映画評「大理石の男」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1977年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり
僕が映画ファンとなった1970年代初めにおいて、日本でアンジェイ・ワイダは半ばレジェンド的な監督になっていたように思う。同時代的に作品を発表していたが、未公開に終わる(後年公開される)ことが多く、1980年に本作が公開されるまで「灰とダイヤモンド」と「地下水道」が時々沙汰される感じだったと記憶する。
この作品が公開されて話題を呼んでから旧作が公開され、新作はほぼ同時代に公開されるようになって復活、現在に至る感じ。本作日本公開の年に結成されたポーランドの労働組合【連帯】がワイダには完全に追い風となった。
先日の「約束の土地」で述べたようにワイダ大長編3本立てで観た一本。9時間近くほぼ座りっぱなしだった。映画館の中で食事をする習慣がなかった僕でも、さすがにパンくらいは持って行っただろうか?
現在、映画大学のアグニェシカ(クリスティナ・ヤンダ)は卒業制作として労働英雄テーマに決める。博物館で1950年代前半に英雄に祀り上げられ大いに話題になった後消息不明になったレンガ工の青年ビルクート(イエジー・ラジウィオウィッチ)の大理石像を発見して彼を取り上げることにする。
まず彼がレンガ工として奮闘する姿を捉えた映画の監督ブルスキを訪れ、まずは英雄時代の彼について語ってもらう。その後誰かの陰謀で手に火傷を負った彼がその加害者として捕らえられた同僚ヴィテクと共に服役することになり、出所後の発言が元で干され行方をくらますまでの経緯が、ストリップ場の支配人、復権して官僚幹部に出世したヴィテク、そして自身の妻ハンカにより明らかになっていく。
ミステリアスな人物、あるいは人物のミステリアスな行動を巡って記者なりが関係者を歴訪する形の映画を成立させた嚆矢あるいは決定的な名作「市民ケーン」(1940年)を想起させる内容。日本映画にも「軍旗はためく下に」(1970年)という戦争絡みの秀作や、その設定をパクったのではないかと疑っている「永遠の0」(2013年)などもこの形である。
製作のバックアップをすることになっていたTV局は決め手を欠くとして彼女の企画を没にするが、不撓不屈の精神で復活した彼女は今は亡きビルクートの息子(ラジウィオウィッチ二役)を探し当て、TV局に乗り込む。
この場面も最初の場面も廊下を闊歩する長身のヒロインをトラックバックで捉えて印象深い。
彼女の撮影スタッフが撮る場面が映画の場面にもなるという一種のメタフィクション仕様(珍しくも何ともないですが)で、架空のドキュメンタリー監督と思われるブルスキの撮った作品の助監督がアンジェイ・ワイダとなっている茶目っ気がある。
ソ連の傀儡にすぎなかったかつてのポーランドを浮かび上がらせる内容で、このような共産独裁体制への批判を内在する作品が作られただけでも、本作が見せる1950年代とは明らかに違うポーランドの現況(77年当時の状況)が解って来るのが収穫だ。
歴訪ミステリー・タイプの作品は好みなので相当面白く観たとは言いながら、映画的な潤いという意味ではモノクロ時代に及ばないという印象を覚える。
僕の評価とは別に、ビルクートの息子がグダニスクの造船所の労働者であるという設定によりグダニスクのレーニン造成所のストライキを発端とする【連帯】の結成を予言したような作品という評価も為されているようだ。
3本立て8時間半で僅か500円。非常に安かったですな。尤も、僕が東京に出る前、新聞の映画欄で池袋文芸坐が2本立てを学割100円で見せていたことを知った時は腰を抜かした。当時田舎のなんちゃってロードショー(ロードショーと名画座の間くらい)でも2本立てで700円だったのだから。その数年後僕が実際に憧れの文芸坐に行った時には400円に“高騰”していたが。映画興行はインフレしましたよ。国公立大学の学費と似た感覚かな。飲食物が全然上がらなかったのとは対照的なのだ。
1977年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり
僕が映画ファンとなった1970年代初めにおいて、日本でアンジェイ・ワイダは半ばレジェンド的な監督になっていたように思う。同時代的に作品を発表していたが、未公開に終わる(後年公開される)ことが多く、1980年に本作が公開されるまで「灰とダイヤモンド」と「地下水道」が時々沙汰される感じだったと記憶する。
この作品が公開されて話題を呼んでから旧作が公開され、新作はほぼ同時代に公開されるようになって復活、現在に至る感じ。本作日本公開の年に結成されたポーランドの労働組合【連帯】がワイダには完全に追い風となった。
先日の「約束の土地」で述べたようにワイダ大長編3本立てで観た一本。9時間近くほぼ座りっぱなしだった。映画館の中で食事をする習慣がなかった僕でも、さすがにパンくらいは持って行っただろうか?
