばかり見ると難しくなりすぎてしまう。
 アルフレッド・ヒッチコックの例を出すまでもなく、一流の映画作家は原作をだしに自在に作れば良い。本作主人公の係累(妻や両親)に対する思いは、他の作品同様タルコフスキーが映画を作る時に欠かすべからざるものなのだ。

画面に面白いところがあったのでご紹介。
 例えば、クリスがある人物を右に見出す。しかし、数秒後にその人物は左からフレームインするのだ。経過時間が長ければ珍しくないが、この短さだと少々びっくりさせられる。この手が二つか三つあって面白いセンスと感動した。こういう面白さを見出すのが映画鑑賞ですよ。

当時の首都高速の様子が未来的だとそのまま使われているのは有名な話。日本語の車のナンバーやビルのサイン・看板が来るが、そんなことにお構いないところは作家の余裕か、それを含めての未来感覚か。

水と言えば、我が庭の地下で漏水している模様。現在止水栓で使わない時は止めるようにしているが、いつまでもこんなことをしていられないので、三日前に水道屋(兼ガス屋)に連絡したところ、忙しくて様子を打ち合わせに来るのは来週になるとか。年末になると忙しくなると聞いたものの、そこまでとは。既に3度お世話になり、非常に手頃な値段でやってくれるので他の業者に頼む気はないのだが、早く日程が決まらないと落ち着かない。

この記事へのコメント

かずき
2025年11月29日 17:13
オカピーさん、こんにちは。

「2001年宇宙の旅」に次ぐ、SF映画の傑作だと思います。
タルコフスキー作品の例に漏れず、毎回観ていると眠くなりますが、それでもやはり面白いです。
(彼の作品で唯一眠くならなかったのが「サクリファイス」。
ベルイマン作品のような作りには興奮しました。)
原作者や原作ファンは気に入らないのでしょうが、もうウダウダ言わずに、この作品の水の表現の美しさ、その流れにゆったり身を委ねるのが正解でしょう。
難解な内容は理解できなくとも、画面の美しさを堪能するだけでも十二分に価値のある作品だと思います。
オカピー
2025年11月29日 22:08
かずきさん、こんにちは。

>「2001年宇宙の旅」に次ぐ、SF映画の傑作だと思います。

厳密に言えば、どちらも哲学SF映画ですね^^

>「サクリファイス」
>ベルイマン作品のような作り

コアなタルコフスキー・ファンではない僕らには、一番ピンと来るでしょうね。ベルイマン云々もそんな感じがします。
「ぼくの村は戦場だった」が一番万人向けで、実際良い映画でもありましたが。

>難解な内容は理解できなくとも、画面の美しさを堪能

存在論のような形而上学と考えるとお手上げですね^^
この時代のソ連映画の色彩がまだ独特でして、それもまた良い。