映画評「年少日記」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2023年香港映画 監督ニック・チェク
ネタバレあり
最近では珍しい純香港映画である。というのも近年中国との合作扱いの作品ばかりだったからで、そのせいか暑苦しくない。
中国本土との合作で、虐められる女生徒の自殺を扱った「少年の君」(2019年)という作品があり、あの作品は中国映画でも珍しいほどに最後に中国政府へのおべっかで終わってガッカリさせられた。同じように年少者の自死を扱っても、それに比べればすっきり観られたということです。
ある高校で自殺を仄めかす手紙を発見される。
青年教師チェン(ロー・ジャンイップ)が手紙を書いた生徒を探し出そうとするが、進学試験を目前に生徒に聞きまわるわけにも行かず難儀するうち、小学生時代の経験を思い起こす。躾の厳しい父親は、出来の良い弟と、比べるまでもなく出来の悪い(恐らく1歳違いの)兄を比較する。兄は年がら年中叩かれ、弟は留年して同級生になったそんな兄を馬鹿にする。自らも激しく責められる母親は右往左往する。そんな状況下で兄が飛び降り自殺をする。
観客はここでビックリする。何故なら、回想するチェン先生こそその兄と信じて観ていたからである。兄を見殺しにする形になった弟君は大いに反省して父親に反旗を翻す。
かくして父親は有望な弟にも裏切られ、細君には出て行かれる。現在教師となった弟は、臨終間際の父親に寄り添う心境になり、最後の授業で生徒たちに自分の経験に少し触れ、最後に自分の電話番号を黒板に記す。直後、ある生徒からメールが届く。
こんなお話で、本作でも主人公は兄(の幻想)を見る。何と4作連続して主人公が故人を観る趣向ですよ。最近僕が亡き両親や昨年急死した兄のことをよく考えているせいでもあるまいが、何だか不思議な気持ちがする。
チェン先生は、ちょっとした暴力を振るわれるより、無視される方がつらいのではないかと考えるようになる。つまり自分の取った態度への激しい後悔であり、暴力的だった父への理解にほかならない。序盤に出て来る難聴生徒の暴力事件もちょっとした布石となっているだろう。
孤独に陥りがちな人、とりわけ年少者に対し、他人に頼っても良いんだよというメッセージが響く。メッセージの価値はイコール映画の価値でないものの、非常に丁寧かつ繊細に作られていて好感が持てる。序盤の場面構成にちょっと要領を得ない印象がなきにしもあらずだが。
「年少日記」は原題でもある。現在日本で年少でなく【少年】と言うと、男児の意味になってしまうが、本来はある年齢層を指すだけで性別は関係がない。僕は言葉にうるさく、かつ、ひねくれているので、わざと【少年】に女児を含めて表現することがある。
2023年香港映画 監督ニック・チェク
ネタバレあり
最近では珍しい純香港映画である。というのも近年中国との合作扱いの作品ばかりだったからで、そのせいか暑苦しくない。
中国本土との合作で、虐められる女生徒の自殺を扱った「少年の君」(2019年)という作品があり、あの作品は中国映画でも珍しいほどに最後に中国政府へのおべっかで終わってガッカリさせられた。同じように年少者の自死を扱っても、それに比べればすっきり観られたということです。
ある高校で自殺を仄めかす手紙を発見される。
青年教師チェン(ロー・ジャンイップ)が手紙を書いた生徒を探し出そうとするが、進学試験を目前に生徒に聞きまわるわけにも行かず難儀するうち、小学生時代の経験を思い起こす。躾の厳しい父親は、出来の良い弟と、比べるまでもなく出来の悪い(恐らく1歳違いの)兄を比較する。兄は年がら年中叩かれ、弟は留年して同級生になったそんな兄を馬鹿にする。自らも激しく責められる母親は右往左往する。そんな状況下で兄が飛び降り自殺をする。
観客はここでビックリする。何故なら、回想するチェン先生こそその兄と信じて観ていたからである。兄を見殺しにする形になった弟君は大いに反省して父親に反旗を翻す。
かくして父親は有望な弟にも裏切られ、細君には出て行かれる。現在教師となった弟は、臨終間際の父親に寄り添う心境になり、最後の授業で生徒たちに自分の経験に少し触れ、最後に自分の電話番号を黒板に記す。直後、ある生徒からメールが届く。
こんなお話で、本作でも主人公は兄(の幻想)を見る。何と4作連続して主人公が故人を観る趣向ですよ。最近僕が亡き両親や昨年急死した兄のことをよく考えているせいでもあるまいが、何だか不思議な気持ちがする。
チェン先生は、ちょっとした暴力を振るわれるより、無視される方がつらいのではないかと考えるようになる。つまり自分の取った態度への激しい後悔であり、暴力的だった父への理解にほかならない。序盤に出て来る難聴生徒の暴力事件もちょっとした布石となっているだろう。
孤独に陥りがちな人、とりわけ年少者に対し、他人に頼っても良いんだよというメッセージが響く。メッセージの価値はイコール映画の価値でないものの、非常に丁寧かつ繊細に作られていて好感が持てる。序盤の場面構成にちょっと要領を得ない印象がなきにしもあらずだが。
「年少日記」は原題でもある。現在日本で年少でなく【少年】と言うと、男児の意味になってしまうが、本来はある年齢層を指すだけで性別は関係がない。僕は言葉にうるさく、かつ、ひねくれているので、わざと【少年】に女児を含めて表現することがある。
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