映画評「名探偵ポワロ:五匹の子豚」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2003年イギリス映画 監督ポール・アンウィン
ネタバレあり

【読了後すぐ「名探偵ポワロ」を鑑賞するシリーズ】の第2弾。

“回想の殺人”ものとして読むべき作品として常連のモカさんから紹介されたので、忘れないうちにまず本を図書館から借りて来た。

TVドラマでは14年前の殺人となっていて、原作より期間は短い。
 画家の夫アミアス(エイダン・ギーレン)毒殺した罪で絞首刑(原作では終身刑で、獄死)になったキャロライン・クレイル(小説の訳ではカロリンとなっている=レイチェル・スターリング)の娘ルーシー(原作ではカーラ即ちキャロラインで、母親と同じ=エイミー・マリンズ)が、母親の冤罪を晴らそうとポワロ(デーヴィッド・スーシェ)に調査を依頼する。
 ポワロは、絵画の前で毒殺された当日に現場近くにいた関係者5人即ちアミアスの幼馴染で毒に詳しいアマチュア研究家メレディス(マーク・ウォーレン)、その弟でキャロラインを憎んでいたと見られるフィリップ(トビー・スティーヴンズ)、キャロラインの年の離れた妹アンジェラ(少女期タルラー・ライリー、成人期ソフィー・ウィンクルマン)、その家庭教師ウィリアムズ先生(ジェマ・ジョーンズ)、そして彼女から夫を奪おうとしているモデルの美少女エルサ・グリアー(ジュリー・コックス)に事件のあらましを語ってもらうが、些か違うところが出て来る。

この過程は所謂「藪の中」(映画「羅生門」)状態である。原作もそれほど長くないが、当時93分前後でまとめるという制約があったらしいこのTVシリーズ故の時間制限の為に大きな変更が加えられている。
 小説ではポワロは5人にインタビューした後さらに彼らに詳細な文章をしたためて貰うのを、供述だけにして文章で初めて示されたことも語りの流れの中で紹介されるという構成にした。当然文章を画面に延々出すわけにも行かないから合理的な判断であり、屋上屋を架すようなマイナス面も避けられるというメリットもあり、避けがたい再構築と言うべし。

判決通りのキャロライン犯人説四人、自殺説一人であるが、キャロライン犯人説の中にも彼女を擁護する立場の者もいる。さて真相は?というお話で、アガサ・クリスティーがエラリー・クイーンやヴァン・ダインより(とりわけ女性に)人気なのは、人間への関心が他の本格ミステリー作家より強く、純文学の要素が多分にあるからだろう。
 本作でも、犯人が誰かということより、キャロラインやアミアスの人となりの理解が各人違っている辺りに大いに考えさせるものがある。

かくして僕が考えた犯人と犯行理由が途中までは当たっていると思わせておきながら、 アガサおばさんはそれほど単純ではありませんで、 “お前の考えることなどまるっとお見通しだ” とばかりに見事ひっくり返されました。 最近このパターンが多い。

本格ミステリーはお話の面を詳細に書けない制約(紳士協定)があるからぼんやりと書いたが、全体として映画ファンでも一通り楽しめる出来と思う。もう少し放送時間が長ければ、田園風景を多めに収めて環境描写をじっくり為すことができ、劇場用映画にも遜色のない出来栄えと感じられただろう。

原書で読んでいないので不明ながら日本語訳でのカロリンは恐らくCaroline であろう。英語の綴りと発音の原則的関係もしくはルールを知っていれば、こういう誤った表記にならない。line の e は所謂黙字であるが、この黙字は結構前の発音に影響を与える。 lin であれば “リン” となるところを e がつくことで ”ライン” に変わるのだ。

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