現在、映画大学のアグニェシカ(クリスティナ・ヤンダ)は卒業制作として労働英雄テーマに決める。博物館で1950年代前半に英雄に祀り上げられ大いに話題になった後消息不明になったレンガ工の青年ビルクート(イエジー・ラジウィオウィッチ)の大理石像を発見して彼を取り上げることにする。
まず彼がレンガ工として奮闘する姿を捉えた映画の監督ブルスキを訪れ、まずは英雄時代の彼について語ってもらう。その後誰かの陰謀で手に火傷を負った彼がその加害者として捕らえられた同僚ヴィテクと共に服役することになり、出所後の発言が元で干され行方をくらますまでの経緯が、ストリップ場の支配人、復権して官僚幹部に出世したヴィテク、そして自身の妻ハンカにより明らかになっていく。
ミステリアスな人物、あるいは人物のミステリアスな行動を巡って記者なりが関係者を歴訪する形の映画を成立させた嚆矢あるいは決定的な名作「市民ケーン」(1940年)を想起させる内容。日本映画にも「軍旗はためく下に」(1970年)という戦争絡みの秀作や、その設定をパクったのではないかと疑っている「永遠の0」(2013年)などもこの形である。
製作のバックアップをすることになっていたTV局は決め手を欠くとして彼女の企画を没にするが、不撓不屈の精神で復活した彼女は今は亡きビルクートの息子(ラジウィオウィッチ二役)を探し当て、TV局に乗り込む。
この場面も最初の場面も廊下を闊歩する長身のヒロインをトラックバックで捉えて印象深い。
彼女の撮影スタッフが撮る場面が映画の場面にもなるという一種のメタフィクション仕様(珍しくも何ともないですが)で、架空のドキュメンタリー監督と思われるブルスキの撮った作品の助監督がアンジェイ・ワイダとなっている茶目っ気がある。
ソ連の傀儡にすぎなかったかつてのポーランドを浮かび上がらせる内容で、このような共産独裁体制への批判を内在する作品が作られただけでも、本作が見せる1950年代とは明らかに違うポーランドの現況(77年当時の状況)が解って来るのが収穫だ。
歴訪ミステリー・タイプの作品は好みなので相当面白く観たとは言いながら、映画的な潤いという意味ではモノクロ時代に及ばないという印象を覚える。
僕の評価とは別に、ビルクートの息子がグダニスクの造船所の労働者であるという設定によりグダニスクのレーニン造成所のストライキを発端とする【連帯】の結成を予言したような作品という評価も為されているようだ。
3本立て8時間半で僅か500円。非常に安かったですな。尤も、僕が東京に出る前、新聞の映画欄で池袋文芸坐が2本立てを学割100円で見せていたことを知った時は腰を抜かした。当時田舎のなんちゃってロードショー(ロードショーと名画座の間くらい)でも2本立てで700円だったのだから。その数年後僕が実際に憧れの文芸坐に行った時には400円に“高騰”していたが。映画興行はインフレしましたよ。国公立大学の学費と似た感覚かな。飲食物が全然上がらなかったのとは対照的なのだ。
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