映画評「宝島」(2025年)
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2025年日本映画 監督・大友啓史
ネタバレあり
上映時間の長さに躊躇したが、なかなか面白かった。東京新聞がよく沖縄の基地問題を取り上げ、その中で沖縄の戦後史が語られることが多くそれなりに知識があったからだろう。この辺りを何も知らないで観ても面白味は半減するに違いない。娯楽大作とは言え、知識がなくても楽しめるタイプの大衆映画ではない。
1952年アメリカに統治されていた沖縄。戦果アギャーと呼ばれるグループが米軍基地に忍び込み、食料などを奪って貧民たちに配るっている。その中のリーダーのオン(永山瑛太)が基地に入った後行方不明になるという事件が起きる。
彼と親しい同輩グスク(妻夫木聡)はオンを探す為に刑事になり、事件捜査の合間にオンを探す。これに興味を持って接近してくるのが情報局の捜査官アーヴィン(デリック・ドーヴァー)で、彼の助手でもある通訳・小松(中村蒼)ともども暗躍する。彼らがどんなに “平和の為” と主張しても、最終的にグスクが彼らと真に理解し合えるはずがない。
オンの若い恋人である通称ヤマコ(広瀬すず)が彼の失踪後働きながら懸命に勉強して小学校の教師になるが、その学校へ米軍飛行機が墜落する。新聞でもよく取り上げられる事件で、小学生11人を含む17人が死亡した。1959年のことである。
オンの弟レイ(窪田正孝)は52年に17歳なのに通常の刑務所に送られ、出所後はチンピラのようになり、その中で米軍に対するテロリストと化していく。さらに、本土復帰の直前、彼らが絡むハーフの孤児ウタもレイに傾き、レイの基地に向けた攻撃に巻き込まれて米軍に撃たれる。亡くなる前に思い出のある浜へ三人を連れて行く。そこにオンの白骨を見出した彼らは、オンが基地の森で生まれた直後に母親を失ったウタを救出し、密売組織の下で働かされた後、弱って亡くなったことを知る。
ここでオンの失踪の謎は解決を見るわけだが、映画全体の主題は、オンの失踪を狂言回しにした沖縄戦後受難史である。
沖縄県民の怒りが感じられないという意見とは全く正反対の印象を受けた。ここに出て来る主たる沖縄の人々から在日米軍と本土への大いなる怒りを感じて、本土の人間として情けないと涙さえ出て来たのである。周囲の大国に蹂躙されてきたポーランドの悲劇を描いてきたアンジェイ・ワイダの映画に通底するものがありはしないか。
主人公グスクは人間は変わると明るい未来を見るが、レイなど本土復帰後も米軍の残る現実にその未来を信じない沖縄ピープルが少なくない。反米軍基地を主唱する沖縄の新聞を廃刊せよなどと言っている本土の一部保守に比べれば、欺瞞も含んでいるとは言え、アーヴィンや小松のほうが遥かにマシのような気がする。
沖縄の人々と同じにはなれないが、地位協定くらいはもう少し改善されることを望む。復帰前と現在とでそれほど大きく変わったとは言えず、日本はPFAS流出の発生源と思われる基地内を調べることも出来ない。
主要な出演者やスタッフは本土の人々だが、本土の人々が中心となって作ったことに価値があると僕は考えることにする。
スパイ防止法ができると、在日の基地反対運動の支援者は困るのではないか。基本的に外国人が対象であろうから、個人の立場で真に日本を思って運動しても外国人故に出自国のスパイと見なされても反論しにくくなる。以前からネトウヨの連中は日本国政府の政策の反対する在日や外国人をスパイ扱いし、こうした運動家は日本人と称していても実は外国人なのだとさえ言っている。昨日の池上彰の番組で反政府的な言動もチェックされると言っていたから、このレベルの書き込みさえ目を付けられるかも。ところで、一貫してトランプの政策を良いとする日本人が数パーセントいるというデータがあるが、同時に彼らは嫌中であると僕は見ている。トランプが中国ともっと仲良くなった場合、彼らは中国好きになるのだろうか? トランプ嫌いになるのだろうか?
