映画評「ガール・ウィズ・ニードル」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2024年デンマーク=ポーランド=スウェーデン=フランス=ベルギー合作映画 監督マグヌス・フォン・ホーン
ネタバレあり
WOWOWで1月にデーヴィッド・リンチの特集があったが、この実質的にデンマーク映画である本作は、彼の出世作「エレファント・マン」(1980年)を想起しないではいられない。
第1次大戦終了直後のコペンハーゲン。戦争が終わっても夫ペータ(ベシーア・セシーリ)の帰還のない若妻カロリーネ(ヴィク・カルメン・ソンネ)は赤貧に苦しみ、夫の死亡証明ができない為に遺族手当も貰えないうちに、縫製工場の工場長=資本家の御曹司ヨルゲン(ホアキム・フィエルストルプ)に見染められて妊娠、彼との結婚を夢見るが、彼の誓いは母親により破られ、工場も首になる。
かかるある日ペータが帰還するも、二目と観られない顔となっていた彼をカロリーネは忌避し、やがて出産すると、養子縁組を副業としているお菓子屋ダウマ(トリーヌ・ディルホム)を子供を委託する。ペータは見世物小屋の雇用者となる。
アパートを追い出されて住む場所のなくなったカロリーネは、ダウマの家にお世話になることを決め、7歳くらいになるが乳を欲しがる“娘”イレーナ(アヴァ・ノックス・マルティン)をあげるなどして距離を縮めていくが、ダウマが赤ん坊を下水に捨てて殺す現場を目撃してショックを受ける。その後ダウマに子供を任せた後心変わりした母親が家に入れて貰えなかったことから警察が出る騒ぎになって、旧悪が明るみに出る。
カロリーネは孤児院に入れられたイレーナを養子にすることを決める。
「エレファント・マン」は特異な容貌をした男性を主人公にした実話ものであったが、顔を失った男性が同じように見世物にされる本作も実話ものである。モノクロであることも共通点。そして、共に、ヒューマンな要素を多分に持つホラー映画ではないだろうか。 IMDb は、他のジャンルと共に心理ドラマ(実質的に心理サスペンス)としている。
僕はまた、この映画の時代背景となった1920年代のフリッツ・ラングの諸作を思い出していた。日本初登場のスウェーデン人監督マグヌス・フォン・ホーンも意識しているはずで、あるいはスウェーデンの神秘主義映画も参考にしているかもしれない。
ダウマのやったことは鬼畜の所業であるが、養子に出すと信じていたとは言え子供を捨てる親は彼女とどれほどの差があると言うのか。そしてその親たちは、あるいはダウマも含めて、社会の犠牲者とも言えると僕は思うわけで、“ろくでなししか出て来ない”という意見は狭量と言わざるを得ない。実に厳しく、善悪を併せ持つ人間を見つめた秀作と思う。
モノクロの画面に耽溺すべし。
寒いですねえ。東北以北と日本海側は大雪、関東でも雪が予想され、明日の投票率はかなり低くなると思う。選挙と言えば、意見が極端に二分されがちである。どちらの立場にしても二元論は危険だから、僕は中庸を目指している。
2024年デンマーク=ポーランド=スウェーデン=フランス=ベルギー合作映画 監督マグヌス・フォン・ホーン
ネタバレあり
WOWOWで1月にデーヴィッド・リンチの特集があったが、この実質的にデンマーク映画である本作は、彼の出世作「エレファント・マン」(1980年)を想起しないではいられない。
第1次大戦終了直後のコペンハーゲン。戦争が終わっても夫ペータ(ベシーア・セシーリ)の帰還のない若妻カロリーネ(ヴィク・カルメン・ソンネ)は赤貧に苦しみ、夫の死亡証明ができない為に遺族手当も貰えないうちに、縫製工場の工場長=資本家の御曹司ヨルゲン(ホアキム・フィエルストルプ)に見染められて妊娠、彼との結婚を夢見るが、彼の誓いは母親により破られ、工場も首になる。
かかるある日ペータが帰還するも、二目と観られない顔となっていた彼をカロリーネは忌避し、やがて出産すると、養子縁組を副業としているお菓子屋ダウマ(トリーヌ・ディルホム)を子供を委託する。ペータは見世物小屋の雇用者となる。
アパートを追い出されて住む場所のなくなったカロリーネは、ダウマの家にお世話になることを決め、7歳くらいになるが乳を欲しがる“娘”イレーナ(アヴァ・ノックス・マルティン)をあげるなどして距離を縮めていくが、ダウマが赤ん坊を下水に捨てて殺す現場を目撃してショックを受ける。その後ダウマに子供を任せた後心変わりした母親が家に入れて貰えなかったことから警察が出る騒ぎになって、旧悪が明るみに出る。
カロリーネは孤児院に入れられたイレーナを養子にすることを決める。
「エレファント・マン」は特異な容貌をした男性を主人公にした実話ものであったが、顔を失った男性が同じように見世物にされる本作も実話ものである。モノクロであることも共通点。そして、共に、ヒューマンな要素を多分に持つホラー映画ではないだろうか。 IMDb は、他のジャンルと共に心理ドラマ(実質的に心理サスペンス)としている。
僕はまた、この映画の時代背景となった1920年代のフリッツ・ラングの諸作を思い出していた。日本初登場のスウェーデン人監督マグヌス・フォン・ホーンも意識しているはずで、あるいはスウェーデンの神秘主義映画も参考にしているかもしれない。
ダウマのやったことは鬼畜の所業であるが、養子に出すと信じていたとは言え子供を捨てる親は彼女とどれほどの差があると言うのか。そしてその親たちは、あるいはダウマも含めて、社会の犠牲者とも言えると僕は思うわけで、“ろくでなししか出て来ない”という意見は狭量と言わざるを得ない。実に厳しく、善悪を併せ持つ人間を見つめた秀作と思う。
モノクロの画面に耽溺すべし。
寒いですねえ。東北以北と日本海側は大雪、関東でも雪が予想され、明日の投票率はかなり低くなると思う。選挙と言えば、意見が極端に二分されがちである。どちらの立場にしても二元論は危険だから、僕は中庸を目指している。
この記事へのコメント
これと「アノーラ」が昨年観たベスト2です。
(たまたま女性が主人公の映画2作だけになってしまいましたが、そもそもあんまり映画を観ていないし観てもすぐ忘れる為、記憶に残っているのがこれくらいなのでご容赦願います)
> “ろくでなししか出て来ない”という意見は狭量と言わざるを得ない。
そういう人たちは“間引き” とは人間にも適用される言葉だったとはご存知ないのだと思います。日本でもつい百数十年前までは貧しい農村では口減しに赤子を水に沈めるのは珍しくなかった行為なんですけどね。
今でもお地蔵さんが道端でみられるのはその名残だと思います。
ラストにささやかな救いがあって良かったです。
実に厳しく、善悪を併せ持つ人間を見つめた秀作と思う。
>これと「アノーラ」が昨年観たベスト2です。
「アノーラ」は昨年のマイ・ベスト10には入りませんでしたが、なかなか面白かったですね。ロシアは僕とは縁が深いですし。
本作は、本年のベスト10に入るでしょう。素晴らしかった。
>そういう人たちは“間引き” とは人間にも適用される言葉だったとはご存知ないのだと思います。
昔を知らん連中が多すぎます。
現在の日本及び日本人は日本の歴史の中では出来たてのほやほや状態なんですけどね。