映画評「おーい、応為」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2025年日本映画 監督・大森立嗣
ネタバレあり

飯島虚心による葛飾北斎の伝記と杉浦日向子による葛飾応為の伝記小説を基に、現代ドラマの映画作家大森立嗣が自ら脚本を書き、映像に移した。時代劇だが、日本の元号は出ない。

1820年に応為ことお栄(長澤まさみ)が嫁いだ絵師・南沢等明に離縁され、父・葛飾北斎こと鉄蔵(永瀬正敏)の家に戻って来る。家と言っても引っ越しの多い北斎のことだから良く分かったもので、これを考えても普段から付き合いは続けていたと思われる。
 以降、北斎の弟子・魚屋北渓(大谷亮平)に密かに思慕を寄せ、北斎を私淑する画家志願、後の渓斎英泉(高橋海人)を可愛がるが、満たされぬ思いは拾ってきてやがてさくらと名付ける柴犬により代替とする。
 かくして年が経ち、(暫くのはずが)1849年に北斎が亡くなるまで二人の同居生活は続くことになる。

生死の年がはっきりしない応為の伝記映画の体裁であるが、終始悪口の言い合いでオブラートされた父娘の強い絆が主題であろう。しかし、その絆には、共依存のようなところがありはしないか。
 彼女は画業バカの父親の面倒を見ないといけない思いが募って、出戻り後彼から離れようとせず、そこで生まれるのが、成人女性であれば沸き上がる筈の他者との関係を求められないというジレンマである。

大森監督は、現在の女性に通ずるヒロインの性格もあり、非常に現在的な映像感覚をもって描き続け、それでいて、存外しっかりした時代劇に仕立て上げたのは殊勲と思う。面白くないという評価が目立つが、現在の心理学を援用したくなる親子関係を中心に結構興味深く観られた。

葛飾応為の「吉原格子先之図」は当時の日本画を超えた傑作と思う。洋画は既に観ていたかもしれない一方、彼女が知る筈もないレンブラントのようである。

妹の生霊が現れる場面は、本作と同じ杉浦日向子の小説をアニメ化した「百日紅~Miss HOKUSAI~」にも出て来た。そういうことはありますかねえ。

15年前に亡くなった母親が少女時代、妹二人といる時に、遠く離れた伯父さんの生霊らしきものに出会ったらしい。但し、女性の姿だった。そして、翌日伯父さんの訃報が届いた、と言う。母が魚の夢を見ると近所の人か親戚の誰かが亡くなった。

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