2025年日本映画 監督・大友啓史
ネタバレあり
上映時間の長さに躊躇したが、なかなか面白かった。東京新聞がよく沖縄の基地問題を取り上げ、その中で沖縄の戦後史が語られることが多くそれなりに知識があったからだろう。この辺りを何も知らないで観ても面白味は半減するに違いない。娯楽大作とは言え、知識がなくても楽しめるタイプの大衆映画ではない。
1952年アメリカに統治されていた沖縄。戦果アギャーと呼ばれるグループが米軍基地に忍び込み、食料などを奪って貧民たちに配るっている。その中のリーダーのオン(永山瑛太)が基地に入った後行方不明になるという事件が起きる。
彼と親しい同輩グスク(妻夫木聡)はオンを探す為に刑事になり、事件捜査の合間にオンを探す。これに興味を持って接近してくるのが情報局の捜査官アーヴィン(デリック・ドーヴァー)で、彼の助手でもある通訳・小松(中村蒼)ともども暗躍する。彼らがどんなに “平和の為” と主張しても、最終的にグスクが彼らと真に理解し合えるはずがない。
オンの若い恋人である通称ヤマコ(広瀬すず)が彼の失踪後働きながら懸命に勉強して小学校の教師になるが、その学校へ米軍飛行機が墜落する。新聞でもよく取り上げられる事件で、小学生11人を含む17人が死亡した。1959年のことである。
オンの弟レイ(窪田正孝)は52年に17歳なのに通常の刑務所に送られ、出所後はチンピラのようになり、その中で米軍に対するテロリストと化していく。さらに、本土復帰の直前、彼らが絡むハーフの孤児ウタもレイに傾き、レイの基地に向けた攻撃に巻き込まれて米軍に撃たれる。亡くなる前に思い出のある浜へ三人を連れて行く。そこにオンの白骨を見出した彼らは、オンが基地の森で生まれた直後に母親を失ったウタを救出し、密売組織の下で働かされた後、弱って亡くなったことを知る。
ここでオンの失踪の謎は解決を見るわけだが、映画全体の主題は、オンの失踪を狂言回しにした沖縄戦後受難史である。
沖縄県民の怒りが感じられないという意見とは全く正反対の印象を受けた。ここに出て来る主たる沖縄の人々から在日米軍と本土への大いなる怒りを感じて、本土の人間として情けないと涙さえ出て来たのである。周囲の大国に蹂躙されてきたポーランドの悲劇を描いてきたアンジェイ・ワイダの映画に通底するものがありはしないか。
主人公グスクは人間は変わると明るい未来を見るが、レイなど本土復帰後も米軍の残る現実にその未来を信じない沖縄ピープルが少なくない。反米軍基地を主唱する沖縄の新聞を廃刊せよなどと言っている本土の一部保守に比べれば、欺瞞も含んでいるとは言え、アーヴィンや小松のほうが遥かにマシのような気がする。
沖縄の人々と同じにはなれないが、地位協定くらいはもう少し改善されることを望む。復帰前と現在とでそれほど大きく変わったとは言えず、日本はPFAS流出の発生源と思われる基地内を調べることも出来ない。
主要な出演者やスタッフは本土の人々だが、本土の人々が中心となって作ったことに価値があると僕は考えることにする。
スパイ防止法ができると、在日の基地反対運動の支援者は困るのではないか。基本的に外国人が対象であろうから、個人の立場で真に日本を思って運動しても外国人故に出自国のスパイと見なされても反論しにくくなる。以前からネトウヨの連中は日本国政府の政策の反対する在日や外国人をスパイ扱いし、こうした運動家は日本人と称していても実は外国人なのだとさえ言っている。昨日の池上彰の番組で反政府的な言動もチェックされると言っていたから、このレベルの書き込みさえ目を付けられるかも。ところで、一貫してトランプの政策を良いとする日本人が数パーセントいるというデータがあるが、同時に彼らは嫌中であると僕は見ている。トランプが中国ともっと仲良くなった場合、彼らは中国好きになるのだろうか? トランプ嫌いになるのだろうか?
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