映画評「探偵マーロウ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年アイルランド=スペイン=フランス=アメリカ合作映画 監督ニール・ジョーダン
ネタバレあり

探偵マーロウとあればフィリップ・マーロウのことだろうと思う一方、レイモンド・チャンドラーの映画化であればこんなタイトルはつけないだろうと考えた。すぐに分かったことには、ジョン・バンヴィル(ベンジャミン・ブラック名義)が書いた「黒い瞳のブロンド」というパスティーシュの映画化なのである。
 シリーズ第6作「ロング・グッドバイ(長いお別れ)」の公認続編ということらしいが、どちらかと言えば「ロング・グッドバイ」の次のマーロウものという感じではないか。本人が書いたものとしては未完成に終わった「プレイバック」という本当の第7作がありますが。

マーロウ(リーアム・ニースン)の前に謎めいたクレア・キャヴェンディッシュ(ダイアン・クルーガー)と名乗る美女が現れ、ニコ・ピータースン(フランソワ・アルノ―)という男優をする恋人を探してほしいと依頼する。理由その他は不明。
 彼は、すぐにこの男が轢死体として発見されていたことを知るが、依頼者は街角で男を見かけたと言い張る。かくして男も関連している危険な上流階級の人々が出入りする会員制クラブに探りを入れる必要が生じ、男優の妹を拉致するメキシコ人二人をボディガードに付けた親玉ヘンドリックス(アラン・カミング)に脅迫される。
 クレアの母親にして、英国大使とアヴァンチュールの噂のあるかつての有名女優ドロシー(ジェシカ・ラング)も娘の依頼に口を挟み、かくしてマーロウは一連の事件が上流階級の麻薬密買絡みであり、母娘の目的もそこにあると見当を付ける。

というお話は、勿論マーロウもののルーティンに則って進む。

IMDbでの平均投票点5.4(中間点5.5を下まわる)は低すぎると感じる一方、その理由を考えると、高齢すぎる70歳のニースンが40代と想定されるマーロウを演じているということが、日本人より合理的で冷徹な考え方をする欧米人の目にはひどいと映ったのではないか。
 動きが悪いかどうかはともかく、奪還ものに活躍してきたニースンは映画におけるどのマーロウよりもフィジカル的に強い感じがする。皮肉なものですな。
 ハンフリー・ボガードの場合マーロウとして良いか悪いかを超えてオーラが凄くて彼のマーロウを否定する人は少ないだろうし、映画的ムードという点ではロバート・ミッチャムがマーロウに扮する「さらば愛しき女よ」(1975年)が素晴らしく、本作にそこまで求めるのは無理という気がする。

じっくり進展させた前半に比べて終盤が慌ただしいものの、一応は理解できるレベル。要は、英国大使とのアヴァンチュールを母娘で競い合う母娘が麻薬絡みのスキャンダルから相手を救うべく各々奮闘するという、よく考えると変な話である。

かつてダイアン・クルーガーを見るとジェシカ・ラングをよく思い出した(そう似ているというわけではない)ものだが、本当に母娘役をやるとは!

監督は実績に不足はないアイルランドのニール・ジョーダンで、実質的にアイルランド映画のマーロウものという変わり種。

メーカー勤務の時に先輩が或る外国人をつかまえて“この人はきっと楽しい人でしょうね”と上司に言った。上司は首を傾げた。ジョーダン(冗談)がその人の苗字だった。

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