映画評「8番出口」

☆☆★(5点/10点満点中)
2025年日本映画 監督・川村元気
ネタバレあり

コンピューター・ゲームの映画化。RPGの類ではない。

地下鉄を降りた男がエッシャーの騙し絵と言うか【メビウスの輪】のようになった構内から出られなくなるという設定で、最終的に出る為に【8番出口】という表示を探さなければならない。
 二宮和也の主人公が初めてそこを通る時は【0番出口】であり、“構内の異変がない時は前進”“構内に異変なき場合は後退”というルールをきちんと守っていくと出口の番号がどんどん上がっていき、8番になった時に本当の出口に行けるのである。

この辺りがクリア型のゲームらしさが存分に発揮されてい、長回しのカメラで見せていくところに映画的な面白さがあるだろう。しかし、それだけではお話にならないので、満員電車で泣き叫ぶ赤ん坊を抱えた母親に怒鳴る男に何もできなかったことを第一の布石に、恋人から妊娠を告げられて判断できないことを第二の布石にしてお話が進む。

厳密には、第二の布石は布石どころか主題であり、彼がこの迷宮に入る原因と理解できる。つまり、この出口なしの状態は恋人に出産させるか否かを決断できずに低回する彼の心理にほかならない。
 そして、途中現れる男児(浅沼成)は彼らが持つであろう子供の未来の姿で、男児を助けることにより主人公は助けられるのである。すると、二人目の主人公のような “おじさん”(河内大和)は彼の父親かと先走ってしまうが、そうではあるまい。

かかるドラマ性を投入することでサスペンス映画としての純度は下がる反面、延延と同じようなことを繰り返して見せるだけでも飽きてしまうから、作劇として認めざるを得ないところだろう。

遂に出口を出た彼は再び満員電車に乗り込み、プロローグと全く同じ場面に出くわす。彼は怒鳴る男の方に向うはずと予想した通り動き出したところで本編は終わり。これがベストである。彼が助けるところまで見たかったという意見は野暮です。

お話が円環することになるから、気持ち悪い幕切れでもありますがね。

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