映画評「青春18×2 君へと続く道」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本=台湾合作映画 監督・藤井道人
ネタバレあり

社会派も大衆娯楽映画も作る藤井道人監督が、この人の個性に一番合っているのではないかと勝手に思っているインディ風のタッチで作り上げた青春映画。インディ風ではなく本当にインディなのかもしれないが、その辺はテキトーです。

主人公ジミー(シュー・クァンハン=許光漢)は18歳の高校生の時に、日本からやって来た4歳年上の美人アミ(清原果耶)と知り合う。彼女は、彼がバイトする日本人経営のカラオケ店に旅費稼ぎに仕事を求めにやって来たのである。かくして彼は極東の若者らしく純情な思慕を募らせ告白できないまま、突然彼女に帰国されてしまう。
 それでも溌溂とした彼女からの “夢を叶えたら再会しよう” という言葉に刺激を受けたジミーは大学に合格した後にゲーム制作に没入し、学業も程々に仲間と会社を立ち上げ、忙しい日々を過ごす。が、彼女との関係が途絶えて失意に暮れる彼はワンマンになり、やがて自分の会社から放逐される。
 これを契機に、彼女との出会いから丁度18年後、36(18X2)歳になった彼は、初恋の人が生まれ過ごした福島県を最終目的にする日本への旅に出るのである。

というお話で、福島県という名前が出て来た時にまさか東日本大震災で彼女が死んでいたなどという野暮なことはしないだろうなとちょっと心配しながら観ていた。東日本大震災は一切出て来ないが、やはり彼女は死んでおりました。白血病か? 前半彼女が大声で通話する声が外にまで洩れ聞こえるのがちょっとした伏線になっていましたな。

終盤の場面から推して彼は彼女が死んだことを。事前に恐らく彼女の携帯に電話をした時に、後で福島で会う母親(黒木瞳)に聞かされ知っていたと思う。知らなかったのは観客だけだったようだ。しかし、本作は突然の死病判明で泣かそうという志の低い作品ではないから、彼女の病気を事実上伏せていたのも良しとする。

本作で何よりも良いと思ったのは、ヒロインが台湾で良い人々に巡り会ったように、主人公も気さくな高校生(道枝駿介)、台湾出身の料理店店主(ジョゼフ・チャン)、ネットカフェ?の店員(黒木華)、彼女の故郷のおじさん(松重豊)と素晴らしい一期一会をすることである。
 気持ちの良い人々を観るのは文字通り気持ちが良い。ネット社会で人の悪い面ばかり聞かされるが、そんな人たちばかりではないことを知るのは精神衛生上非常に良い。主人公も日本での素敵な一期一会を経て見事に再生していくと思う。そして、ヒロインのような溌溂とした女性に巡り会いますように。

主人公がヒロインと観る映画が岩井俊二監督「Love Letter」(1995年)で、複数の時系列、小道具としての手紙の活用、雪国を舞台にしたところなど岩井監督へのオマージュもしくはそのエコーが多分に感じられる。カメラを僅かに空に向けて仰角気味に捉えるところも、岩井監督が時に見せるスタイルに近いが、彼のような浮遊する空気感は醸成されない。

青春時代の二人が愛聴した Mr.Children が最後に主題歌を歌う。 彼らも大ベテランになりました。

初めて聞いたミス・チルは「CROSS ROAD」。 Wikipedia によるミス・チルに影響を与えたアーティストにビートルズは入っていないが、この曲にTicket to Rideや Winding Road という措辞があることから彼らもビートルズを聴いてきたことを確信した。その後にも「Tomorrow never knows」という敢えて文法を無視したような、ビートルズと同名の曲まであり、にやっとしたのは僕だけではあるまい。

この記事へのコメント