映画評「ジュリーは沈黙したままで」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年ベルギー=スウェーデン合作映画 監督レオナルド・ヴァン・デイル
ネタバレあり

第2次大戦終戦後に流行った、事件の起きた直後に現場にロケをして映画化した作品(所謂際もの)をセミ・ドキュメンタリーと言うが、僕はハンディカメラなどを使って即実的に撮ったここ30年くらいの作品もそう呼んでいる。紛らわしいものの、ある意味解りやすくもあるので、そう呼ぶのだ。典型的なのはダルデンヌ兄弟の作品群で、本作は彼らも製作陣に加わったベルギー製のセミ・ドキュメンタリーである。

あるテニス・クラブでコーチを務める男性ジェレミー(ローラン・カロン)がクラブから暫し出勤停止処分を受ける。担当する女子選手が自殺をしたことに関係があると見なされたのである。
 彼を深く信頼し尊敬する才能あふれる女子選手ジュリー(デッサ・ヴァン・デル・ブルック)は激しく動揺して証言を拒む一方、別のコーチのバッキ―(ピエール・ジェルヴェ)の下で、ジュニア団体チームの代表に選ばれるべく練習とトレーニングに励む。ルーティンをこなすことでジレンマに打ち勝とうとしているのだ。

めでたく選抜された後事件の調査会に臨むところで映画は終わるが、揺れる心情を描くのを眼目としている為、それまでと同様、彼女が証言するか否かという結果には触れられない。セミ・ドキュメンタリーらしい扱いと言うべし。

この手は起伏の激しいドラマ作りや劇的な展開には殆ど興味を示さないので、大衆映画のファンにあっては寝落ちというやつをしかねないが、ターゲットする観客層が違うので、それはそれで仕方がない。
 かく言う僕は話の起伏より画面の面白さなどに注目しがちで、セミ・ドキュメンタリーはその面でも不利な面があるにはあるが、本作を長編デビュー作とするらしいレオナルド・ヴァン・デイルなる監督のタッチはなかなか瑞々しいとは思う。

最近の芸能人は、TV局以外での収録そのものを【ロケ】と言う。この言葉を映画を通じて憶えた僕にはちょっと違和感があるが、仕方がないレベルか。初めて聞く話の応答として【そうなんですね⁉】という半疑問の措辞を使う変な風潮よりは良い。【そうなんですか⁉】はそれ以上に半疑問ではあるも、感動が疑問度を大きく上回るように聞こえるので許せる感じはある。初めて聞く話の応答として一番良い(相手に失礼がない)のは【そうですか!】である。しかし、感動の助詞“か”を疑問の助詞と勘違いした輩が、疑問を呈しては失礼だろうと、半疑問形【そうなんですね⁉】を使い始めたとも聞く。実際には逆で、【そうなんですね⁉】のほうが【そうですか!】より失礼なのは言うまでもない。

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