映画評「かくかくしかじか」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2025年日本映画 監督・関和亮
ネタバレあり

東村アキコの手になる同名自伝コミックの映画化。彼女は、僕も実写映画化版を観た「海月姫」(2004年)の原作者だそうな。すっかり忘れておりました。

美大出身の漫画家を目指す林明子(永野芽郁)は、その為に同級生の進める月謝5000円の絵画教室に通い始める。講師の日高(大泉洋)は徹底したスパルタで、現在どころか当時でもコンプライアンスの問題になりそうな超スパルタで接してくる。しかし、人は良さそうで腹痛と嘘を言って早引けする彼女をバイクでバス停留所まで送ってくれる。
 いつも “絵を描け” とだけ言う日高のスパルタが効いたか、第2志望の金沢美術工芸大学に何とか合格するも、恋愛もどきの経験を始めキャンパス・ライフを満喫するだけで、絵は大して書かない。
 大学卒業後も正業に就かない彼女を、普段は親バカの父親 (大森南朋)も自社(WikipediaによりますとNTT)のコールセンターに勤めさせる。同時に、日高教室のアシスタント講師の二足の草鞋を履きつつ漫画も集英社に送ったところが好評で、事情があって発表には至らないものの、次作で見事に発表に漕ぎつけるのだ。
 が、その頃日高は末期癌を発症し、帰らぬ人となる。彼の弟子たちが葬儀に集って亡き恩師に思いを馳せる。

という内容は、こう書くと凡庸にも思えるが、日高講師のひたすら “描け” と言うスパルタぶりが面白く、ヒロインの基本的に楽観的な性格とが妙なバランスとなって一定以上に楽しめる作品になっている。天真爛漫な永野芽郁、瞬発力のある大泉洋らしい役柄もうまく合っている。

昨日の「35年目のラブレター」に続いて主人公の横に故人が座って話をする場面が最終盤に出て来る。どちらも実話もので、面白い偶然ですな(実はまだまだ続く)。

映画は、本原作によりマンガ大賞を受賞したところから回想が始まるので、映画はちょっとした入れ子構造、メタフィクションとなっている。
 東村アキコの本名は林ではなく森というそうで、一種の仮名で作られている。だから、実質自伝なのに、自伝と書かざるを得ないわけですな(僕は敢えて書かなかったけれど)。

永野芽郁は本作公開直前に不倫問題が沙汰されて、その後殆どまともな芸能活動ができなくなっているのが甚だ残念。そうした潔癖性を持つ輩はまるで儒教時代の感覚の人間でござるよ。背景にその人の諸事情があることを考えれば、不倫などは概ね大した問題ではない。配偶者にDVやサイコパスなど色々問題があって結果的に不倫に至った人を糾弾する人は(不倫する人に対し人間ではないと言ったお笑い女性芸人がいたが)それこそ人間ではない。他人に寛容でない人間は、いつかきっとひどい目に遭うことになるだろう。永野芽郁、頑張れ!

のん(かつての能年玲奈)が「海月姫」実写映画版に主演した後、所属するプロダクションともめ干されていた期間があると記憶する。東村アキコとは直接関係のないことなのだが、どうも彼女絡みの映画に出ると良くない現象に遭遇するようだ。

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