映画評「約束の土地」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1975年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり
アンジェイ・ワイダが1970~80年代に作った長尺の作品はどれも面白かった。
実は、45年近く前の東京時代、本作と「大理石の男」と「鉄の男」のワイダ3本立てを東京23区の南部に位置する五反田東映シネマという名画座で観た。朝8時台に大塚のアパートを出、山手線で30分かけて五反田に行き、観終えて家に直帰したら午後7時近くになっていた。二十代で体力がありましたなあ。
先日の「婚礼」に近い時代(19世紀末)、ロシア、オーストリア、プロイセンに分割されていたポーランド。繊維工場が林立するウッチはドイツ資本家が支配する町で、ユダヤ小資本家も町に大きな影響を与えている。ポーランド人の労働者は酷使され、若い女工は経営者の魔の手に落ち、経営に行き詰まった経営者は保険金詐取を目的に放火する。
そんな中で、工場中間管理職などである若者三人即ち、ポーランド人のダニエル・オルブリフスキ、ドイツ人のアンジェイ・セヴェリン、ユダヤ人のヴォイチェフ・プスツォニアックが、アメリカからの生糸輸入関税の引き上げを、オルブリフスキが色事も兼ねて接近したユダヤ人資本家の妻から知るなどして、上手く資本金を集めて工場経営を始めるが、二人の浮気を知った経営者の指示により工場が放火され、保険をかけていなかった為に、無一文になる。
数年後ドイツ人資本家の少々足りないような娘と結婚していたオルブリフスキは、トップとして、ストライキを起こす労働者リーダーの殺害を命じる。
実は反体制の要素を含んでいるが、当時ポーランドを支配していた社会主義体制検閲者は、労働者の敵である資本家の冷徹・無慈悲がこれでもかとばかりに描かれているので、寧ろ歓迎したと思う。現にポーランドの宗主国のようだったソ連のモスクワ映画祭金賞を受賞している。それよりアカデミー賞の外国語映画賞の候補になっているのが凄い。
ユダヤ人も出て来るが、勿論「約束の土地」はユダヤ人のそれではなく、ウッチを我が物にするというポーランド青年の夢を意味するが、民族の違う三青年が共同で経営するという理想主義が失敗に終わった後、主人公が失意に沈まず現実主義者として甦るラストをもって、ワイダはポーランド人の悲劇的な運命に悲痛の思いを投じているのである。
相当興味深いだけでなく、ワイダの映画の中でも鮮烈な印象を与える有数の秀作と思う。
ポーランドがウクライナに侵攻したロシアを怖がるのは史実からよく解るというもの。時代・体制を問わず、あの国の独裁者の野望は果てしない。
1975年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり
アンジェイ・ワイダが1970~80年代に作った長尺の作品はどれも面白かった。
実は、45年近く前の東京時代、本作と「大理石の男」と「鉄の男」のワイダ3本立てを東京23区の南部に位置する五反田東映シネマという名画座で観た。朝8時台に大塚のアパートを出、山手線で30分かけて五反田に行き、観終えて家に直帰したら午後7時近くになっていた。二十代で体力がありましたなあ。
先日の「婚礼」に近い時代(19世紀末)、ロシア、オーストリア、プロイセンに分割されていたポーランド。繊維工場が林立するウッチはドイツ資本家が支配する町で、ユダヤ小資本家も町に大きな影響を与えている。ポーランド人の労働者は酷使され、若い女工は経営者の魔の手に落ち、経営に行き詰まった経営者は保険金詐取を目的に放火する。
そんな中で、工場中間管理職などである若者三人即ち、ポーランド人のダニエル・オルブリフスキ、ドイツ人のアンジェイ・セヴェリン、ユダヤ人のヴォイチェフ・プスツォニアックが、アメリカからの生糸輸入関税の引き上げを、オルブリフスキが色事も兼ねて接近したユダヤ人資本家の妻から知るなどして、上手く資本金を集めて工場経営を始めるが、二人の浮気を知った経営者の指示により工場が放火され、保険をかけていなかった為に、無一文になる。
数年後ドイツ人資本家の少々足りないような娘と結婚していたオルブリフスキは、トップとして、ストライキを起こす労働者リーダーの殺害を命じる。
実は反体制の要素を含んでいるが、当時ポーランドを支配していた社会主義体制検閲者は、労働者の敵である資本家の冷徹・無慈悲がこれでもかとばかりに描かれているので、寧ろ歓迎したと思う。現にポーランドの宗主国のようだったソ連のモスクワ映画祭金賞を受賞している。それよりアカデミー賞の外国語映画賞の候補になっているのが凄い。
ユダヤ人も出て来るが、勿論「約束の土地」はユダヤ人のそれではなく、ウッチを我が物にするというポーランド青年の夢を意味するが、民族の違う三青年が共同で経営するという理想主義が失敗に終わった後、主人公が失意に沈まず現実主義者として甦るラストをもって、ワイダはポーランド人の悲劇的な運命に悲痛の思いを投じているのである。
相当興味深いだけでなく、ワイダの映画の中でも鮮烈な印象を与える有数の秀作と思う。
ポーランドがウクライナに侵攻したロシアを怖がるのは史実からよく解るというもの。時代・体制を問わず、あの国の独裁者の野望は果てしない。
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