映画評「名探偵ポワロ:もの言えぬ証人」
☆☆★(5点/10点満点中)
1996年イギリス映画 監督エドワード・ベネット
ネタバレあり
アガサ・クリスティーのポワロ・シリーズ第14作の、英国テレビ局によるTV映画化。お馴染みのシリーズ第6シーズン第4話(通算第45話)に当たる。
原作はハヤカワ文庫で500ページ余りの長編なので、そのままでは102分という尺に収まらないので色々と改変しなければならないのは理解するが、今回も「ゴルフ場殺人事件」同様良くないことに、エルキュール・ポワロ(デーヴィッド・スーシェ)と相棒ヘイスティングズ(ヒュー・フレイザー)が関係者と知り合いになってから事件が起こる。この手法は確かに時間はつめられまするが、気に入らない。原作ではエミリーが死んでから二か月も経ってポワロの元に依頼する手紙が届くというすぐに解決する謎から始まる面白さがあるので、洒落っ気を求める向きに不満を生じるだけでなく、事件に対するポワロのモチヴェーションを変えてしまうから改変としては余り上等ではないのである。
しかも、ポワロは最終的に死んでしまう子供のいない老婦人エミリー・アランデル(アン・モッリシュ)に口添えをして、親族に遺産が渡らないように遺言を書き換えるのがベターとアドヴァイス、実際に彼女がその通りにした後に彼女は“病死” してしまう。おかげで相続することになった付き人(ハヤカワ文庫の人物紹介欄に家政婦とあるが、これが読者には混乱の元。エレンという召使が別にいる)ミニーが大迷惑を被るのである。
亡くなる前に彼女が階段から転げ落ちて負傷するという事件が起き、彼女の愛犬ボブが愛玩物であるボールを踊り場に置いたからという冤罪を関係者からかけられるのだが、ポワロはすぐに壁の腰板にフックを発見してそこに紐が掛けられそれに躓いたのだろうと踏む。
「ゴルフ場殺人事件」と同じく人物のイニシャルがちょっとした(読者に対する)トリックとして使われているが、このドラマ版で良かったのは、倒叙もの風にこの犯行場面を冒頭に置いてミスリードを誘おうというアイデアである。この段階で原作を途中までしか読んでいなかった僕は“ちぇっ、犯人が解ってしまったではないか”とがっかりしたが、実は引っかけだった。半分観たところで本に戻ってドラマ版のミスリードが解った。
ドラマ化に際しての変更は致し方ないものの、本作は改変が多く、原作では殺人事件は一件なのに二件に増えている。最終的に犯人と判明する人物が逃げる先もミニーの家ではなく霊媒姉妹の家となっている(しかもポワロが連れていく)。実は逃げた先に犯人の心理に繋がる意味があったので、本作は改変というより一種の翻案といった感さえ抱かざるを得ない。召使の名前をエレンからサラに変えた理由も不明。
原作ではワンちゃんのボブが懐くのはヘイスティングズであってポワロではないのだが、ドラマはポワロがボブからヒントを原作以上に色々と貰うという展開にしたのでかく改変したのである。これに関しては良いと思う。
原作を先に読むと、原作を基準に映画を評価するなと言う立場の僕でも、改変による劣化部分に評価は引きずられる。ただ、「ゴルフ場殺人事件」とイニシャルの扱いが一部同じなので、ミステリーとしての新味不足の為に余り高く採点できなかった所以があるというのも事実。日本人にはちょっと分りにくいところがあるのでドラマのポワロがその謎について(原作通り)説明すべきだが、英国人には言うまでもないレベルにつき説明を省いたのだろう。
1996年イギリス映画 監督エドワード・ベネット
ネタバレあり
アガサ・クリスティーのポワロ・シリーズ第14作の、英国テレビ局によるTV映画化。お馴染みのシリーズ第6シーズン第4話(通算第45話)に当たる。
原作はハヤカワ文庫で500ページ余りの長編なので、そのままでは102分という尺に収まらないので色々と改変しなければならないのは理解するが、今回も「ゴルフ場殺人事件」同様良くないことに、エルキュール・ポワロ(デーヴィッド・スーシェ)と相棒ヘイスティングズ(ヒュー・フレイザー)が関係者と知り合いになってから事件が起こる。この手法は確かに時間はつめられまするが、気に入らない。原作ではエミリーが死んでから二か月も経ってポワロの元に依頼する手紙が届くというすぐに解決する謎から始まる面白さがあるので、洒落っ気を求める向きに不満を生じるだけでなく、事件に対するポワロのモチヴェーションを変えてしまうから改変としては余り上等ではないのである。
しかも、ポワロは最終的に死んでしまう子供のいない老婦人エミリー・アランデル(アン・モッリシュ)に口添えをして、親族に遺産が渡らないように遺言を書き換えるのがベターとアドヴァイス、実際に彼女がその通りにした後に彼女は“病死” してしまう。おかげで相続することになった付き人(ハヤカワ文庫の人物紹介欄に家政婦とあるが、これが読者には混乱の元。エレンという召使が別にいる)ミニーが大迷惑を被るのである。
亡くなる前に彼女が階段から転げ落ちて負傷するという事件が起き、彼女の愛犬ボブが愛玩物であるボールを踊り場に置いたからという冤罪を関係者からかけられるのだが、ポワロはすぐに壁の腰板にフックを発見してそこに紐が掛けられそれに躓いたのだろうと踏む。
「ゴルフ場殺人事件」と同じく人物のイニシャルがちょっとした(読者に対する)トリックとして使われているが、このドラマ版で良かったのは、倒叙もの風にこの犯行場面を冒頭に置いてミスリードを誘おうというアイデアである。この段階で原作を途中までしか読んでいなかった僕は“ちぇっ、犯人が解ってしまったではないか”とがっかりしたが、実は引っかけだった。半分観たところで本に戻ってドラマ版のミスリードが解った。
ドラマ化に際しての変更は致し方ないものの、本作は改変が多く、原作では殺人事件は一件なのに二件に増えている。最終的に犯人と判明する人物が逃げる先もミニーの家ではなく霊媒姉妹の家となっている(しかもポワロが連れていく)。実は逃げた先に犯人の心理に繋がる意味があったので、本作は改変というより一種の翻案といった感さえ抱かざるを得ない。召使の名前をエレンからサラに変えた理由も不明。
原作ではワンちゃんのボブが懐くのはヘイスティングズであってポワロではないのだが、ドラマはポワロがボブからヒントを原作以上に色々と貰うという展開にしたのでかく改変したのである。これに関しては良いと思う。
原作を先に読むと、原作を基準に映画を評価するなと言う立場の僕でも、改変による劣化部分に評価は引きずられる。ただ、「ゴルフ場殺人事件」とイニシャルの扱いが一部同じなので、ミステリーとしての新味不足の為に余り高く採点できなかった所以があるというのも事実。日本人にはちょっと分りにくいところがあるのでドラマのポワロがその謎について(原作通り)説明すべきだが、英国人には言うまでもないレベルにつき説明を省いたのだろう。
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