映画評「誘拐」(1997年)

☆☆★(5点/10点満点中)
1997年日本映画 監督・大河原孝夫
ネタバレあり

原作もののような雰囲気を漂わせるサスペンス・ミステリーであるが、城戸賞を取った森下直によるオリジナル脚本の映画化らしい。監督は一時「ゴジラ」シリーズを何本か担当した大河原孝夫。

東昭物産の専務が誘拐される。犯人側は身代金として3億円を要求、大胆にも受け渡しの様子をTV局が実況するよう条件を付ける。運搬に関連会社の幹部(西沢利明)が選ばれるが、30kを超える運搬という過酷な作業に倒れてしまう。続く関連銀行の幹部も持たず、遂には担当捜査に当たるベテランの津波刑事(渡哲也)が引き継ぎ、癌という病気を抱える彼が倒れると、彼と相棒を組むアメリカ帰りのプロファイラー藤刑事(永瀬正敏)がその指示通り移送の任務を果たすとともに、その目的が一種の殺人ではないかと考え出す。
 それと同時に、誰も3億円の入った袋を持ち去った者がいないのに何故か中身だけが入れ替わるという謎が浮かび上がる。やがて誘拐された専務が誘拐前日に服役経験のある元弁護士・折田(新克利)が会っていたことが判明、彼が担当した山梨県の公害事件に誘拐事件の真相を解くカギがあることを掴んでいく。

というお話で、前半は、身代金受け渡しをTV中継させるというセンセーショナルな劇場型犯罪に推移する、当時の邦画としては華美と言える見せ場を眼目とするが、後半はがらりと変わって、日本的な人情型社会派映画の趣きとなる。
 1975年の「新幹線大爆破」と似た性格であるが、あの映画は最後までスペクタクル性も維持できたので、不満を覚える部分もありつつ、かなりゴキゲンになった。本作は、日本映画の悪い癖を大いに発揮して、それを前半・後半とで二分してしまったので、 映画的に “まずいなあ” という印象になり、 ☆★は水準的なところとせざるを得なかった。
 しかし、情緒に流される後半でも、3億円すり替えに絡む謎を巡ってきちんとミステリーらしさを維持できている時間帯もあるので、それなりに楽しめると言って良いと思う。

僕が小学生の時に発生した三億円事件は遂に未解決に終わりました。

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