映画評「名探偵ポワロ:エンドハウスの怪事件」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1990年イギリス映画 監督レニー・ライ
ネタバレあり
エルキュール・ポワロものがミス・マープルものより映画界で人気があるのは観光映画の要素が多いからである。「エンドハウス殺人事件」はミステリーとしてはかなりよく出来ているが、舞台が英国内コーンウォールにつき観光映画としては若干弱いので劇場用には作られなかったのかもしれない。
本作は、英国の人気TVシリーズ「名探偵ポワロ」第2シーズンの第1作で、このシーズン唯一の長編である。
相棒ヘイスティングズ(ヒュー・フレイザー)とコーンウォールで過ごしていたポワロ(デーヴィッド・スーシェ)は、妙齢美人マグダラ・バックリー愛称ニック(ポリー・ウォーカー)が小型銃で撃たれた現場に居合わせ、彼女がその前に3度も危ない目に遭っていることを知り、彼女に近しい信頼のおける人物を傍に貼り付けておくことを進言する。かくして従姉のマギー・バックリーがやって来るが、安心するのも束の間、その彼女がニックのスカーフを被った状態で狙撃されて死ぬ。
彼女を狙う可能性のある人物は、彼女が小屋を貸しているオーストラリア人のクロフト夫妻、彼女に恋する軍人チャレンジャーや美術商ラザラス、親友フレディ・ライスである。
ポワロは彼女をホテルに避難させ、何者も接近不可とし、飲食物にも細心の注意を払うよう申し付ける。大金持ちの貴族冒険家の死を報じるニュースを聞いた彼女は、ポワロに彼との結婚話を打ち明け、彼と彼女自身の遺言の話をする。クロフト夫妻の進言で作られたという彼女の遺言書は発見されない。
そんな状況下で、巧妙なトリックで彼女はコカイン入りのチョコを食べて重態となる。
こんな感じで進んで来るが、この後の展開を含めて原作と違うらしい(未読なのでウィキペディアにある梗概による理解)ところは、彼女が死んでいないことを鑑賞者も事件解決の段まで知らないことである(僕は、医師が彼女を懸命に治療しているのをポワロが眺めているところで画面を切り替えた点から映像によるこの叙述トリックを想像した)。
映像化するには実に意味のある変更で、良い脚色と思う。いずれにしても、ポワロは周囲に彼女が死んだと思わせて犯人を焙り出そうとしているのである。
改変と言えば、フレディの夫の銃撃の段もカットされている。映像版では夫そのものが出て来なかったと記憶する。
当然重要なトリックと犯人は伏せたものの、勘が良い人なら以上の書きぶりで犯人が解ってしまうかもしれないが、悪しからず。TVシリーズの一編だから、ここを訪れるのは既に鑑賞済みの方ばかりだろうとは思う。
ジャップ刑事(フィリップ・ジャクスン)が例によって出て来るが、我が邦のTV刑事シリーズ「相棒」の捜査第一課(殺人課)3人ほども有機的な活躍をしない印象あり。
犯人候補が色々と出て来て面白いが、映画化された作品群に比べると経歴等で地味。こういう点も劇場用に映画化された作品と違う運命を辿る理由であろう。
エンドハウスで思い出したのは「エンド・オブ・ホワイトハウス」。現在ホワイトハウスはある意味盛んであるが、上品な品位は終わったと思う。
1990年イギリス映画 監督レニー・ライ
ネタバレあり
エルキュール・ポワロものがミス・マープルものより映画界で人気があるのは観光映画の要素が多いからである。「エンドハウス殺人事件」はミステリーとしてはかなりよく出来ているが、舞台が英国内コーンウォールにつき観光映画としては若干弱いので劇場用には作られなかったのかもしれない。
本作は、英国の人気TVシリーズ「名探偵ポワロ」第2シーズンの第1作で、このシーズン唯一の長編である。
相棒ヘイスティングズ(ヒュー・フレイザー)とコーンウォールで過ごしていたポワロ(デーヴィッド・スーシェ)は、妙齢美人マグダラ・バックリー愛称ニック(ポリー・ウォーカー)が小型銃で撃たれた現場に居合わせ、彼女がその前に3度も危ない目に遭っていることを知り、彼女に近しい信頼のおける人物を傍に貼り付けておくことを進言する。かくして従姉のマギー・バックリーがやって来るが、安心するのも束の間、その彼女がニックのスカーフを被った状態で狙撃されて死ぬ。
彼女を狙う可能性のある人物は、彼女が小屋を貸しているオーストラリア人のクロフト夫妻、彼女に恋する軍人チャレンジャーや美術商ラザラス、親友フレディ・ライスである。
ポワロは彼女をホテルに避難させ、何者も接近不可とし、飲食物にも細心の注意を払うよう申し付ける。大金持ちの貴族冒険家の死を報じるニュースを聞いた彼女は、ポワロに彼との結婚話を打ち明け、彼と彼女自身の遺言の話をする。クロフト夫妻の進言で作られたという彼女の遺言書は発見されない。
