映画評「その花は夜に咲く」
☆☆★(5点/10点満点中)
ベトナム=シンガポール=日本合作映画 監督アッシュ・メイフェア
ネタバレあり
アッシュ・メイフェアなるベトナム監督がものした本作は、同国の映画監督で唯一知るトラン・アン・ユンほど芸術寄りではないが、似た香りはする。
トランスジェンダー女性のサン(チャン・クアン)はボクサーのナム(ヴォー・ディエン・ザー・フィ)と恋仲で、性転換手術の為に見つけ出したパトロン(井上肇)に金を出してもらうが、手術をするタイの病院で自傷行為を沙汰されて、すぐに手術はできないと言われる。
他方、精神的なすれ違いが色々ある中でナムは少女娼婦ミミ(ファム・ティ・キム・ガン)に慰めを求めるうちに彼女を妊娠させる。
この映画の好ましいところは、彼の祖母がトランスジェンダー女性のサンとの関係を認めつつ、ひ孫を希望して他の女性との交渉を希望している為、ミミの存在を喜び、サンを含めて彼らと感じの良い関係を築くこと、そしてサンもミミに変な嫉妬をせず妹のように彼女に接することである。
サンにおいては、いかに愛するナムの子供とは言え、自らが子供を産めない体であることを考えれば、無駄な嫉妬に走っても不思議ではない。ミミに変な悲壮感がないのも良い。非常に小柄であどけないので13歳くらいと思ったが、妊娠した時は17歳くらいという設定だ。
そして後半。三人で海辺へバカンスに出て寝過ごし夜の峠を越えようとした時に不良グループに絡まれた結果正当防衛的にグループのボスを叩きのめして殺してしまう。検察官の偏見による悪どい誘導を無視して裁判官は非常に賢明な判断を下して、正当防衛による無罪を言い渡す。
しかし、総合的に勘案した結果、サンはナムを自分と切り離して、ミミとの生活に送り出すのである。あるいはパトロンに被害者家族への慰謝料が必要なナムの為に取引をした時の条件が “ナムと切れること” だったのかもしれない。
邦題のせいもあってサンは日陰の女っぽい印象がある幕切れとなっているが、案外ふっきれた顔をしていたようにも見える。
先述したようにこの映画の良さはぎすぎすしない人間関係にあるだろうから、屋外のリリカルな叙景などと合わせて楽しめば良いと思う一方、少しマイルドすぎると感じないでもない。
クロス・カッティング(もしくはカット・バック)の好きな監督らしい。ナムの激しい闘いとサンをめぐる静かな佇まいとの対照的なクロス・カッティングが2か所と、裁判模様と過去の場面とのクロス・カッティングがある。後者はフラッシュバックと言っても良いのだが、構成からクロス・カッティングのパラレル編集ように感じた。前者はもう少し整理した方がぐっとタイトに締まった映画になっただろう。
「ブラザー・ナム、シスター・サン」などと昔の映画の題名を洒落に使っても若い人にはピンと来ないでしょうな。
ベトナム=シンガポール=日本合作映画 監督アッシュ・メイフェア
ネタバレあり
アッシュ・メイフェアなるベトナム監督がものした本作は、同国の映画監督で唯一知るトラン・アン・ユンほど芸術寄りではないが、似た香りはする。
トランスジェンダー女性のサン(チャン・クアン)はボクサーのナム(ヴォー・ディエン・ザー・フィ)と恋仲で、性転換手術の為に見つけ出したパトロン(井上肇)に金を出してもらうが、手術をするタイの病院で自傷行為を沙汰されて、すぐに手術はできないと言われる。
他方、精神的なすれ違いが色々ある中でナムは少女娼婦ミミ(ファム・ティ・キム・ガン)に慰めを求めるうちに彼女を妊娠させる。
この映画の好ましいところは、彼の祖母がトランスジェンダー女性のサンとの関係を認めつつ、ひ孫を希望して他の女性との交渉を希望している為、ミミの存在を喜び、サンを含めて彼らと感じの良い関係を築くこと、そしてサンもミミに変な嫉妬をせず妹のように彼女に接することである。
サンにおいては、いかに愛するナムの子供とは言え、自らが子供を産めない体であることを考えれば、無駄な嫉妬に走っても不思議ではない。ミミに変な悲壮感がないのも良い。非常に小柄であどけないので13歳くらいと思ったが、妊娠した時は17歳くらいという設定だ。
そして後半。三人で海辺へバカンスに出て寝過ごし夜の峠を越えようとした時に不良グループに絡まれた結果正当防衛的にグループのボスを叩きのめして殺してしまう。検察官の偏見による悪どい誘導を無視して裁判官は非常に賢明な判断を下して、正当防衛による無罪を言い渡す。
しかし、総合的に勘案した結果、サンはナムを自分と切り離して、ミミとの生活に送り出すのである。あるいはパトロンに被害者家族への慰謝料が必要なナムの為に取引をした時の条件が “ナムと切れること” だったのかもしれない。
邦題のせいもあってサンは日陰の女っぽい印象がある幕切れとなっているが、案外ふっきれた顔をしていたようにも見える。
先述したようにこの映画の良さはぎすぎすしない人間関係にあるだろうから、屋外のリリカルな叙景などと合わせて楽しめば良いと思う一方、少しマイルドすぎると感じないでもない。
クロス・カッティング(もしくはカット・バック)の好きな監督らしい。ナムの激しい闘いとサンをめぐる静かな佇まいとの対照的なクロス・カッティングが2か所と、裁判模様と過去の場面とのクロス・カッティングがある。後者はフラッシュバックと言っても良いのだが、構成からクロス・カッティングのパラレル編集ように感じた。前者はもう少し整理した方がぐっとタイトに締まった映画になっただろう。
「ブラザー・ナム、シスター・サン」などと昔の映画の題名を洒落に使っても若い人にはピンと来ないでしょうな。
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