そんな状況下で、巧妙なトリックで彼女はコカイン入りのチョコを食べて重態となる。
こんな感じで進んで来るが、この後の展開を含めて原作と違うらしい(未読なのでウィキペディアにある梗概による理解)ところは、彼女が死んでいないことを鑑賞者も事件解決の段まで知らないことである(僕は、医師が彼女を懸命に治療しているのをポワロが眺めているところで画面を切り替えた点から映像によるこの叙述トリックを想像した)。
映像化するには実に意味のある変更で、良い脚色と思う。いずれにしても、ポワロは周囲に彼女が死んだと思わせて犯人を焙り出そうとしているのである。
改変と言えば、フレディの夫の銃撃の段もカットされている。映像版では夫そのものが出て来なかったと記憶する。
当然重要なトリックと犯人は伏せたものの、勘が良い人なら以上の書きぶりで犯人が解ってしまうかもしれないが、悪しからず。TVシリーズの一編だから、ここを訪れるのは既に鑑賞済みの方ばかりだろうとは思う。
ジャップ刑事(フィリップ・ジャクスン)が例によって出て来るが、我が邦のTV刑事シリーズ「相棒」の捜査第一課(殺人課)3人ほども有機的な活躍をしない印象あり。
犯人候補が色々と出て来て面白いが、映画化された作品群に比べると経歴等で地味。こういう点も劇場用に映画化された作品と違う運命を辿る理由であろう。
エンドハウスで思い出したのは「エンド・オブ・ホワイトハウス」。現在ホワイトハウスはある意味盛んであるが、上品な品位は終わったと思う。
この記事へのコメント
> エルキュール・ポワロものがミス・マープルものより映画界で人気があるのは観光. 映画の要素が多いからである。
もちろんそれもありますがやはりポワロの圧倒的な個性と作品数の違いもあると思います。
ポワロ物の長編が33くらいあるのに対してマープルは確か12くらいだったと記憶しています。
ミスマープルが英国のどこのカントリーサイドでも普通に見かける一見平凡なお婆さんなのに対して、ポワロは彼の代名詞の様な立派な口髭にペンギンのような歩き方でおまけにフランス語訛りがある小男ですからね。英国人のツッコミどころ(笑い物にする) が多すぎるキャラクターです。
あとミスマープルは割と庶民生活の事件に関わることが多い様ですがポワロはハイクラスな人々の事件に関わる事が多い感じがしますね。
階級社会の英国人はハイクラスの人間が悪い事をする方が楽しいんじゃないですかね。その辺も時代順に見ていくと2度の大戦を経た英国社会の変遷を垣間見れておもしろいです。
>「エンドハウス殺人事件」はミステリーとしてはかなりよく出来ているが、舞台が英国内コーンウォールにつき観光映画としては若干弱い
コーンウォールは断崖絶壁が続く有名な景勝地ですがこの作品ではそんな景色はでてきませんでしたね。私的にはヒロイン役の女優さんもあまり魅力的じゃなかったなぁ。
ポワロのテレビシリーズの50分くらいのは大体短編集からの作品で、だからあまり面白くないのが多いですかね。
デヴィッドスーシェの自伝を読みましたが、このテレビシリーズは最初から石橋を叩く様に慎重に少しづつ反響を見ながら進めていったようです。確かこのテレビ局はあまり大手の局ではなかった様な気がします。
1シーズンがなんとか終わっても次があるかどうかも直ぐには決まらなかったり、とにかくいつ打ち切りになってもおかしくなかった状態のスタートから13シーズンまで完走しましたね! すごいなぁ。
スーシェは元々舞台メインの性格俳優と自身を位置付けていた人ですが、ポワロ役の依頼が来た時に自分のライフワークにしようと決意したそうで、本を全部読んでポワロの歩き方から何から特徴を全部書き出したと書いてありました。
確か舞台ではジャップ警部を演じた事があったとか。ジャップ警部はフィッシュ&チップスが大好物でポワロから憐れむ様な視線を送られても気付かないポワロの引き立て役ですね。
私は時々出てくるポワロの秘書のミスレモンが大好きです。
>ポワロ物の長編が33くらいあるのに対してマープルは確か12くらいだった
そんなに違いますか。
>ミスマープルは割と庶民生活の事件に関わることが多い様ですがポワロはハイクラスな人々の事件に関わる事が多い感じがしますね。
これはそう感じます。
ポワロものに観光的な作品が多い所以ですね。
>コーンウォールは断崖絶壁が続く有名な景勝地ですがこの作品ではそんな景色はでてきませんでしたね。
勿体なくも出てきませんでしたね。コストも大してかからないでしょうに。
>いつ打ち切りになってもおかしくなかった状態のスタートから13シーズンまで完走しましたね! すごいなぁ。
すごいなあ。長編は少しずつ全て観てみようと思います。
>私は時々出てくるポワロの秘書のミスレモンが大好きです。
僕は小説で遭遇した記憶がないのですが、この小説というか作品には出てきましたね。最初は誰かと思いましたよ。